遠隔画像診断を行うことで、セカンドオピニオンはどのように進化したか
人間ドック 検査画像診断とは、放射線科専門医が、CTやMRIなどの画像検査機器で撮影した患者さんの画像をみて、病気の有無を確認することです。体に侵襲のある検査を行う前に腫瘍の部位やそのリスクなどが分かるため非常に重要で現在の医療にとって必要不可欠な診療の一部です。
このような画像診断がITとインターネット技術の発展により遠隔で行なえるようになりました。これを遠隔画像診断と言います。
たとえば、あなたが、地元の病院で画像検査を受けるとします。その後、病院の主治医は、インターネットを使って患者さんの画像を遠隔地にいる画像診断のスペシャリストである放射線科専門医に送り、放射線科専門医がその画像を診断してくれるのです。
遠隔画像診断は、1)画像診断の質が高まり治療に貢献できる、2)地方の医師の負担が減る、3)画像診断のスペシャリストである放射線科医のスキルを有効活用できる、4)セカンドオピニオンの質が向上する、という4つのメリットを生みます。
この記事では、4)に注目し遠隔画像診断がセカンドオピニオンの質をどのように高めるのか解説します。
そもそも画像診断とは
遠隔画像診断を紹介する前に、そもそも画像診断とは何か、を解説します。
画像検査はみえないものをみる
患者さんの体のなかをみないと、病気の有無やその確定診断、並びに病気の進行具合が確認できないことがあります。しかし、複数個所にあるいは危険な部位に病気があった場合、実際に医師が自身の目で確認しようとすると、患者さんの体を何か所も針などで傷つけないとできません。これは現実的ではありません。
そこでX線などの放射線、磁場、電磁波、超音波などで体内の状態を画像化する技術が生まれました。それらの画像化する技術を使った検査が、画像検査です。そして、画像検査で得た画像をみて医師が診断を下すことを画像診断といいます。
遠隔画像診断は、なぜ可能になったのか
例えば、患者さんのX線検査の写真を、遠方の放射線科専門医に宅配便で送って画像診断してもらうことも、遠隔画像診断になりそうですが、これは「遠隔画像診断」とは呼ばれません。
現在、遠隔画像診断と呼ばれているものは、画像検査で得た画像のデジタルデータをインターネットを経由して遠方の医師に送って画像診断をしてもらう仕組みです。
ポイントはデジタルデータとインターネットです。
現代のほとんどの画像検査の画像は、デジタルデータになっています。
これなら、医療機関からインターネット経由で画像診断のスペシャリストである放射線科専門医へ画像を送ることができます。
さらに、情報漏洩を防ぐセキュリティ対策が進化したことで、安全確実に画像を送信する遠隔画像診断システムが確立しました。
他にもデジタルデータの利点があります。患者さんの画像検査のデータはデジタルデータとして医療機関のサーバに保存されていますので、後日、その画像を取り出し、遠隔画像診断を依頼することも可能になりました。
地方の医療の質を上げる
地方の医療機関の場合、画像診断を専門にしている放射線科専門医が在籍していないことがあります。もちろん主治医やがんの治療をする外科医も、画像をみることはできますが、判断が難しい画像や慣れていない部位の画像などがある場合には、やはり放射線科専門医の意見を聞きたくなります。
このような時にでも、遠隔画像診断システムがあれば、地方のがん治療の外科医が、遠方にいる放射線科専門医に意見を求めることができます。
このように遠隔画像診断という技術は、地方や僻地の医療格差をなくし安心して皆さんが暮らせる社会の基盤であるとも言えるでしょう。
セカンドオピニオンと遠隔画像診断
遠隔画像診断が、どのようにセカンドオピニオンを進化させたのか、みていきましょう。
そもそもセカンドオピニオンとは
セカンドオピニオンとは、患者さんが、主治医以外の医師の意見を聞く仕組みです。
例えば患者さんが、主治医から「この病気の治療法にはAとBの2種類があり、どちらを受けるか患者さんに決めてもらいたいが、自分はAをおすすめする」と言われたとします。このとき患者さんによっては、ほかの医師の意見を聞きたくなるでしょう。
ほかの医師も治療Aをすすめたら、患者さんは安心して治療Aを受けることができます。
ただしここで注意する点はこの治療の選択肢であるAとBが標準治療であり、さらには、各ガイドラインや学会のスタンダードであって、かつ保険診療であるという少し複雑ですが重要な条件の下でのお話です。
近頃の医療では保険診療外の自由診療というものがあります。自由診療となるとさらに選択肢も広がります。患者さんのQOL(生活の質)ができるだけ損なわれない治療方法や保険診療でも自由診療でもどちらの選択肢も提案してくれるようなセカンドオピニオンの医師が理想的です。
セカンドオピニオンは、患者さん主体の治療を進めるうえで、重要な過程になります。
遠隔画像診断はセカンドオピニオンをする医師の「武器」になる
セカンドオピニオンを受けるとき、セカンドオピニオンの医師は、患者さんが過去に受けた検査結果を確認します。画像検査も同様です。もしセカンドオピニオンの医師が画像診断のスペシャリティでない場合、遠隔画像診断を利用して放射線科専門医の意見を聞き、セカンドオピニオンを出すことができます。
日本中のスペシャリストにセカンドオピニオンを依頼できる
セカンドオピニオンの希望を主治医へ伝えると、後日になりますが紹介状がでます。その時、患者さんはその紹介状に加え検査画像のCD-ROMをもってセカンドオピニオンを受診します。
セカンドオピニオンの際に放射線専門医の意見を聞くときは、事前にこれらの資料をセカンドオピニオンの医師に送付しておきます。遠隔画像診断を使えば、画像診断のスペシャリストの医師がどこにいても、より正確なセカンドオピニオンを依頼することができます。
さらにオンライン診療のシステムを組み合わせれば、受診したいセカンドオピニオンの医師が遠方にいても患者さんはスマフォやパソコンを使って受診ができます。
まとめ~患者さんがITの恩恵を受けられる
ITは医療を大きく変えました。医療はITによって大幅に効率化され、医療従事者たちの生産性を高めました。遠隔画像診断も、ITとインターネット技術の進化のたまものといえます。
遠隔画像診断は、医療従事者だけでなく、患者さんにとってもメリットが大きい医療システムです。そして、患者さんが肌感覚で遠隔画像診断のメリットを感じられるのが、セカンドオピニオンです。
遠隔画像診断でセカンドオピニオンが進化することで、患者さんが納得できる医療が実現します。
医療のIT化により、カルテが電子カルテになり、クラウドカルテも存在するようになりました。これにより処方箋の伝票は手書きから印刷になり、一部の医療機関では会計も機械でできるようになっています。予約システムがある病院も増えてきました。
画像は先述のようにインターネットを経由して遠隔地の医師に送ることができ、また遠隔地の医師もいつでもどこでも条件さえ合えば画像を見られるようになりました。
医療従事者にとっては業務の効率化に繋がり、患者さんにとってはよりよい医療を受けられる機会が増えることに繋がりました。
今後はAIやロボット医療などがさらに医療現場を変えていくことでしょう。
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