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「時は金なり」の意味は「機会損失」? 語源の”Time is money”の真意とは

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時間に関することわざには、「光陰矢の如し」、「歳月人を待たず」などいろいろあります。なかでも、誰もが聞いたことがある有名なことわざといえば、「時は金なり」でしょう。いずれのことわざにも「時間を大切に使うこと」を私たちに戒めていますが、実は「時は金なり」ということわざの語源である”Time is money”には、日本語とは少しニュアンスの異なる意味があります。今回のコラムでは、「時は金なり」に焦点を当て、ことわざの由来、「時は金なり」の本来の意味などをご紹介します。

「時は金なり」の一般的な解釈

「時は金なり」ということわざには、「時間はお金と同じく貴重なものなので、浪費することなく、有意義に使うことが大切である」という戒めの意味があります。「時間=お金」であることを示して、目に見えない時間の大切さを端的に表現していることわざと言えるでしょう。

英語の”Time is money”と生みの親”ベンジャミン・フランクリン”

「時は金なり」は、日常的にもよく使われている言葉ですが、同様に”Time is money(タイムイズマネー)”という英語表現もご存じの方が多いと思います。実は、私たちがふだん使っている「時は金なり」という日本語の言葉は、この”Time is money”の考え方が日本に伝わってきたときに日本語に翻訳されたものです。

この言葉を残した人は、かの有名なベンジャミン・フランクリンです。アメリカ合衆国建国の父でもあるベンジャミン・フランクリンは、政治家、物理学者、作家など多方面での活躍で知られています。アメリカ史上でまれにみる栄誉を得たフランクリンは、100ドル紙幣の肖像画にも描かれているので、馴染みがある方も多いことでしょう。

彼は多くの著作を残していますが、1748年に発表した著書「Advice to a Young Tradesman(邦題では”若き商人への手紙”)」の中で、”Remember that time is money”というフレーズを記しています。直訳すると、「時間=お金そのものであることを覚えておきなさい」といった意味です。自伝のなかでも、彼の信念をまとめた13の項目のうちの「勤勉」の項目で、「時間を浪費しないように、時間は常に何か得るために使うべきであり、無用な行動はすべて絶つべきだ」と書いています。

フランクリンの著書には、人生において時間がいかに大切なものであるかを説いている名言がいくつもあります。「時間を損失することは利益を損失することである」と主張しているのです。貧しい家庭に生まれたフランクリンは、後に印刷業で成功を収めましたが、そんな商人としての実体験に基づいているのかもしれません。

18世紀当時、産業革命が起き、自由貿易が拡大していた時代であり、当時の若い商人、すなわち若い社会人へ向けた彼のメッセージは、現代に当てはめると、さしづめ若い社員や起業を目指す人に送るアドバイスに近いものといえるでしょう。

”Time is money”の本来の意味とは?

では、”Time is money”の意味をもう少し掘り下げて見ていきましょう。日本語の「時は金なり」の言葉も私たちにとって有難い教訓といえますが、フランクリンが”Time is money”というフレーズで意図していたのは少しニュアンスが違うようです。

彼が当時の若い社会人に向けたアドバイスは、ビジネスシーンにおける助言なので、”Time is Money”には「機会損失」という概念があります。「機会損失」とは、ビジネスや金融の分野では知られている言葉であり、わかりやすく言うと「稼ぎ損ない」または「儲け損ない」という意味です。つまり、稼げるはずだった機会を失い、働かなかった分の賃金を損失するという、お金そのものの損失を指しています。

例えば、一日を娯楽だけで過ごした人と、仕事に集中していた人がいたと仮定しましょう。娯楽で過ごした人は映画を見たり、食事をしたりして5000円程使ったとします。一方、仕事をしていた人は、1万円稼げたとします。普通の考え方であれば、娯楽に使った人は、5000円を損失したと考えるでしょう。ところが、ベンジャミン・フランクリンの考え方は少し違います。娯楽に使った人は、5000円だけ損したのではなく、収入になるはずだった1万円も逃してしまっているので、1万5000円の損失があると考えるのです。

利益を得る機会があったにもかかわらず、利益を得ることができなかった状態は、企業活動のわかりやすい例でいうと、商品の在庫切れの状態が機会損失の典型的な例といえるでしょう。商品に需要があったのに、在庫切れで販売できないと、その需要の分だけ売上を損失したことになるからです。

稼げるはずの機会を失うという「機会損失」は、世界的にあらゆるビジネスシーンで導入されている考え方です。本来の”Time is money”は、単なる時間が大切という教えだけではなく、経済的な考え方も含まれている言葉となっています。

18世紀という近代に移り変わる時代に、彼が伝えたかったメッセージは、ビジネスシーンにも適切に当てはまる言葉といえるでしょう。現代を生きる私たちは、時間は有限なものであり、いかに時間を有意義に使うかが大切であることを理解できている人は多いと思います。しかし、ベンジャミン・フランクリンが生きた18世紀という時代では、彼の発した言葉はまだ非常に新しい言葉でした。”Time is money”という言葉を起点として、資本主義社会が始まったといっても過言ではありません。

英語の”Time is money”には、日本語の「時は金なり」の意味とは異なり、「時間の使い方によって機会が損失する」というビジネスパーソンの心得となるような意味が含まれていることが分かりました。経営者にとっては、頭が痛い言葉になるかもしれません。何を捨てて何を選ぶかは人それぞれ違いますが、会社の利益につながる時間の使い方を主体的かつ戦略的に選んでみることを検討されてはいかがでしょうか。

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