がん予防で大切なこと 生活習慣や最新医療について解説
国民病と呼ばれることも多い「がん」は、長寿命化に伴い発病する方の人数も増えているといわれています。がんを発病すると進行度合いによっては長期的な治療が必要となったり、体に負担の大きい治療を繰り返すことになったりして、心身も疲弊してしまいかねません。
現代では治療ではなく予防にフォーカスし、さまざまな機関でがん予防に関する取り組みが進められています。2人のうち1人はがんになる可能性が高いとされる日本人ががんを予防するためにはどうしたらよいのか、健康意識が高い方であれば気になるところではないでしょうか。
今回は、がんの予防において大切なことを解説します。がんを予防するためにはどうしたらいいのか、そもそもがんの原因は何なのかなどについて見ていきましょう。
日本人に多いがんの原因
日本人に多いとされるがんは、さまざまな原因によって発病に至ると考えられています。
がんの原因としてまず挙げられるのが、生活習慣です。
日本では、男性の4割以上、女性の2割以上が生活習慣及び感染でがんになるといわれています。
がんに影響する生活習慣は、喫煙や飲酒の習慣のほか、食生活の乱れ、栄養の偏り、運動不足などです。
基本的に、規則正しい生活習慣からかけ離れた行動はがんの原因が増えやすいとされています。
喫煙ががんの原因となる理由として、たばこに発がん性物質が含まれていることが挙げられます。
そのうえ、吸っている本人だけではなく、煙によって周囲にいる非喫煙者にも同様にがんリスクを高めることが科学的にも証明されている状況です。
しかし、すでに喫煙している方であっても、禁煙することでがんになる可能性を下げることができます。
がん予防を目的として禁煙する方も多いため、喫煙の習慣がある方は、たばことの向き合い方について今一度考えてみるとよいでしょう。
また、飲酒は大腸や肝臓、といった内臓のほか、口腔や咽頭、乳房などさまざまな箇所のがんのリスクを上昇させることが明らかになっています。
お酒に含まれるエタノールは、アセトアルデヒドと呼ばれる物質に変化するのですが、この物質には発がん性があると言われているため、飲酒ががんのリスクを高めるわけです。
さらに、喫煙と飲酒の両方の習慣がある方は、それぞれの交互作用によってさまざまながんの発症率を高める可能性があります。
食生活の乱れによるがん発病リスクについては、赤肉(牛や豚等)や加工肉(ウインナーやベーコン等)が関わるとされています。
赤肉や加工肉は大腸がんのリスクを高める食品であるうえに、日本人がよく口にするため、食生活の見直しを図る際に意識してみるのがおすすめです。
なお、運動不足ががんにつながる背景には、そもそも運動が結腸がんのリスクを下げることが挙げられます。
結腸がんのリスクを下げることは、閉経後乳がんや子宮体がんなどの予防にも影響することが分かってきました。
また、運動不足による肥満は、食道がんや大腸がん、腎臓のがん、肝臓がん、すい臓がんなどあらゆる臓器のがんリスクを高めます。
現代の日本人は運動不足気味であることから、がんのリスクが高いといえるでしょう。
ただし、がんの原因は上記だけではなく、他にも体格や遺伝、化学物質、ホルモンなども原因として挙げられます。
すべての原因を解消してがん予防に努めることは難しいものの、できる対策を複数組み合わせて日常生活に取り入れることが重要です。
がんを予防するための生活習慣
日本人に多いがんを予防するためには、どのような生活習慣が望ましいのでしょうか。
前項で触れたがんの原因を踏まえ、科学的根拠に基づき、効果が期待される生活習慣は以下の通りです。
禁煙・副流煙を避ける
がんを予防するための生活習慣として、まず挙げられるのが禁煙・副流煙を避けることです。
たばこには発がん性物質が含まれていることから、たばこを吸わないことが根本的ながん予防につながります。
ただし、禁煙をして自分でたばこの成分を摂取しないようにするだけではなく、周囲でたばこを吸っている人がいる際に受動喫煙にならないように注意が必要です。
直接たばこを吸うよりは、受動喫煙のほうががんリスクは低いものの、がんリスクを高める要因となりかねません。
喫煙所には近寄らない、たばこを吸っている人がいたら物理的に距離を空けるなど、自分でできる受動喫煙対策も心がけましょう。
禁煙が難しい場合には、医療機関に相談することも可能です。
近年は、禁煙外来などのような禁煙するためのサポートをおこなう医療機関が増えてきました。
ひとりでは禁煙が難しいと感じる方は、専門的な知識を持つ医師の支援を受けながら禁煙を目指しましょう。
アルコールの摂取量を見直す
普段からお酒を飲むことが多い方は、飲む頻度や飲む量を減らすことでがん予防につながります。
飲酒をすることで、食道がんや大腸がん、肝細胞がんなどのリスクを高めるとされているため、アルコールの摂取量を見直すだけでがんを防ぎやすくなるでしょう。
実際、1日あたりの純エタノール量の摂取量が23g未満の方のがんリスクと比べると、1日46g以上を摂取する方はがんリスクが40%にまで上昇するとされています。
また、1日に69g以上の純エタノールを摂取する方は、がんになるリスクが60%程度にまで上がるのです。
がん予防に努めたい方にとって、節制もしくは禁酒は必要な生活習慣といえるでしょう。
食生活を改善する
がんを予防するためにも、食生活の改善は必須であるとされています。
医学的な観点からも塩分過多や野菜不足の生活はがんのリスクを高めることが分かっているため、体にやさしい食生活へと切り替え、それを維持することが重要です。
まず、塩分は男性であれば7.5g未満までに抑え、女性は6.5gを越えないように塩分量を調整してください。
また、食物繊維は大腸がんを防ぐうえで役立つ成分です。野菜を積極的に食生活に取り入れ、十分な食物繊維を摂取する必要があります。
野菜に含まれる葉酸やビタミン、イソチオシアネートなどの栄養素においては、がんの原因である活性酵素を消去する効果があるため、野菜の摂取ががん全体のリスクを下げることにつながるでしょう。
他にも、熱い飲み物や熱い食べ物は、食道の粘膜にダメージを与えて食道がんや食道炎のリスクを招くため注意が必要です。
熱いまま口にせず、無理のない温度まで下げてから飲むもしくは食べるようにしましょう。
運動を習慣にする
積極的に体を動かすことはがんのリスクを下げるといわれています。体を動かすことが多い方は、さまざまながんの発生リスクを下げることが明らかになりました。日ごろから運動する方はもちろんのこと、仕事で身体の活動量が高い方もがんになりにくくなるでしょう。
なお、体を動かす際の活動量の目安は、「歩行(もしくは同等以上の強度の身体活動)」を毎日60分と、汗をかく程度の運動を1週間に60分です。
ただし、高齢者の場合、毎日40分の身体活動をおこなうことが推奨されており、運動の強度は本人の可能なレベルでよいとされています。
身体を動かす回数・時間をどれだけ確保できるかが、がんを防ぐうえでのポイントとなるでしょう。
適切な体重を目指す
現在、適正体重よりも高い数値である方は、自分の適切な体重を目指すことで、がんのリスクを下げることにつながります。
男女ともに肥満度が高いとがんによって死亡する確率を上昇させてしまうでしょう。
ただし、痩せすぎもよくありません。
極端に痩せている場合もがんによる死亡リスクを高めるため、適正体重を維持することを心がけてください。
なお、適切な体重を目指すうえで目安となるのが「BMI」です。
男性はBMIが、21.0~26.9の範囲内であればがん死亡率が低い傾向にあります。
女性の場合は、BMIが21.0~24.9の範囲になるように、健康管理をおこなってください。
BMIの値は、「BMI=(体重)÷(身長×2)」で算出できるため、自分のケースと当てはめて適正体重かどうか確認してみましょう。
感染対策をする
ウイルスや細菌の感染対策をおこなうことで、結果的にがんの予防も期待できます。
日本人におけるがんの原因として、感染は比較的多いのが現状です。
女性に関してはがんになる原因として、感染が最も多いとされています。
男性の場合でもがんになる原因として2番目に多いのが実情です。
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは肝細胞がんのリスクを高め、ヘリコバクターピロリ菌は胃がんのリスクを高めるとされています。
また、ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの原因、ヒトT細胞白血病ウイルス1型は成人T細胞白血病リンパ腫を招くことがわかりました。
上記のウイルス・細菌に感染したからといって必ずしもがんになるわけではないものの、がんの原因として感染は多いことから、がん予防の観点では決して無視できない予防策であるといえるでしょう。
がんを早期発見するために大切なこと
積極的にがん予防に努めていても、絶対にがんにならないとは限りません。
さまざまな要因によって、がんになってしまう可能性は十分考えられます。
そんなときに必要なのが、がんの早期発見です。
がんの早期発見は、がんを完治できる可能性を高めるとともに、治療の期間や費用も抑えやすくなります。
がんの早期発見や早期治療などのステップは二次予防といい、がんによる将来の生活の影響をできる限り小さくするためにも必要な段階です。
がんを早期発見するためにも大切な二次予防としては、以下のような方法が挙げられます。
健康診断
がんを早期発見するためにも必要なのが健康診断です。
会社に勤めている方であれば、年に1度は健康診断をおこなうことが義務付けられているため、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
健康診断では、生活習慣病のリスクなどを確認でき、身体の異常を把握するための貴重な機会です。
必ずしもがんそのものが見つかるわけではないものの、がんのリスクを把握するきっかけとなることも少なくありません。
人間ドック
がんの二次予防の方法として一般的でもあるのが人間ドックです。
健康診断にはない胃内視鏡検査や腹部超音波検査などの検査を受けることができ、より詳しく自分の体について知ることができます。
そのため、健康診断では確認できなかった病気のリスクが見つかることも少なくありません。
しかし、健康診断とは異なり、全額が自費となり、検査費用が高額であるため注意が必要です。
専門ドック
専門ドックは、臓器にフォーカスして検査をおこないます。
専門ドックに挙げられるのは、脳ドック(脳の検査)、PET検査(全身の検査)、がん検診(部位別のがんリスクの検査)、心臓ドック(心疾患のリスクの検査)などです。
精密な検査が可能なので、がんの早期発見も期待できます。
専門ドックは、人間ドックにオプション検査として特定の検査を追加できる場合もあるため、検査を依頼する医療機関に確認してみるとよいでしょう。
がんを予防するための最新医療
がんに関する研究が進んでいる昨今、がんの発病を予防するための最新医療が多数登場しました。
もちろん、どのような医療技術があってもがんを完全に防ぐことはできません
。しかし、がんのリスクを下げる効果は期待できるとされているため、がんの予防に関心がある方は以下の最新医療を参考にしてみてください。
CBDオイル
CBDオイルは、「CBD」を含んだオイルのことです。
CBDは、大麻に含まれる成分の一つですが、向精神作用がなく、医療機関でも使われることがあります。
CBDにはさまざまな効果があり、そのうちの一つが「抗がん作用」です。
がんの予防効果が高いとして注目されており、日本国内だけではなく、世界でもCBDオイルに対する関心が向けられています。
抗がん作用のほかにも、抗てんかん作用や抗不安作用、鎮痛作用、抗炎症作用などを持ち、さまざまな心身の病気の軽減・予防を期待できるのが特徴です。
幹細胞培養上清液
予防治療に重きを置いた最新医療の一つが、幹細胞培養上清液です。
幹細胞培養上清液は、ヒト脂肪由来肝細胞から作られており、がん細胞の増殖を抑制する効果が確認されています。
また、がん細胞の増殖を防ぐだけでなく、転移も防げることから、万が一がんを発病した場合も進行して全身にがんが広がってしまうのを防ぐことが可能です。
ただし、投与するにあたっては副作用のリスクもあることから、希望者が必ずしも幹細胞培養上清液の医療を受けられるとは限りません。想定される副作用としては、血糖値の低下や、感染症、アナフィラキシー同様の症状などが挙げられます。カウンセリングをおこなったうえで、専門家の判断のもと、幹細胞培養上清液を受けることが可能です。
水素サプリメント
水素サプリメントは、予防医療として効果があると考えられています。
もともと水素は、がんの原因である活性酸素を消去する抗酸化作用を持っているのが特徴です。
水素による療法は、サプリメントのほかにも点滴や吸入などさまざまなものがありますが、手軽に取り入れやすいのが水素サプリメントのメリットといえるでしょう。
水素水の効果についてはこれまで賛否両論ありましたが、近年では十分な臨床試験結果もあり、がんのほかにもさまざまな疾患への効果が認められるようになりました。
心疾患や脳血管疾患のほか、軽度認知症の領域でも効果があるといったデータもあります。
まとめ
がん予防のためには、生活習慣の見直しといった一次予防のほか、定期的な検診のような二次予防が重要です。
普段の生活を改善しつつ、できる範囲でがんを早期発見できる機会を増やすことで、がんのリスクを下げるとともに、万が一がんを発病しても進行する前に治療を完了させることができます。
また、近年はがんの研究も進み、さまざまな最新医療も展開されていることから、さまざまな方法でがんと向き合うことができるようになりました。
日本人にとって決して他人事ではない病気であるからこそ、予防と治療については正しく理解しておく必要があります。
ぜひ、今回ご紹介した内容を参考にしながら、自分の納得できる方法でがんの予防に努めてみてください。