超高齢社会と予防医療の重要性
未病高齢化社会という言葉が定着した日本ですが、2021年現在、日本はさらに高齢者が人口の多くを占める「超高齢社会」を迎えています。超高齢社会になると、医療分野の負担がより大きくなるだけでなく、国民全員の生活への影響も増大すると考えられています。
深刻化しつつある超高齢社会を迎えるために、個人がやるべきことの重要なポイントの1つが「健康維持と増進」です。今回は、高齢社会に関わる日本の現状と予測、さらにそれによる医療負担の増大と今からできるその対策について解説します。
高齢化社会から高齢社会。そして超高齢社会へ
人口のうち7%を65歳以上の高齢者が占める社会を「高齢化社会」、さらに人口の14%になると「高齢社会」、そして人口の21%を超えると「超高齢社会」とされます。日本においては1995年に高齢社会となり、さらに2010年には高齢者が占める割合が23%超となって超高齢社会に突入しました。
2021年12月現在も超高齢社会の深刻化を改善するための有効な手立ては行われておらず、内閣府が発表した「令和3年版高齢社会白書(全体版)」によると、2020年10月1日次点で日本の総人口の1億2571万人に対し、65歳以上の人口は3619万人と高齢化率は28.8%となっています。
さらに、今後は団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」では、後期高齢者が2,200万人を超えると予測されており、高齢者をめぐる課題は今後ますます大きくなると予想されています。
超高齢社会と医療問題
労働力不足や国際競争力の低下など、超高齢社会は様々な問題の原因となっています。そのなかでも、特に深刻とされているのが医療における諸問題です。
例えば、医療の需要が高い高齢者が増える一方、少子化などによって医療関係者の確保が難しくなっており、病院数の減少や医師不足が深刻になると考えられています。また、医療の近接分野である介護も同じ課題があるとされており、現場スタッフの負担増のほか、患者本人が満足なサービスを受けにくくなるほか、家族の負担も増大する恐れがあると考えられています。
さらに避けては通れないのが「医療費」と「医療負担」です。現在、70~74歳が2割負担、75歳以上は1割負担と高齢者が医療サービスを受けた際に支払う自己負担金は、他の世代の3割負担よりも低い割合に設定されています。しかし、高齢者が増えると現在、国民医療費の半分以上を占める高齢者の割合がさらに増加し、負担金の見直しなどが検討される機会が増えると想定されています。
負担率が変わると将来、医療サービスが必要になったときの支払いも多くなり、家計にとっても大きな影響になると考えられます。そのための備えとして必要性が高まっているのが、「予防医療の増進」なのです。
超高齢社会と予防医療
予防医療とは、「健康の維持・増進」や「病気の重症化、再発などの防止」を目的とする医療のことです。予防医療には3段階あり、特に超高齢社会のなかで幸せに生き続けるためには今ある健康をできるだけ長く維持し、病気を未然に防ぐための「1次予防」が重要とされています。
一次予防の内容としては、適切な食生活や運動、禁煙、ストレス解消などが挙げられます。ウォーキングを習慣にしたり、外食を控えてバランスの良い食事の摂取などが代表的で、そのような生活改善が、将来のQOL(生活の質)に直結するとされています。
予防医療の重要性に関わる事例の1つが、日本の「平均寿命と健康寿命の差」です。健康寿命とは、平均寿命から寝たきりや認知症にかかっている期間を差し引いた値のことで、日本では以下のようになっています。
■日本の平均寿命と健康寿命
平均寿命 | 健康寿命 | ||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 |
80.98歳 | 87.14歳 | 72.14 | 74.79 |
平均すると約10歳の差があることが明らかになっており、この10年間は患者の身体的な負担はもちろん、入院費や通院費、薬代など様々な医療費が増大すると考えられます。健康的な生活を長く送り続けることで、本人の幸せはもちろん、家族への負担軽減につながることは明白といえるでしょう。
超高齢社会は検診の重要性も高まる
超高齢社会における一次予防医療の重要性について解説しました。ただ、がんや遺伝に関わる病気などは、健康的な生活を送っていても発症してしまうケースは珍しくありません。その対策として重要なのが二次予防医療の代表格である「検診」です。二次予防医療は、病気を早期発見し早期治療につなげることが目的であり、なるべく早く治療することで本人の負担や必要な医療費の低減も図れるのです。健康診断だけでは不十分なケースもあるので、年齢や病気に合わせて人間ドッグなども検討してみてはいかがでしょうか。