未病は未だ病気ではないが健康でもない状態「だから予防が大切」
未病「未」は、実現していないという意味なので、未病は未(ま)だ病気ではない状態のこと指します(*1)。
病気でないのなら未病は好ましい状態なのかというとそうではなく、未病は病気と健康の間に位置するので、明確に「健康ではない」状態ともいえるのです。
・健康←(予防する)未病(予防しない)→ 病気
健康づくりにとって未病の考え方が重要になるのは、予防医療に着目できるからです。
予防によって健康を取り戻すことも可能です。
名医は未病の時期に治す
未病の考え方は2000年前の中国で生まれました。「黄帝内経(こうていだいけい)」という医学書に「未病の時期に治すのが聖人」という言葉があります。
聖人とは名医のことなので、これは「名医は未病の段階で治す」という意味になります(*2)。
未病で治すこと、つまり健康と病気の間にいる人が、予防医療を受けて健康状態に戻ることが最良であることは、直感的に正しいことと理解できます。突き詰めると、現代の医療が目標にしている早期発見早期治療もこれに当たるということができます。
日本の現代医療における未病の理解
時を2000年進めて、現代の日本の医療における未病について解説します。
自覚症状と検査結果で判定する
日本未病学会は未病を次のように定義しています(*3)。
■未病の定義(日本未病学会)
・自覚症状はないが検査で異常がある状態→西洋医学的(日本の医療の主流)
・自覚症状はあるが検査で異常がない状態→東洋医学的
自覚症状と検査結果の2つが、未病を判定するときの指標になることがわかります。
そして、自覚症状なし・検査異常ありのタイプの未病へのアプローチは西洋医学的で、自覚症状あり・検査異常なしのタイプの未病へのアプローチは東洋医学的であると考えられています。
日本では西洋医学が主流になっています(*4)。西洋医学の特徴は客観的証拠(エビデンス)を重視していることと、その根底に物理学、化学、生物学があることです。
この客観的証拠こそ検査結果であり、それで自覚症状がなくても検査で異常が検出されたら、西洋医学のアプローチが有効であると考えるわけです。
例えば、自覚症状がなくても血圧や血糖の値が悪化していたら、血圧や糖尿病の薬を飲むことは西洋医学のアプローチになります。
未病の具体的な状態
未病という言葉は聞き慣れていなくても、肥満はよく耳にすると思います。日本未病学会は肥満も未病ととらえています(*3)。
そのほかにも未病には次のようなものがあります。
■未病に該当する健康状態
・肥満
・境界域高血圧
・境界域糖尿病
・高尿酸
・動脈硬化
・骨粗鬆症
・無症候蛋白尿
・B型肝炎ウィルスのキャリア
・無症候性脳梗塞
・潜在性心不全
・脂肪肝
・インスリン抵抗性
・メタボリックシンドローム
「高血圧」と診断されると病気になりますが、これに「境界域」がつくと、高血圧ではないが正常値でもない状態なので未病とみなされます。
高血圧の数値は、診察室で計測した場合で140/90mmHg以上とされています(*5)。そして血圧の正常値は120/80mmHg未満とされています。
その間である120/80~140/90mmHgが、境界域高血圧であり、未病ととらえられます。なお120/80~140/90mmHgのことを正常高値血圧や高値血圧と呼ぶこともあります。
また、動脈硬化や骨粗鬆症は病気と理解されることもありますが、「それだけ」であれば未病と解釈されることもあります。
動脈硬化は「未だ心筋梗塞ではない状態」だが「心筋梗塞に近づいている状態」であり、骨粗鬆症は「未だ骨折していない状態」だが「骨折しやすい状態」といえます。
厚生労働省も注目「人生100歳時代と未病と予防」
厚生労働省は、人生100歳時代が到来するという観点から未病に着目しています(*6)。
100歳まで生きると、その前に健康寿命が尽きてしまい、余生を病気と闘いながら過ごす確率が高くなってしまいます。
それは楽しい老後とはいえないので、未病の状態をいち早く検知して、病気の発症リスクを低下させる取り組みが必要になります。
つまり予防が重要になります。
したがって100歳時代と未病と予防は1セットで考えていく必要があります。
未病指標とは
未病の状態を検知するときや、病気の発症リスクを低下させたいときに使われることがあるのが未病指標です(*6)。
未病は「健康と病気の間」でありとてもアバウトな概念です。このままでは医療現場や治療では使いにくいでしょう。
そこで未病の状態を数値化したのが未病指標です。未病指標があれば、健康に近い未病なのか病気に近い未病なのかがわかります。
未病指標は、身長、体重、血糖値、脂肪、コレステロール、血圧、血糖、脂質、見当識、記憶力、立ち上がり能力、仕事の状況、最近の状況、周囲の人との関係などの心身の健康に関わる項目から数値を算出します。
未病を見える化する意義
未病指標は数値で算出されるので、未病状態を見える化することができます。未病指標があれば、「AさんとBさんはどちらも未病状態だがAさんのほうがより病気に近づいている」といったことや、「Aさんの未病状態は1年前より悪化している」ということがわかります。
未病を見える化することで、次のような行動変容を起こすことができます(*6)。
■未病指標で未病を見える化することで期待できる行動変容
・本人:健康状態をよくしようという気持ちが芽生え、生活習慣を改善しだり、早期治療に取り組むことができる
・企業:未病状態を改善する商品やサービスを開発でき、健康ビジネスによって社会貢献ができる。または従業員の健康状態を管理することで健康経営を推進できる
・自治体:地域の健康課題や健康ニーズを把握する動機になり、それが健康施策につながる
・社会システム:未病改善行動を評価する保険の開発やESG投資などが進む
未病がくっきりみえてくると、個人だけでなく企業も自治体も社会全体も健康志向が強まることがわかります。
まとめに代えて~未病で治すことを目指すセントラルメディカルクラブ世田谷
セントラルメディカルクラブは未病対策にいち早く取り組んだ会員制医療サービスの1つであると自負しています。
この考え方は2023年3月に新設したセントラルメディカルクラブ世田谷にも引き継がれていて、2次予防に注力しています。
予防には次の3段階があります。
予防の段階 | 内容 |
1次予防 | 生活習慣病・生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、病気の発生を予防する |
2次予防
(セントラルメディカルクラブ世田谷が注力) |
早期発見、早期治療を促進して病気の重症化を予防するための処置や指導を行う。具体的には健康診断、人間ドック、検診を実施する |
3次予防 | 治療過程において保健指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰の促進や、再発を予防する取り組み |
セントラルメディカルクラブ世田谷が2次予防に力を入れるのは、高精度の検査機器を使い、顧問医による健康管理を行うことによって、未病状態や病気の兆候、初期症状を正確に素早く検知できるからです。
こうした取り組みにより、病気の発症や病気の重症化を予防する医療を提案することができます。