高血圧を改善する方法しての運動を考える
未病高血圧を改善する方法の一つとして、今回は運動を紹介します。
高血圧といえば、肥満、ストレス、喫煙、塩分の摂りすぎなど生活習慣の影響を受けやすい疾患です。また、もともと腎臓が悪い人も血圧は高くなります。
食生活の改善に加えて運動をすることで、より効果的に血圧を正常に戻すことが期待できます。
運動の位置づけ
高血圧症の治療法として日本高血圧学会は、次の7つを挙げています(*1)。
1)食塩の摂取を減らす
2)野菜や果物を多く食べるようにする
3)飽和脂肪酸と総脂肪摂取量を減らす
4)肥満の人は体重を減らす
5)運動や身体活動量を増やす
6)アルコールの摂取を制限する
7)禁煙する(受動喫煙の防止も含む)
健康診断などで高血圧を指摘されたら、この7つに取り組む必要があります。
この記事では、運動についてフォーカスしていきます。
推奨される運動量、運動の内容
厚生労働省は高血圧の人に、次のような運動を推奨しています。しかし、他の心疾患や腎疾患などを既往に持つ方は、主治医と相談しながら運動するようにしてください。
・1日30分以上の運動を行う
・できれば毎日
・運動の強度は中等度(ややきつめ)
・有酸素運動
例えば、電車で通勤している人なら、少し汗ばむくらいの早歩きで30分かかる駅の区間があれば、途中で電車を降りてその区間を歩けば、それだけで上記を達成できます。土日や祝日は、公園などに出かけて30分のウォーキングをすればよいでしょう。
普段はエレベーターやエスカレーターを使うところを、あえて階段を使って昇り降りをすれば、それでも中等度の30分間の有酸素運動を毎日こなすことができそうです。
このように「高血圧解消運動」は、日ごろの少しの心がけで達成できます。
有酸素運動とは
有酸素運動とは、酸素をたっぷり吸収しながら行う運動のことです。ウォーキングは、息を吸ったり吐いたりしながら歩くので有酸素運動といえます。
無酸素運動とは、息を止めて行う運動のことです。重量があるものを持ち上げる際に息を止めますが、これは無酸素運動になり、たとえば筋肉トレーニングのような運動には血圧を下げる効果はあまり期待できません。
ウォーキング以外の有酸素運動には次のようなものがあります。
・ジョギング
・水泳
・自転車
・レクリエーション
ジョギング、水泳、自転車は内容次第で激しい運動にもなりますが、血圧を下げることが目的であればそこまで強い動きは必要ありません。
レクリエーションも、中等度の運動負荷がかかり30分以上継続するものであれば、血圧を下げる有酸素運動に数えることができます。
運動はどれくらい血圧を下げるのか
血圧は一般的に、医療機関で計測する値が140/90mmHg以上になると高血圧と診断されます。しかし、130~139/85~89mmHgの人は正常高値血圧と言って注意が必要です。
140のことを収縮期血圧といい、いわゆる上の血圧です。
90のことを拡張期血圧といい、下の血圧と呼ばれています。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトでは、高血圧症を改善するための運動として以下のように説明しています。
運動療法は血管内皮機能を改善し、降圧効果が得られ、高血圧症を改善するといわれています。また習慣的な有酸素運動が収縮期血圧を3.5mmHg低下、拡張期血圧を2.5mmHg低下させ、高血圧患者においても収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させる効果があるといわれています。
運動が血圧を下げる理由1:肥満解消
運動が血圧を下げる理由はいくつかありますが、ここでは肥満解消と一酸化窒素の放出について確認していきます。
先に、肥満解消について解説します。肥満は、高血圧のリスク要因になっています。
しかし、運動することで肥満は解消でき、血圧も低下させます。なぜなら、運動により体重がコントロールできることで、肥満を軽減させる、あるいは適正体重にすることができるからです。
肥満の人の多くは過食傾向にあります。そのため塩分摂取量が増え、体内のナトリウム量が増えます。ナトリウムには水分を保持する作用があり、水分は血液の材料なので、過剰なナトリウム摂取は血液の量を増やします。
血液の量が増えると、血圧が上がります。ホースに大量の水を流すと、水がホースの内側を押す圧力が強くなりますが、それと同じことが血管内で起きるからです。
また、肥満の人は大量に糖を摂取する傾向にありますが、血糖値が上がるとインスリンが大量に分泌されます。インスリンは腎臓に働きかけ、ナトリウムの再吸収という現象を強化します。ナトリウムの再吸収が強化されると、血中のナトリウムが増え、血液量が増えて血圧が高くなります。
運動が血圧を下げる理由2:一酸化窒素の放出
運動不足は血管内皮機能を低下させることがわかっています(*3)。
血管内皮機能とは血管内皮細胞の働きのことで、この細胞は一酸化窒素を放出する役割などを担っています。
一酸化窒素は血管を柔らかくする効果があります。
再びホースを例に説明しますと、ホースの素材が柔らかければ、中を通る水が少しくらい増えても「いなす」ことができ、圧力の上昇を抑えることができます。
つまり、柔らかい血管には、血圧を簡単には上げさせない効果があるわけです。
運動をすると、血管内皮機能が高まり、一酸化窒素の放出量が増え、血管を柔らかくして血圧の上昇を和らげます。
まとめ~理にかなった対策といえる
「運動をすると健康になるので高血圧にもよい効果をもたらすのだろう」ということは直感的にわかると思います。
この直感を持ちながら、ぜひ、運動が血圧を下げる理屈も覚えておいてください。
・運動→肥満解消→ナトリウムの減少→血液量の減少→血圧の低下
・運動→血管内皮機能が高まる→一酸化窒素の放出→血管が柔らかくなる→血圧の低下
この2つのメカニズムで運動が血圧の低下をもたらします。
高血圧の人はぜひ、「理にかなったことをしている」と思いながら運動に取り組んでみてください。