上部内視鏡検査の費用とは?検査の流れや注意点について解説
上部内視鏡検査は人間ドックなどで行われることもある検査です。苦しい、つらそうというイメージがあって不安な方もいるのではないでしょうか。上部内視鏡検査の費用や検査の流れ、「検査は痛いのか?」など気になるポイントをお伝えします。
上部内視鏡検査とは?
上部内視鏡検査は上部消化管内視鏡検査とも呼ばれ、先端にカメラの付いた細い器具を口や鼻から体内へ入れて食道・胃・十二指腸を観察する検査です。
上部内視鏡検査の目的
上部内視鏡検査の目的は、食道・胃・十二指腸などの様子を観察・診断することです。炎症や腫瘍、潰瘍などがないかを調べます。
上部内視鏡検査でわかること
上部内視鏡検査ではカメラで直接胃・食道・十二指腸を観察することができるため、多くの病気を見つけることができます。
上部内視鏡検査で発見できる疾患は、以下の通りです。
咽頭腫瘍
食道がん、食道胃接合部がん、食道静脈瘤、食道異物・咽頭異物、逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア、食道乳頭腫、食道粘膜下腫瘍、好酸球性食道炎
早期胃がん、スキルス胃がん、進行胃がん、胃腺腫、ピロリ菌、胃潰瘍、出血性胃潰瘍、表層性胃炎、急性胃炎(AGML)、鳥肌胃炎、萎縮性胃炎、胃底腺ポリープ、胃過形成性ポリープ、胃静脈瘤、胃アニサキス症、胃粘膜下腫瘍、胃憩室、胃カルチノイド、胃NET・神経内分泌腫瘍、家族性(遺伝性)ポリポーシス
十二指腸がん、十二指腸潰瘍、十二指腸腺腫、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IgA血管炎)
これらの中でも代表的な疾患について詳しく説明します。
食道がん
食道がんは食道の中央付近から進行することの多いがんです。初期は自覚症状がほとんどなく、進行すると飲食時に食べ物がつかえるような違和感、体重減少、背中や胸の痛みなどの症状が現れます。
5年生存率は41.5%ですが、早期に発見できれば80.4%と決して低くない生存率です。飲食物を飲み込むときのチクチクした痛みや、熱いものがしみる感覚などがあったら早めに検査に行きましょう。
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流し、食道に炎症が起こります。成人の10~20%がかかっているとされており、特に高齢者に多い病気です。
胸焼け、食後にみぞおちや胸のあたりが痛いなどの症状が出ます。声のかすれや咳、のどの違和感などの症状が現れることもあります。
食べ過ぎ、早食い、食べてすぐ寝る習慣のある人、喫煙者、脂肪を多く摂取する人などに発症リスクが高いといわれています。生活習慣によるところが大きく、治療は薬剤の他に生活習慣の改善が必要です。
胃潰瘍
胃酸によって自分の粘膜が攻撃されるようになり発症します。胃酸の攻撃力と、粘膜を保護する働きのバランスが崩れた状態です。過労やストレスによって起こり、みぞおちや背中に痛みを感じます。胃潰瘍の患者さんの70~90%がピロリ菌に感染しているといわれています。
胃がん
胃がんは内側の粘膜から生じ、徐々に外側へと広がっていくがんです。進行すると、腹膜、リンパ節、肝臓への転移があります。
胃がんの中にはスキルス胃がんという、胃の壁を硬く厚くさせて広がっていくタイプもあります。スキルス胃がんは進行が早く、治りにくいがんといわれています。
胃がんは早期の自覚症状があまりなく、進行してからも気が付かないことがあります。胃の痛みや不快感、胸焼け、吐き気などが代表的な症状です。がんの出血により血便が出たり、貧血が起こったりすることもあります。これらの症状は胃潰瘍や胃炎でも出ることがあります。
食事がつかえたり、体重減少が見られたりする場合は進行胃がんの可能性があるので早めに内科や消化器内科を受診しましょう。
胃がんの罹患率は2019年の統計で第4位、死亡率は第3位と日本人に多いがんです。
十二指腸がん
十二指腸がんは小腸がんのひとつです。小腸は胃と大腸をつなぐ6~7メートルの器官ですが、胃に近い部分から十二指腸、空腸、回腸となっています。小腸がんの中で45%と一番発生率が高いのが十二指腸がんです。
早期は無症状であり、進行するとお腹が張った感じや腹痛、嘔吐、貧血や血便などの症状が出てきます。
十二指腸潰瘍
十二指腸の粘膜に潰瘍ができる病気で、胃に近い部分に発生することが多いです。腹痛が早朝や夜間などの空腹時に起こりやすく、何か食べると痛みが和らぎます。
ストレスや遺伝的要素が原因で、胃潰瘍と同様に粘膜の防御の力と胃酸の攻撃のバランスが崩れることで発症します。薬剤による治療が行われますが、出血がある場合は手術になることがあります。9割以上は開腹せず、内視鏡での治療が可能です。
十二指腸潰瘍の患者さんはピロリ菌への感染率が97%以上と高いことが特徴です。
上部内視鏡検査の種類
上部内視鏡検査には口から入れる経口内視鏡検査と、鼻から入れる経鼻内視鏡検査があります。
経口内視鏡は経鼻内視鏡より大きいため、口の奥を通過するときの嗚咽感や息苦しさが強いといわれています。検査中の会話はできません。しかし、経鼻内視鏡より検査の精度や機能は高く、病巣の切除も可能です。
経鼻内視鏡は小さく、嗚咽感や苦しさは少ないのが特徴です。検査中に会話をすることができます。人によっては鼻腔が狭いなどの理由で経鼻内視鏡検査ができない場合があるほか、検査で鼻血が出る可能性があります。
病院によってどちらの内視鏡に対応しているかは違いがありますので、受けたい内視鏡検査ができるか事前に確認しておきましょう。
上部内視鏡検査と胃カメラの違い
上部内視鏡検査は胃カメラとも呼ばれており、同義の言葉として使われています。
上部内視鏡検査の費用はどれくらい?
上部内視鏡検査は初診料や採血、病理検査などを含めると合計で6,000~18,500円ほどかかります(3割負担)。金額に幅があるのは、病理検査が必要な箇所の個数や部位によって追加料金が変わるためです。
上部内視鏡検査にかかる費用の目安は、3割負担の保険適応で以下の通りです。1割負担の方はこの3分の1になります。
3割負担 | |
初診料・採血・前処置 | 2,000~3,000円 |
経鼻内視鏡 | 5,000円 |
経口内視鏡 | 4,000円 |
病理検査 | 4,000~11,000円 |
ピロリ菌除菌 | 約5,000円 |
上部内視鏡検査はどんな時に受けるべき?
食道や胃などの消化器官に痛みや違和感のある人は検査を受けたほうがよいでしょう。また、胃がんや食道がんになった身内がいる方や、体重が急激に減った方なども検査が望ましいです。
具体的には以下のような方は検査をおすすめします。
- ・吐き気や吐血などの症状がある方
- ・みぞおち辺りが痛む方
- ・食欲不振や体重減少が気になる方
- ・ピロリ菌感染を指摘された方、ピロリ菌除菌された方
- ・50歳以下で大腸、小腸、肝胆道系、子宮内膜、卵巣、腎盂、尿管などのがんになった身内がいる方
- ・大腸にポリープがあった方
- ・塩分摂取の多い方
- ・喫煙習慣のある方
- ・飲酒習慣のある方
上部内視鏡検査を受ける年齢
前述のような症状がなくても、40歳になったら定期的に上部内視鏡検査を受けたほうがよいでしょう。似た検査にバリウム検査がありますが、上部内視鏡検査より精度が低く、もし何か異常が見つかった場合に再検査で上部内視鏡検査を受けることになります。そのため、初めから上部内視鏡検査を受けるのがおすすめです。
上部内視鏡検査を受ける頻度
40歳以上で特に症状がない方は2~3年に1回のペースでの検査が必要です。50歳以上になると2年に一度の検査が推奨されています。
胃がんの原因であるピロリ菌を保有している方や、菌を除去した後の方は1~2年に1回は検査を受けましょう。
心配だからといってあまり頻回に受ける必要はありません。頻繁に受けても結果は変わらず、検査の負担が増えるだけになってしまいます。適度な頻度で検査を受けることが大切です。
上部内視鏡検査の流れと所要時間
上部内視鏡検査は5~10分で終わります。検査で異常が見つかり切除が必要な場合は20分程度かかることもあります。
上部内視鏡検査の大まかな流れは以下の通りです。
- 1. 前日夜から絶食する
- 2. 問診後に消泡剤を飲む
- 3. 局所麻酔を行う
- 4. 上部内視鏡を挿入する
- 5. 食道や胃、十二指腸を診る
- 6. 検査終了
医療機関によって多少の違いがありますので、詳しくは検査を受ける場所に確認してください。
1. 前日夜から絶食する
上部内視鏡検査は胃の中を空にした状態で行います。内部がよく見えるようにすること、検査中に食物が逆流しないようにすることが胃を空にする理由です。前日の夕食は食べても大丈夫ですが、夜9時から絶食になります。
水分は摂れますが、コーヒーや牛乳、ジュースなど色の付いたものは避けましょう。水やお茶が推奨されています。タバコやアルコールも控えてください。
当日も朝食は摂らず、お茶や水を飲むようにします。服用している薬がある場合は事前に相談しておきましょう。
2. 問診後に消泡剤を飲む
問診では病気の既往歴や血液をサラサラにする薬を飲んでいるかなどを聞かれます。安全な検査・治療のためですので正確に回答してください。
場合によっては上部内視鏡検査前に血液検査があることもあります。
問診のあとに消泡剤という白い液体を飲みます。消泡剤は胃の中の粘液や付着物を取り除くものです。検査のために胃の表面を見やすくします。
3. 麻酔を行う
上部内視鏡検査では表面麻酔、あるいは静脈麻酔(鎮静剤)を使用することがあります。この処置によって内視鏡が口や鼻の奥を通過するときの不快感を軽減することが可能です。
上部内視鏡検査の多くの場合で表面麻酔は使用されており、スプレータイプやゼリータイプなどがあります。
鎮静剤は経口内視鏡検査のときに使われることがあります。鎮静作用や催眠作用のある麻酔を点滴で入れます。
4. 上部内視鏡を挿入する
体の左側を下にして横になり(左側臥位)、口または鼻から上部内視鏡を入れていきます。左側を下にすることで胃からの逆流が起こりにくくなります。
5. 食道・胃・十二指腸を診る
食道から順に内部を観察します。粘膜の色や形状、がんなどの腫瘍がないかチェックしながら進めていきます。ポリープ切除やピロリ菌検査を行います。検査中は唾液を飲み込もうとせず、口の中にたまったら外に出すと楽です。
6. 検査終了
検査後に医師から結果の説明を受けます。検査が終わったら帰宅できますが、1時間程度は飲食を控えましょう。鎮静剤を使用した方は1~2時間程度休んでからの帰宅となります。生検(組織の採取)をした場合は2時間程度飲食を控えてください。
上部内視鏡検査は痛い?鎮静剤を使ったほうが良い?
上部内視鏡検査は人によって程度は違いますが、痛みや苦しさを伴うことがあります。特に経口内視鏡の場合、喉の奥を通るときにオエッと吐くような感じ(嘔吐反射)になりやすいといわれ、この反射は若い方だと特に強く出ます。
検査のつらさを軽減するポイントとしては、できるだけリラックスして深呼吸しながら受けることです。これは経鼻内視鏡の場合も同じで、力を抜いて検査を受けることでスムーズに内視鏡を挿入できます。過度な緊張や力みはかえって内視鏡が挿入しにくくなり余計苦しくなってしまいかねません。
また、経口内視鏡検査を受ける場合は鎮静剤(静脈麻酔)を使うことも可能です。主に点滴で鎮静剤を入れることで、うとうとした状態になり不安感や苦痛が軽減されます。完全に意識がなくなるわけではなく、呼びかけに反応できる程度に調整して麻酔がかけられます。
鎮静剤は検査を楽にするメリットがありますが、副作用が起こるリスクもあります。事前に医師と相談し、デメリットを理解した上で使用しましょう。
上部内視鏡検査を受ける際の注意事項
上部内視鏡検査を受ける際に注意すべきポイントを、検査前・検査中・検査後に分けてご紹介します。
検査前の注意点
前日の飲食の期限や飲んではいけないものなど、医療機関からのアナウンスを守りましょう。これらの指示を守らずに飲食してしまうと検査を受けられない場合があります。
喫煙や飲酒も普段の習慣でしてしまわないように注意が必要です。
検査中の注意点
上部内視鏡検査の最中は体の力を抜き、できるだけ緊張しないことが重要です。首や肩をリラックスさせ、鼻から吸って口から吐く腹式呼吸を行います。視線は遠くを見るようにし、内視鏡が喉を通るときは少しあごを突き出します。
検査後の注意点
鎮静剤を使用する場合は安全性を考慮し、帰りは車以外の移動手段を勧められます。自分で運転するのは危険ですので、誰かに運転してもらうか、タクシーや公共機関を利用しましょう。
検査内容によって、検査後の絶飲食の期間が変わります。医師に指示を仰いでください。
まとめ
上部内視鏡検査は食道や胃の疾患を発見できる精度の高い検査です。経口内視鏡と経鼻内視鏡の特徴を理解し、目的に合わせて選びましょう。検査にかかる費用は麻酔の有無や検査の結果によって変わります。検査は前日から準備が始まり、当日検査後まで注意すべき点があります。よく確認した上で検査に臨んでください。自覚症状がある人はもちろんのこと、そうでない人も適切な頻度で検査を受けることが大切ですので、ぜひ予防・早期発見に努めてください。
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