黒字倒産はなぜ起こる? 原因と回避方法を徹底解説
その他黒字倒産とは経営が黒字状態であるにも関わらず倒産してしまうことを指します。一般的に「倒産」というと赤字が続いたために起こるとイメージされますが、黒字=倒産しない、赤字=倒産する、というわけではありません。経営が赤字状態であっても経営を続けている会社が存在する一方で、経営が黒字状態でも倒産になってしまうことは少なからずあります。したがって、事業が好調で黒字の状態でも倒産には気をつけなければなりません。
ここからは黒字倒産が起こる背景や黒字倒産を回避する方法について解説していきます。
黒字倒産はなぜ起こる?
黒字倒産が起こる原因は「社内に現金がないこと」です。現金がなくなることの背景としては売掛金の入金と買掛金の出金のタイミングが違うことです。
通常、会社と会社の取引においては商品やサービスを販売した際の売上は損益計算書に計上されますが、実際の対価はすぐに支払われるわけではありません。取引では現金払いではなく、掛け取引と言って実際に会社に対価が支払われるのは数ヶ月後になることが一般的です。したがって、見た目上は売上が上がっていて経営が黒字でも、実際に会社の口座には現金がないという事態が起こりえます。特に出金が入金より先に発生する場合は現金が枯渇することは中小企業やベンチャー企業ではよくあることです。商品やサービスの対価の入金と出金のタイミングを理解しておかなければ、会計上は黒字化していても、売上のほとんどが売掛金であり、現金がなく資金が尽きてしまい、結果として黒字倒産になってしまいます。
黒字倒産の事例:江守グループホールディングス
売掛金の管理に失敗し、黒字倒産した事例として代表的なのが江守グループホールディングスです。江守グループホールディングスは倒産する直前まで4期連続で最終利益は過去最高を更新し、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益とも毎期増収増益という好業績にも関わらず倒産したのです。
倒産の直接的な原因は中国の取引先の資金繰りが悪化し、中国にある子会社で計上していた売掛金の回収が困難になったことです。多額の貸倒引当金を計上し、最終的には負債総額は700億円となりました。
江守グループホールディングスの業績は、会計上は好調でしたが、売掛金や現金の管理がずさんであり、キャッシュフローベースでは赤字が続いていました。売上を出しながら、子会社が売掛金を回収できずに大量の資金を垂れ流し、結果として資金繰りに行き詰まったのです。江守グループホールディングスは商社として商品を売っていながら、資金の回収ができていなかったのです。この事例からも売掛金の回収及び現金の管理の重要性がわかると思います。
黒字倒産の回避方法
黒字倒産を回避するためにはどのようなことに注意して、どのような対策をとればいいのでしょうか?結論から言えば、黒字倒産を防ぐためには会社のキャッシュを常に確保しておくことが重要です。それでは、キャッシュを常に確保するためにはどのような手段があるのでしょうか?黒字倒産を防ぐためにキャッシュを確保する方法について解説します。
黒字倒産の回避方法①:不良債権の管理
黒字倒産を回避するためには不良債権に細心の注意を払っておきましょう。不良債権とは取引先の経営悪化などを理由に回収できなくなった、あるいは回収が難しい債権を指します。不良債権の発生を未然に防ぐためには入金のある取引先の信用度の測定、つまり格付けをすることが肝心です。具体的には業界平均と比べて自己資本が極端に少なくないか、極端に古い在庫が滞留していないか、与信限度額を設けておくなどの対策です。
取引先の格付けを実施し、格付けの低い会社からの売掛金には限度額を設けるようにすることで不良債権の発生を防いだり、発生しても損失を最小限に抑えられます。取引先の倒産など不測の事態に備えるためにも不良債権には常に細心の注意を払っておきましょう。
黒字倒産の回避方法②:銀行へのリスケ
銀行へのリスケは資金繰りが悪化し、黒字倒産の可能性が見えてきた場合に応急処置的にできる対策です。リスケとは「リスケジュール」の略称であり、借入の返済期間の猶予や支払額の減額を銀行に依頼することです。銀行にリスケを依頼する際には銀行に資金繰りが悪化した原因を客観的に説明し、現在の経営状況を示した経営改善計画書やコストダウンの計画書、資金繰り予測表などを提出しましょう。銀行側にとってはリスケを依頼されることは珍しいことではないので、リスケに根拠が有り、確実に返済されると判断できれば、成功することが多いです。また、民間の金融機関ではなく日本政策金融公庫などの政府系金融機関のほうがリスケに応じてくれる可能性が高いので、普段から資金調達手段として政府系の融資を優先的に活用することを検討しましょう。
まとめ
黒字倒産は一見不思議な出来事のように思えますが、会社の規模にかかわらず、黒字倒産の可能性はあります。ニュースをみればわかりますが、上場している大企業でも黒字倒産は発生しています。黒字倒産を回避するために常にキャッシュに注意を払い、資金繰りの管理を行いましょう。