セノリティクスとは?老化を防ぐって本当?主な成分や日常生活で取り入れる方法もご紹介

年齢とともに感じる体や肌の衰え。「老化だから仕方がない」とあきらめていませんか?
実は近年、老化の原因とされる「老化細胞」を取り除く“セノリティクス”という成分が注目を集めています。セノリティクスは加齢に伴う不調や病気の予防が期待されており、健康寿命を延ばす新たな鍵として、医療や美容分野でも研究が進められています。
この記事では、セノリティクスの正体や期待される効果、日常生活への取り入れ方までわかりやすく紹介します。
セノリティクスとは?

セノリティクスは、体内に蓄積された老化細胞を標的にして除去する化合物のことを指します。
この言葉は、「老化=senescence」と「破壊・除去=lytics」という2つの言葉を組み合わせて生まれました。肉体の老化を遅らせる可能性があることから、現在では世界中の研究者たちが注目しています。
私たちの体は、古い細胞から新しい細胞に入れ替わるサイクルによって、健康な状態を保っています。しかし、加齢やストレス、紫外線などの外的要因によって、この細胞の入れ替わりがスムーズにいかなくなると、分裂できないまま残った「老化細胞」が体内に蓄積されるようになります。
セノリティクスは、この老化細胞だけを選んで取り除くアプローチができる成分なのです。
セノリティクスが注目されている背景
セノリティクスが注目を集めているのは、加齢に伴う病気の改善、そして老化そのものの抑制につながる可能性が見えてきたためです。
老化細胞は、細胞として正常に機能しないだけでなく「SASP(老化関連性分泌表現型)」と呼ばれる物質を分泌し、周囲の正常な細胞にも悪影響を与える性質を持っています。これにより、細胞の老化が周囲にも波及し、全身の組織や臓器の機能低下につながります。
さらに、慢性的な炎症を引き起こし、動脈硬化や糖尿病、がん、アルツハイマー型認知症など、さまざまな疾患のリスクを高めると考えられているのです。
こうした背景から、老化細胞そのものを体内から除去できる手段としてセノリティクスが健康維持やアンチエイジングに役立つとして注目されています。
現在では動物モデルを用いた研究を中心に、セノリティクスの効果や安全性に関する検証が進められており、将来的には人間の老化に伴う病気の予防や健康寿命の延伸などに活用されることが期待されています。
セノリティクスはまだ発展途上の分野ではありますが、医療や美容の未来を変える可能性を秘めた最先端の研究対象として、今後の動向にますます注目が集まっています。
セノリティクスの主な成分
代表的なセノリティクスの成分として、以下のようなものが知られています。
- ・ケルセチン:タマネギやりんごなどに含まれる成分
- ・フィセチン:イチゴやキウイなどに含まれる成分
- ・ダサチニブ:白血病治療に用いられる抗がん剤の一種
この他にも、2025年現在までに20種類以上のセノリティクスの成分が報告されており、それぞれが老化細胞の活性化抑制、炎症因子の産生抑制、アポトーシス(細胞の自然死)の誘導などの作用を持つとされています。
セノリティクスは老化を防ぐ?情報の信憑性は?

セノリティクスが人間の老化を防ぐ効果については、今まさに研究が進められている状況です。マウスを用いた動物実験では、骨格筋の萎縮や骨粗しょう症、白内障、がんの発生といった老化に伴う変化が抑えられることがすでに確認されており、将来的な応用への期待が高まっています。
実際に、海外を中心に人間を対象とした臨床研究も始まっており、今後の成果次第では、老化を抑える新たな治療薬として実用化される日も遠くないかもしれません。
セノリティクスで期待されている効果

体内のあらゆる細胞や組織の老化を防げる可能性のあるセノリティクスですが、具体的に病変に対してどのような効果が期待できるのでしょうか?2025年現在、動物実験を中心にさまざまな研究が実施され、以下のような目的で使用できる可能性が示唆されています。
- ・認知機能の改善
- ・糖尿病の症状緩和
- ・動脈硬化の改善
- ・肺線維症の改善
- ・皮膚のエイジングケア
これらについて具体的に見ていきましょう。
認知機能の改善
アルツハイマー認知症のマウスを用いた実験では、老化に伴って低下する学習能力や記憶力、認知機能などが、セノリティクスの投与によって改善される可能性が示されました。
老化細胞が脳内に蓄積すると、神経細胞の働きが低下することが知られていますが、セノリティクスによって老化細胞を除去することで、脳の機能が正常化し、認知機能の回復につながる可能性があります。今後、人間(アルツハイマー認知症の高齢者)に対する臨床研究も進められるようです。
糖尿病の症状緩和
セノリティクスの有効性は糖尿病に対しても示され始めています。動物実験では、腎機能の低下を抑えたり、糖尿病性網膜症などの合併症を予防したりする効果が確認されています。
さらに、人間(糖尿病性腎症患者)を対象とした臨床研究も進行しており、そこで血液中や皮膚中の老化細胞の数が減少することが明らかになりました。これらの結果から、今後は糖尿病患者に対しても、インスリンの分泌や糖代謝の改善が得られる可能性が期待されています。
動脈硬化の改善
セノリティクスは動物実験の結果により、動脈硬化の進行を抑える可能性もあるとされています。
老齢のマウスを対象とした研究では、頸動脈や大動脈の硬化を防ぐ効果が確認されました。これにより、高血圧や心疾患の予防にもつながる可能性があり、人間への応用が期待されています。
今後の臨床研究によって、安全性や有効性の検証が進められることが望まれます。
肺線維症の改善
難治性の疾患である肺線維症に対しても、セノリティクスが効果を発揮する可能性が考えられています。
肺線維症に関しては、すでに人間を対象とした臨床研究もおこなわれています。その研究では、肺線維症患者にセノリティクスを投与したところ、身体活動能力の指標が上昇したことがわかりました。
これは、呼吸機能の改善や疲労感の軽減が見られたことを示しており、セノリティクスが呼吸器疾患にも効果を発揮する可能性があることがわかります。
皮膚のエイジングケア
美容やスキンケア分野でも、セノリティクスは注目されています。動物実験では、皮膚の老化細胞が減少することが確認され、肌のハリや弾力に関係するコラーゲンの減少が抑えられることが示唆されました。これにより、シワの形成やたるみの進行が防げる可能性があり、エイジングケアへの応用が期待されています。
参考:南野徹「老化細胞除去療法:生活習慣病予防・改善の新たな切り札」 日本内科学雑誌,133(3),360-367,2024.
老化細胞除去薬(セノリティクス)で期待される効果や副作用

老化細胞除去薬とは、セノリティクス成分を含み、体内に蓄積した老化細胞を除去する作用を持つ医薬品です。
現在研究が進められているのは、老化細胞の生存に必要な酵素「グルタミナーゼ1(GLS1)」を阻害する「GLS1阻害薬」です。これにより、老化細胞を選択的に死滅させ、健康寿命を延伸できることが期待されています。
さらに、老化細胞を標的とするワクチンの開発も進んでおり、予防医療へ応用できる可能性もあるとされています。
また、糖尿病治療に用いられている「SGLT2阻害薬」にも老化細胞を減少させる作用があるとの研究結果が出ており、老化細胞除去薬として使用される未来がくるかもしれません。
現時点では、老化細胞除去薬に特有の深刻な副作用は報告されていませんが、今後の臨床試験を通じて、安全性や長期的な効果の検証が求められています。
※本記事では参考情報としてご紹介していますが、当院では取り扱っておりませんので何卒ご了承ください。
セノリティクスの問題点

セノリティクスは老化細胞を除去する新たな治療法として注目されていますが、上述したように、安全性や長期的な効果に関してはまだ十分なデータがそろっていないのが現状です。
現在は動物実験が主であり、人間を対象とした臨床研究はまだ限られています。
2024年時点で30以上の臨床研究が実施されていますが、生活習慣病などの分野には応用できていません。長期的な影響や副作用についても慎重に見極める必要があり、人間への実用化にはさらなる検証と研究の積み重ねが求められます。
セノリティクスの成分を日常生活で取り入れる方法

人間への老化細胞除去薬の適用に向けて臨床研究が進められつつあるセノリティクスですが、他に取り入れる手段はあるのでしょうか。実際のところ、セノリティクスの成分は日常生活で私たちに馴染みのある食材や、特定のサプリメントに含まれています。
これにより、現段階でも食生活を意識することで、セノリティクスの作用が期待できる可能性があります。詳しく見ていきましょう。
食べ物から摂取する
食べ物に含まれるセノリティクスとして注目される成分には、ケルセチンやフィセチンなどがあります。これらは身近な食材に含まれており、日常生活の中で意識的に取り入れることで、加齢に伴う細胞の老化を防ぐ可能性があるのです。
ケルセチンはタマネギやブロッコリー、りんごなどに多く含まれ、抗酸化作用が高いことで知られています。また、フィセチンは特にいちごに多く含まれており、認知機能のサポートや神経細胞の保護にも役立つ可能性があります。
毎日の食事にこれらの食材を取り入れることで、肌や体全体のエイジングケアにつながるかもしれません。
サプリメントを活用する
食事以外でセノリティクス成分を摂取する方法として、サプリメントの活用も一つの手段です。
特にケルセチンは、日本国内でも多くのサプリメント製品に含まれており、ドラッグストアやオンラインショップで手軽に購入できます。これらは花粉症対策を目的とした機能性表示食品としても展開されており、免疫サポートやアレルギー軽減にも役立てられる可能性があります。
ライフスタイルに合わせ、食材とサプリメントを上手に組み合わせて取り入れると良いでしょう。
まとめ

この記事では、セノリティクスの内容や現段階で期待されている効果、日常生活への取り入れ方などについて解説しました。
- ・セノリティクスとは、老化細胞を選択的に除去する成分で、加齢に伴う不調や病気の予防などが期待されている。
- ・老化細胞は「SASP」という物質を分泌して周囲の細胞に悪影響を与えるため、体内の蓄積が進むとあらゆる機能の老化や病気の原因になる。
- ・セノリティクスの主な成分には、タマネギやりんごに含まれるケルセチン、イチゴに多いフィセチンなどがある。
- ・動物実験を含め、セノリティクスを投与した研究では、認知機能や動脈硬化、糖尿病、肺線維症、皮膚の老化などに対する改善効果が報告されている。
- ・セノリティクス薬には、グルタミナーゼ1を阻害する「GLS1阻害薬」がある。糖尿病治療に用いられている「SGLT2阻害薬」も老化細胞除去薬として使用されていく可能性がある。
- ・セノリティクスには食材やサプリメントから摂取可能な成分もあり、普段の食生活に取り入れることで老化予防につながる可能性がある。
- ・セノリティクスの安全性や長期的な効果に関しては今後も十分な研究が必要である。
セノリティクスは、医療・美容分野において人間への応用が期待されており、今後の臨床研究の成果が注目されています。あらゆる老化を防ぎ健康寿命の延伸に役立つ新たな選択肢として、今後の発展に期待しましょう。
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