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子宮頸がんとは?原因や症状、予防法について解説

比較的若い世代の女性に多い疾患である子宮頸がん。早い段階からの予防として、定期検診やワクチン接種などが呼び掛けられていますが、実際のところどちらも受診できていないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では子宮頸がんの原因や症状、予防法、治療法などについてお話しします。
自分自身、またはお子様の予防に関して、その重要性や検査・ワクチン接種の詳しい内容について知りたい方は、ぜひこの記事を最後までお読みください。

子宮頸がんとは

子宮頸がんとは

子宮頸がんは、子宮頸部(子宮と膣がつながる部分)にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染して起こる悪性の腫瘍です。
20〜40代の若者に多くみられるのが特徴で、2019年の患者数は年間1万1,000人となります。
HPVは性行為を介して感染するため、性行為の経験が一度でもある女性は誰でも子宮頸がんの発症を予防するように意識しなければなりません。

子宮頸がんは、HPVに感染してから、「前がん病変」の期間を経てがんに変化します。
前がん病変とは、正常とがんの境目のような状態で、その程度により軽度異形成(CIN1)・中等度異形成(CIN2)・高度異形成および上皮内がん(CIN3)の3種類に分類されます。軽度であれば9割以上が自然治癒するといわれており、感染しているHPVのタイプや経過によって、必要に応じて治療を検討することになります。

子宮頸がんの進行度(ステージ分類)

子宮頸がんの進行の程度は以下のように分類されます。

分類 状態
Ⅰ期 がんが子宮頸部のみに認められ、他に広がっていないもの
ⅠA期 がんが組織学的に診断でき、深さが5mm以内、縦横が7mm以内の状態
(ⅠA1期:がんの深さが3mm以内、ⅠA2期:がんの深さが3〜5mm)
ⅠB期 臨床的に明らかながんが認められる状態
(ⅠB1期:病変が4cm以内、ⅠB2期:病変が4cm以上)
Ⅱ期 がんが子宮頸部を超えて広がるが、骨盤もしくは膣の下1/3には達していないもの
ⅡA期 がんが膣まで達するが、それ以外の組織には広がっていない状態
(ⅡA1期:病変が4cm以内、ⅡA2期:病変が4cm以上)
ⅡB期 がんがまわりの組織まで広がるが、骨盤まで達していない状態
Ⅲ期 がんが骨盤まで広がる(がんと骨盤との間にがんでない部分がない)か、膣の下方1/3に達するもの
ⅢA期 がんが膣まで達するが、骨盤まで広がっていない状態
ⅢB期 がんが骨盤まで達するか、尿管ががんでつぶされて水腎症(※)や腎臓の無機能が生じている状態
Ⅳ期 がんが少骨盤腔(※)を超えて広がるか、膀胱や直腸まで達するもの
ⅣA期 がんが膀胱や直腸の粘膜まで広がる状態
ⅣB期 がんが少骨盤腔を超えて転移している状態

(※)水腎症:尿の流れが悪くなり、尿道や腎臓に尿がたまって膨らむ病気
(※)小骨盤腔:骨盤の下方にある空洞で、子宮や膀胱、直腸を囲んでいる

がんは子宮頸部から始まり、時間がたつにつれて膣や骨盤、尿道、膀胱、直腸まで広がります。
さまざまな病態に移行しないためには、子宮頸がんを早い段階で発見して予防することが大切です。

子宮頸がんの症状

子宮頸がんの症状

子宮頸がんの初期症状は、無症状もしくは性行為のときの出血が特徴的ですが、進行するとあらゆる臓器の症状がみられます。
子宮頸がんを確実に予防するためにも、初期と進行時の症状を詳しく知っておきましょう。

初期症状

子宮頸がんは、初期の段階では自覚症状がないことが多いです。
性行為のときの出血やおりものの増加、生理以外の出血などがみられることもあります。
子宮頸がんは数年〜数十年の前がん病変の期間を経てがんに変化することがわかっており、前がん病変の時期は目立った症状がほとんどみられません。
がんの進行を予防するためには、症状がほとんどない時期に細胞診をおこなって、異常を発見することが大切になります。

進行時の症状

子宮頸がんが進行すると、腎臓や膀胱、直腸まで影響がおよび、腰痛や血尿、血便がみられることがあります。
これらの症状がみられたら、治療を受けて症状の悪化を予防したり、がんを取り除いたりすることが重要となりますので、必ず医療機関に受診してください。

子宮頸がんの予防法

子宮頸がんの予防法

厚生労働省は、子宮頸がんの予防に「HPVワクチンの接種」と「子宮頸がん検診」を推奨しています。
子宮頸がんが進行してから治療をする場合には、子宮を摘出しなければならないケースもあります。取り返しのつかない状態を予防するためにも、適正年齢に当てはまる女性は必ず受けましょう。

HPVワクチン

子宮頸がんの予防には、12〜16歳でHPVワクチンの接種を受けると効果的です。性行為が未経験の年代で接種すると、9割以上の予防効果があることがわかっています。
HPVワクチンの効果は長くて14年ほど持続するといわれているため、26〜30歳ごろまで予防効果が期待できるでしょう。

HPVワクチンの種類は、サーバリックス・ガーダシル・シルガード9の3つで、一定の間隔をあけて同じ種類のワクチンを2〜3回接種する必要があります。
HPVワクチンは自治体が主体となって接種の機会を設けており、12~16歳の女性の接種は公費が適用になります。(2024年6月現在)

HPVワクチンの副反応は、接種した部位の痛みや腫れ、発熱、失神(恐怖や興奮による) などです。
アナフィラキシーショック(※)やギラン・バレー症候群(※)などがでることもありますが、頻度は90万〜430万回の接種で1回程度です。

(※)アナフィラキシーショック:アレルギー反応により、じんましんや皮膚のかゆみ、息苦しさ、嘔吐、目のむくみ、ショック症状などがでること
(※)ギラン・バレー症候群:神経の障害によって手足の力が入りにくくなったり、しびれたり、触った感覚がわかりにくくなったりする病気

子宮頸がん検診

子宮頸がんを予防するために、定期検診による細胞診を20歳から2年に1回受けることが推奨されています。
HPV感染による細胞の異常を早めに発見できると、がんの進行の予防につながるからです。

細胞診は、子宮頸部の細胞を採取して状態を調べる検査です。がん細胞の有無だけでなく、前がん病変の細胞も発見できます。子宮頸部の細胞に異常が認められた場合は精密検査をおこなって、子宮頸がんがどの程度進行しているか確認します。

要件を満たした市町村では、5年に1回のHPV検査単独法が受けられる場合もあります。
HPV検査単独法では、HPVに感染しているかを調べます。その結果陽性の場合に追加で細胞診をおこなう流れとなります。

日常生活において子宮頸がんを予防するには

日常生活において子宮頸がんを予防するには

ワクチンや定期検診以外で子宮頸がんを予防するためには、性行為でのコンドームの使用や禁煙、バランスの取れた食生活が大切です。
これらはHPVの感染や、子宮頸がんの発症を予防する効果があるため積極的におこなってください。

コンドームの使用

性行為をするときは正しくコンドームを使用することで、HPVの感染予防が期待できます。
HPVはコンドームでおおわれない皮膚からも感染するため、完全に予防するのは難しいですが、コンドームの使用で感染リスクを減らすことは可能です。
コンドームは、口腔や肛門を介した性行為でもHPVの感染を予防する効果があります。
また、複数の男性との性行為はHPVや他の性感染症の感染リスクが高まるため、コンドームを使用したとしても控えたほうが良いでしょう。

禁煙

喫煙を控えることは、子宮頸がんの発症の予防につながります。
たばこに含まれている発がん物質は、子宮頸部に直接悪い方向へ作用したり、全身の免疫機能を低下させたりしてあらゆるがんの発症リスクを高めます。
がんの発症リスクは喫煙している年数や、1日の喫煙の本数が多いほど上がる可能性が高いです。
子宮頸がんを予防したいのであれば、日々の生活で禁煙を実行しましょう。

バランスの取れた食生活

子宮頸がんの予防には、日々バランスの良い食事を摂ることも大事です。
食事などの生活習慣が悪いと身体の免疫が下がり、子宮頸がんが発症するリスクが高まります。
食事は肉などの動物性脂肪をできるだけ控えて、魚料理や野菜、果物を積極的に摂りましょう。過度な飲酒を避けることも大切です。

がんを予防するための生活習慣についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

>>がん予防で大切なこと 生活習慣や最新医療について解説
>>一次予防の基本は「生活習慣の改善」。食事・睡眠などの改善方法の基本とは

子宮頸がんの検査方法

子宮頸がんの検査方法

子宮頸がん検診の細胞診で細胞の異常が疑われた場合は、コルポスコープ診や組織診による精密検査・画像診断がおこなわれます。
これらの検査は子宮頸がんの進行を予防するためにも重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

コルポスコープ診

コルポスコープというライトが付いた拡大鏡を使用して、子宮頸部の粘膜に子宮頸がんがないか確認します。
コルポスコープ診で粘膜表面の状態を確かめてから組織の精査に移ると、より検査の精度を高めることが可能です。

組織診

細胞診やコルポスコープ診で子宮頸がんを疑う部分がみつけられた後は、組織を採取して顕微鏡で観察します。
組織診でがんの病変が発見された場合が、子宮頸がんの確定診断です。

画像診断検査

CT検査やMRI検査の画像診断をおこなって、子宮頸がんがどの程度広がっているか確認します。
主に子宮や骨盤周辺のがん病変はMRI検査、がんの全身への転移はCT検査によって調べられます。

子宮頸がんの治療方法

子宮頸がんの治療方法

子宮頸がんを予防しきれず発症した場合は、手術や放射線療法、薬物療法の治療を受けなければなりません。
どの治療法が適用になるかはステージや年齢、将来の妊娠の希望などによって決められます。詳しく見ていきましょう。

手術

子宮頸がんの状態が前がん病変やステージⅠ、Ⅱの場合は、子宮頸部の一部や子宮自体を切除する手術をおこないます。
切り取った組織は顕微鏡で詳しく調べられ、がんの広がりによってその後の治療方針が決定されます。

円錐切除術

円錐切除術は、病変が起きている子宮頸部の一部を円錐状に切り取る手術です。
切り取る部分を最小限にするため、子宮の大部分を残せます。
手術後も性行為は可能ですが、妊娠や出産に影響がでる可能性があります。

子宮全摘出術

子宮全摘出術は、がんの広がりに応じて子宮や子宮まわりの組織を摘出する手術です。卵巣を切除するかどうかは年齢やステージによって決められます。
子宮全摘出術をおこなうと体内から子宮がなくなるため、妊娠ができません。
手術は摘出する範囲の広さによって単純、準広汎、広汎の3つの段階にわかれます。

  • ● 単純子宮全摘出術
    子宮頸部のまわりにある靭帯などの組織は取らずに、子宮だけを切除する方法です。
    子宮はなくなりますが、手術後も性行為はおこなえます。
  • ● 準広汎子宮全摘出術
    子宮に加えて子宮頸部まわりにある組織や膣の一部を切り取ります。
    膣の大半を切除するわけではなく膀胱の神経もほとんど温存されるため、性行為は可能で排尿にも大きな支障はきたしません。
  • ● 広汎子宮全摘出術
    子宮と子宮まわりの組織、膣、骨盤内のリンパ節を大きく切り取る手術です。
    再発リスクによっては術後の放射線治療も検討します。
    子宮頸がんを完全になくせる可能性が高くなりますが、リンパ浮腫や排尿障害、性生活への悪影響が起こりやすくなります。

子宮頸部摘出術

子宮頸部摘出術は、子宮体部(子宮の上部分)と卵巣以外の子宮部分を切除する手術です。
子宮体部と卵巣を体内に残すため、妊娠機能を保たせることが可能です。妊娠可能な年齢で、将来子どもを授かることを希望している場合に検討されます。
しかし、ⅠA2期やⅠB2期で明らかな転移があるなどの場合は、適応できないこともあります。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線やガンマ線などの放射線を、子宮頸がんのまわりに照射して治療する方法です。
子宮頸がんの放射線療法はほとんどのステージで可能で、主に以下の方法でおこなわれます。

  • ● 外部照射
    骨盤の外から子宮頸がんに向けて放射線を照射する方法
  • ● 腔内照射
    子宮や膣に器具を入れて、子宮頸がんに対して直接的に放射線を照射する方法
  • ● 組織内照射
    放射線がでる物質を子宮頸がんや周辺の組織に挿入する方法

子宮頸がんの進行の予防効果をより高める場合は、抗がん薬の投与を一緒におこなう(化学放射線療法)こともあります。
放射線治療はだるさや吐き気などの副作用があったり卵巣の機能を失ったりしますが、性生活や排尿への影響は手術より少ないです。

薬物療法

子宮頸がんの進行が予防しきれず、転移が伴う場合やがんが再発した場合は、薬物療法をおこなうケースが多いです。
薬物療法は生活の質が下がるのを予防しながら、生存機能を延ばすことを目的におこないます。
薬物はがん細胞の仕組みを邪魔する細胞障害性抗がん薬と、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を攻撃する分子標的薬があり、状態によっては併用することもあります。

まとめ

子宮頸がんは、性行為によってHPVに感染することで起こる女性特有の病気

子宮頸がんは、性行為によってHPVに感染することで起こる女性特有の病気です。そのため、性行為の経験がある女性は、若くても子宮頸がんの発症や予防策を意識する必要があります。
子宮頸がんを予防するためには、HPVワクチンの接種や細胞診による定期検診のほか、性行為でのコンドームの使用、禁煙などが大切です。

子宮頸がんが進行してからの治療では、子宮を摘出しなくてはならず、妊娠・出産に影響するケースもあります。
早期発見を逃して取り返しのつかない状態にならないためにも、予防策を欠かさずにおこないましょう。

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