健康寿命を伸ばすには?運動や食事など生活の中で気をつけることを解説
医療や生活環境の発展に伴い、私たち日本人の平均寿命は伸び続けています。QOL(生活の質)を保ち、長い人生を豊かに生きるためには、健康であることが欠かせません。
この記事では、健康寿命を伸ばすことのメリットや、健康寿命を伸ばすために日常生活のなかで気を付けるべきことなどを解説します。「生涯現役でいたい」「定年後も色々なことにチャレンジしたい」「人生の最期まで自分らしく過ごしたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
健康寿命とは
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。単に長生きするだけでなく、生活の質も大切にする考え方は、シニアライフまで充実した生活を送るために欠かせません。
日本は2000年の世界保健機関(WHO)発表の「世界の健康寿命ランキング」で1位となり、「健康寿命」が注目されるようになりました。また、同年には厚生労働省により「健康日本21(第一次)」が策定され、壮年期死亡の減少・生活の質向上とあわせて「健康寿命の延伸」が最大の目標とされています。
健康寿命を伸ばすための政策「健康寿命延伸プラン」
日本では、健康寿命を伸ばすために政府により策定された「健康寿命延伸プラン」があります。健康寿命延伸プランでは、2040年までに健康寿命を男女ともに2016年に比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目標としています。そして、この目標を達成するために、以下の3つの取り組みが推奨されています。
- ・次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成
理想的な生活習慣には、「バランスの取れた食事」「定期的な運動」「十分な睡眠」などを意識した毎日を過ごすことが重要です。 - ・疾病予防・重症化予防
病気の予防には、健康的な生活習慣を送りながら、「定期健診の受診」や「予防接種」を受けましょう。 - ・介護予防・フレイル対策、認知症予防
これらを予防するには、「筋肉トレーニング」の継続や、脳を活性化する「社会への参加」や「脳トレ」などの実践が効果的です。
健康寿命を伸ばすことによるメリット
このように、健康寿命を伸ばすことは政策としても推進されています。では、健康寿命が延びることで個人が受けられるメリットにはどのようなものがあるでしょうか。
経済的な安定が図れる
健康を維持することにより、定年まで勤続したり、定年後も仕事を続けたりできます。働ける時間が増えれば、収入を得る期間も長くなり、生活費や将来の備えとして貯蓄や資産運用もしやすくなるでしょう。結果として、経済的な不安が減り、老後の安定した暮らしにつながります。
家族の介護負担が軽減される
健康であれば身の回りのことを自分でできるため、家族介護の必要がありません。自分自身も制限なく自由に生活できるほか、家族全体のより自由で豊かな生活が実現可能です。
精神的な安定や幸福感の向上にも寄与する
元気な身体で過ごせると、気持ちも明るくなり、生活の質が向上します。病気や体調不良の心配が減ることで、日々の生活がより楽しく前向きになるでしょう。これが精神的な安定や幸福感の向上につながり、より充実した人生につながります。
健康寿命を伸ばすための4つのアクション
健康寿命を伸ばすための、具体的なアクションは以下の4つです。
- ・食生活の見直し
- ・運動習慣の確立
- ・健康診断と予防接種
- ・ストレス管理と睡眠
それぞれ詳しくご説明します。
食生活の見直し
健康寿命を延ばすためには、日々の小さな積み重ねが鍵となります。特に、毎日の食生活を見直すことは、その中でも最も重要なアクションのひとつです。
なぜなら、バランスの取れた食事は、生活習慣病の予防や体の免疫力を高めるなど、心身の健康を保つために大きな影響を与えるからです。健康な体を維持することで、病気にかかるリスクを減らし、長期にわたって自立した生活を送ることが可能になります。
では、具体的にどのような食生活を心がければよいのでしょうか?そのためには、肥満の予防や栄養のバランスを意識することが大切でしょう。
肥満にならない食生活とは
肥満は、さまざまな生活習慣病の原因となり、健康寿命を短くする要因の一つに挙げられます。肥満を予防するには、以下の点に注意しましょう。
- ・カロリーの摂取量と消費量のバランスを取る
- ・食事は適量を守り、栄養バランスを考慮したメニューを選ぶ
- ・加工食品や高カロリーなスナックの摂取を控え、食事全体のバランスを意識する
野菜や果物は積極的に
野菜や果物には
- ・ビタミン
- ・ミネラル
- ・食物繊維
などの栄養素が豊富に含まれており、日々の健康の維持に必要不可欠です。とくに食物繊維は腸内環境を整え、消化を促進し、肥満や生活習慣病の予防に役立ちます。毎食に野菜を取り入れ果物を適量摂取できれば、栄養のバランスを保ち免疫力の向上や病気予防につながるでしょう。
肉より魚を心がける
魚には
- ・良質なたんぱく質
- ・不飽和脂肪酸(オメガ-3脂肪酸)
が豊富に含まれており、心臓病のリスクを減らし、脳の健康を保つ働きがあります。とくに青魚(サバ、イワシ、サンマなど)は、血液をサラサラにし血管の健康維持に効果的です。肉類を食べる際は、脂肪分の少ない部位を選び摂取頻度を抑えることをおすすめします。
主食・主菜・副菜を意識する
バランスの良い食事には
- ・主食(ご飯やパンなど)
- ・主菜(魚や肉、大豆製品など)
- ・副菜(野菜や海藻類など)
の3つの要素を意識して取り入れるのが重要です。主食はエネルギー源として必要不可欠ですが、白米の代わりに玄米や全粒粉のパンを選ぶと、より多くの栄養素を摂取することができます。
主菜には
- ・魚や脂肪分の少ない肉
- ・大豆製品
などのたんぱく質をバランスよく摂り入れましょう。副菜には野菜を中心に多様な種類を組み合わせて摂ることで、体に必要なビタミンやミネラルを補えます。
運動習慣の確立
運動は、身体の健康を維持し病気を予防につながる健康寿命を伸ばすために欠かせない要素です。日常的に体を動かすことは、筋力や柔軟性の維持や心肺機能の向上、精神的なストレスの軽減につながります。健康寿命を伸ばすためにも、まずは1日10分を目標に、体を動かす時間を増やしてみましょう。
健康寿命を伸ばすための運動
- ・散歩・ウォーキング
気軽に始められ、心肺機能を向上させる効果が期待できる運動です。景色を楽しみながらの散歩やウォーキングは、ストレス解消にもつながります。 - ・水中運動(水泳・ストレッチ・歩行)
水の中でおこなう運動は、関節に負担をかけずに全身の筋肉を鍛えられるため、リハビリや高齢者の運動としても適しています。水泳や水中でのストレッチ、歩行などが効果的です。 - ・ラジオ体操
日本で広く親しまれている体操で、全身をまんべんなく動かすことができるため、運動不足の解消に役立ちます。短時間で効率よく全身運動が可能で、毎日の習慣として取り入れやすいでしょう。 - ・ストレッチ・筋トレ
筋力を維持・向上させる筋トレと柔軟性を高めるストレッチは、どちらも健康維持に重要な運動です。自宅でも簡単におこなうことができ、継続することで骨や筋肉を強化する効果があります。 - ・ロコトレ
筋力低下や関節の病気などで、歩行や立ち座りの日常生活動作が困難になる状態をロコモティブシンドロームといいます。このロコモティブシンドロームを防ぐトレーニングが「ロコトレ」です。
具体的には、片足立ちやスクワット、コグニサイズなどが挙げられます。コグニサイズとは、コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせる体操のことで、例えばステップ運動をしながら頭で計算やしりとりをします。
健康診断と予防接種
健康診断(人間ドック・がん検診・歯科検診など)や予防接種は以下のようなメリットがあるため、健康寿命を伸ばすために重要といえます。
- ・生活習慣病やその他の病気を早期に発見できる
- ・個々の健康状態に応じた予防策や治療方針を立てられる
- ・自分の健康状態を正確に把握でき、不安を解消できる
- ・感染症の予防や重症化リスクの低減ができる。
ストレス管理と睡眠
健康寿命を伸ばすには、心の健康や活動と休息のバランスを保つことが重要です。慢性的なストレスは、心臓病や高血圧、糖尿病などのリスクを高めたり、心の健康を阻害したりします。
そのため、心身の健康を保つために日頃からストレスと上手に付き合うことが大切です、ストレスを溜めないためのポイントは以下のとおりです。
- ・セルフケアをおこなう:規則正しい生活を心がけ、自分のできる範囲で自分のケアをおこなう
- ・ストレスサインに気づく:心のモヤモヤや体の不調に早めに気づくようにする
- ・リラクゼーションをこころがける:腹式呼吸・好きな音楽を聴く・ストレッチなどでリラックスする
- ・友人や家族に話す:親しい人に相談し、気持ちを共有する
- ・睡眠時間を確保し睡眠の質を上げる
質の良い睡眠を確保するには、日光を浴びる・適度に運動する・寝る部屋をできるだけ暗くするなどを心がけると良いでしょう。
健康寿命に関わる病気と予防のポイント
重大な病気であればあるほど、治療に関する身体的・精神的負担が大きかったり、治療後の生活に影響が出たりする可能性が高くなります。日頃から健康に気をつけていても病気にかかってしまうことはありますが、健康寿命を伸ばすために特に気をつけたい病気について解説します。
高血圧
高血圧は、脳血管障害や心疾患といった重大な病気の引き金になることがあります。しかし、日常的に血圧をチェックすることは簡単で、早めに発見して治療すれ症状の安定が期待できる病気です。
高血圧の予防にはバランスの良い食事を摂り、減塩を意識しましょう。睡眠をしっかり確保し、交感神経を刺激しないことも大事です。
糖尿病
糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで全身の血管にダメージを与え、さまざまな合併症を引き起こします。認知症の原因となる脳血管障害、腎不全や視力の低下など深刻な症状につながりやすいです。
健康診断で血糖値を確認し、異常があれば必ず医師の指示を受けましょう。また、日常生活では適度な運動やバランスのとれた食事を意識し、血糖の上昇に影響する喫煙や過度なアルコール摂取は控えましょう。
脂質異常症
脂質異常症は血管の老化を早めるため、健康寿命に直結する動脈硬化や脳血管障害・狭心症や心筋梗塞を起こす可能性がります。以下のポイントに注意して予防に取り組みましょう。
- ・穀物類(ご飯、パンなど)を摂り、動物性脂肪(特に肉類)を控える
- ・青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に含まれる不飽和脂肪酸(EPA、DHA)を摂取する
- ・大豆食品や野菜、豆類、海藻類などを積極的に取り入れる
脂質異常症については、以下の記事でも詳しく解説しています。
がん
がんは、医療の発展により「治る病気」になりつつあります。しかし、発見が遅れると治療の選択肢が限られてしまう他、治療後の生活にも影響する可能性があるため、予防と早期発見が欠かせません。
以下は、国立がん研究センターがまとめた「日本人のためのがん予防法(5+1)」です。健康寿命を伸ばすために必要な取り組みと共通していることが分かります。
- ・禁煙する
- ・節酒する
- ・食生活を見直す
- ・身体を動かす
- ・適正体重を維持する
- ・「感染」もがんの主要な原因です
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」
骨粗しょう症
骨粗しょう症による骨折・転倒は、要介護状態になるリスクが大きくなり、健康寿命に大きく影響します。食事や運動で予防に取り組みましょう。
骨を強化する食事
骨を強くするには以下の栄養素が必要です。
- ・カルシウム:牛乳・乳製品、小魚、干しエビ、野菜(小松菜、チンゲン菜)、大豆製品に含まれる
- ・ビタミンD:サケ、ウナギ、サンマ、メカジキ、卵、キノコ類などから摂取できる
- ・タンパク質:タンパク質不足は骨密度低下を助長する
骨を強化する運動
骨密度を上昇・維持するためには日常生活でできる運動も取り入れましょう。
- ・散歩
- ・階段の上り下り
- ・ジョギング
- ・エアロビクス
などが効果的です。
認知症
健康寿命に大きく関わる認知症発症のリスクとしては、生活習慣病や運動不足が挙げられます。ほかには
- ・社会的な交流
- ・知的活動
などで脳への刺激を増やすのも重要といえるでしょう。
まとめ:健康寿命を伸ばすには食事や運動に加え睡眠や予防接種も大切
この記事では、健康寿命を伸ばす具体的な方法や、健康診断や人間ドックで早期に発見し予防すべき病気について解説しました。若い頃からの健康意識の向上は、生活習慣病や認知症の予防につながります。
健康寿命を伸ばすための取り組みは、日々の生活のなかで気をつけられることがほとんどですので、ぜひ実践してみてください。また、自分だけでなく医療の力を借りながら健康維持をしたいという方は、会員制医療クラブの活用もおすすめです。
「セントラルメディカルクラブ世田谷」では、高精度な人間ドックや、経年変化がすぐに確認できる健康データ管理、健康(医療)相談サービスにより、会員様の健康を総合的にサポートいたします。