予防医療の「三次予防」の目的と具体例。一次予防・二次予防が重要な理由とは
その他持続可能な健康長寿社会の実現をするために重要とされているのが「予防医療」です。予防医療は、少子高齢化などによって増大する公的な医療介護保険の減少につながるとして、国を挙げて推進されています。
今回は予防医療の最終段階である「三次予防」の概要と具体例のほか、三次予防に至らないようにするための一次予防・二次予防の重要性について解説します。
三次予防とは
予防医療は一次予防、二次予防、三次予防の3段階に分けられており、それぞれ行うべき事項や目的が異なります。最初の段階である一次予防は「病気に罹らないこと」、二次予防は「病気を悪化(重篤化)させないこと」が主な目的です。三次予防は予防医療の最後の段階で「すでに発病している病気による合併症などを予防する」という意味となります。厚生労働省の定義も確認しましょう。
■三次予防の意味
既に疾病が発症し、完成した後にリハビリテーションや再発防止を行うこと。患者が社会復帰できる機能を回復、維持することをいう。
※出典:厚生労働省 こころの耳「用語解説:三次予防」
つまり、一次予防・二次予防では防ぎきれずに罹患してしまった者の治療が対象と考えられます。また、治療の目的には社会復帰のほかにも生活の質であるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の維持向上も含まれます。
三次予防の具体例
三次予防の具体的なアプローチ方法は、罹患している疾病によって異なります。例えば、糖尿病の場合は血糖値の適切な管理のほか、フットケア、眼底の検査なども徹底して悪化を防ぐ必要があるでしょう。また、糖尿病の合併症として注意すべき「心血管疾患」を予防するために行う適切な運動も三次予防に該当します。
脳卒中の三次予防としては、再梗塞予防のための薬物治療(抗血小板剤、抗凝固剤などの内服)や定期健診(血圧管理や血液検査など)が挙げられます。また、体が不自由になってしまった場合、理学療法士による運動機能の維持を目的としたリハビリテーションや作業療法士による日常動作(食事動作や着替えなど)の再獲得を目的としたリハビリテーション、栄養士による栄養指導のほか、寝たきりの状態で発生する「褥瘡(床ずれ)」の防止も三次予防に数えられます。
三次予防ではこのように生活習慣の指導、リハビリ、治療まで幅広い方法で疾病を発症した人への支援が行われます。患者自身も自身が患っている病気の状態を正しく理解し、医療関係者などと連携しながら病気の回復や生活の質の維持向上を図り続ける必要があるでしょう。
三次予防を未然に防ぐための「一次予防」と「二次予防」が重要
三次予防の目的である社会復帰支援や生活の質の維持向上、再発防止は非常に重要な事項です。ただ、より健康的に長生きするためには三次予防の前段階である「一次予防」と「二次予防」にもしっかりと取り組む必要があるでしょう。特に生活習慣病のように自覚症状が少なく、進行しやすい病気は注意しなければなりません。
■一次予防と二次予防
予防方法 | 概要 | |
一次予防 | 健康増進
疾病予防 特殊予防 |
生活習慣・環境の改善
健康教育 予防接種 事故防止 |
二次予防 | 早期発見
早期治療 適切な医療と合併症対策 |
人間ドック
健康診断 早期治療による重症化の予防 |
基本的に個人の医療費の負担額も一次予防、二次予防、三次予防の順で大きくなり、必要な時間や体への負荷も大きくなります。いずれも「現在、疾病が明らかになっていない人」であっても取り組みやすいのも、大きな特徴といえるでしょう。
がんの一次予防~三次予防
生活習慣病と同じく、進行しやすい病気の代表例が「がん」です。がんにならないための生活習慣のポイント(一次予防)、早期発見・早期治療(二次予防)、そして三次予防の例を確認しましょう。
■がんの一次予防(例)
・喫煙しない、副流煙を避ける
・節度のある飲酒を心がける
・適度な調味料、栄養バランスの食事をとる
・運動習慣を身に着けて「太りすぎず、やせすぎない」体形を維持する
■がんの二次予防
一般的な健康診断では、がんの早期発見は難しいため「がん検診」の受診がおすすめです。がん検診の種類はさまざまですが、厚生労働省は以下の5つのがんについて科学的に効果が証明されているがん検診として推奨しています。
・胃がん
・肺がん
・乳がん
・大腸がん
・子宮頸がん、子宮体がん
■がんの三次予防
がんを発症した場合、特に治療後の再発防止に努める必要があります。医師の指示に沿って抗がん剤の内服や定期的な検査を行いましょう。リハビリなどによって生活の質を維持向上することも大切です
予防医療をしっかりと理解してできることから取り組みましょう
三次予防の概要と一次予防・二次予防の重要性について解説しました。予防医療はその都度、適切に取り組むことが必要です。現在、体に不調がない人はまず一次予防・二次予防から積極的に挑戦してみてはいかがでしょうか。コツコツと行動することが将来の健康寿命を延ばすことにつながります。