中小企業の社長はストレスが多い理由とは?ストレスが生むリスクや軽減方法も解説
中小企業の経営には、売上向上や人材確保など、さまざまな課題があります。経営課題への対応に忙しく、毎日の業務にストレスを感じる中小企業の社長も多いのではないでしょうか。
ストレスは、ただ心の負担としてのしかかるだけではなく、限度を超えると心身の健康に悪影響を与えるおそれがあります。ストレスを自覚している、もしくは周囲から指摘されている方は、ストレスへの対処を始めましょう。
この記事では、中小企業の社長にストレスが多い理由から、ストレスが生むリスクと効果的な軽減方法までを徹底解説します。
中小企業の社長にストレスが多い5つの理由
経営規模が大きく経営層の人数も多い大企業と比べて、中小企業では経営の意思決定を社長1人がおこなう場面が多い傾向にあります。
企業経営者の中でも、中小企業の社長は仕事によるストレスが多いといわれています。特に中小企業の経営に大きなダメージを与えたコロナ禍の期間には、中小企業経営者のストレスが高くなっていたという研究もありました。
参考:日本政策金融公庫「コロナ禍における中小企業経営者の健康問題と事業継続リスク」
以下では、なぜ中小企業の社長にストレスが多いかを、5つの理由を挙げて解説します。
会社の経営基盤が不安定で先行き不透明感に悩まされる
中小企業は資本金や出資の額が比較的少なく、会社の経営基盤が不安定になりやすいといえます。経営基盤の不安定さは経営の見通しにも影響し、先行き不透明感に悩まされることがストレスの原因です。
たとえば製造業の企業では、製造設備の定期的なメンテナンスや更新が必要です。しかし中小企業は資金の余力が少なく、設備の保守点検に十分な金額をいつでも投入できるとは限りません。設備の不具合が発生すると、事業継続が困難になるおそれもあるでしょう。
また、人材確保の難しさも中小企業の社長にとってストレスとなります。少子高齢化による現役世代の減少に加え、優秀な人材は大企業勤務を目指す傾向にあり、多くの中小企業が慢性的な人手不足に悩まされています。
従業員の生活を背負っている重圧がある
中小企業の社長の中には従業員との距離が近く、家族のような親しみを感じている方が多いでしょう。しかし、関係性が近いことにより「企業経営に従業員の生活がかかっている」という重圧を感じるケースもあります。
自社が経営不振に陥ったり、倒産に追い込まれたりすると、従業員は収入源を失って生活が成り立たなくなります。中小企業特有の経営の難しさに悩まされながら、従業員の生活を背負っている重圧があることで、中小企業の社長には大きなストレスがかかっています。
社長自らが実務を行う必要があるため業務量が多い
経営者は一般的に企業の意思決定を担っているものの、経営規模が小さい中小企業では社長自らが事業関連の実務をおこなうことが珍しくありません。経営のかじ取りをしつつ実務にも従事すると業務量が多くなり、働きすぎの状態となります。
働きすぎると身体的な疲労がたまることはもちろん、心の余裕も持てなくなります。結果として仕事のストレスが重くのしかかり、心身ともに疲弊しやすくなるのです。
また、社長自らが実務をしなければならない環境では、事業拡大の計画や後継者育成にかける時間を作り出せません。企業の成長や将来を考える余裕がなかなか持てないことも、中小企業の社長に多いストレス要因と言えます。
相談できる相手を見つけられず孤独を感じやすい
中小企業の社長は1人で経営を切り回すケースが多く、経営について誰かと話し合う機会がなかなかありません。経営の課題や不安を抱えているときも相談相手を見つけようとせず、自分1人で解決を目指す方が多いのではないでしょうか。
問題の内容が自分で解決できる場合はよいものの、会社の浮沈にかかわるような問題は社長1人だけで悩んでも解決できないことがあります。誰にも相談できないまま悩み続けてしまい、経営者の孤独を感じるようになると、大きなストレスを抱えるようになるでしょう。
また、社長としてのリーダーシップを重視するあまり、従業員に対して弱気な一面を見せられないと考える方も少なくありません。従業員との間に心的な距離を作っていることも、経営者の孤独につながる一因です。
自分の健康状態を顧みる余裕が持てない
定期健康診断や人間ドックの受診などを通じて、自身の健康状態に関心を持つ中小企業の社長は多いでしょう。しかし、中小企業の社長は経営に多くの時間が取られてしまい、自分の健康状態を顧みる余裕が持てないことがあります。
たとえば定期健康診断で要精密検査といわれても受診する時間が作れず、身体の不調を気にかけたまま働き続けたという経験はないでしょうか。社長にとって企業経営の維持・成長が重要とはいえ、自分の健康に不安を抱えたままでいるとストレスを感じやすくなるため注意してください。
また、社長ががんや心疾患のような重篤な病気に罹患すると、企業経営に多大な影響が生じます。「自分が病気になったら会社はどうなるのか」と考えながら働き続けることも、中小企業の社長に多いストレスの原因です。
中小企業の社長がストレスを抱えるとどのようなリスクがある?
中小企業の社長がストレスを抱えると、経営判断でミスを起こしたり、従業員・取引先との関係悪化につながったりするリスクがあります。また、ストレスを抱え続けることで自身の健康に悪影響を及ぼすことも問題です。
以下では、ストレスによって中小企業の経営や社長自身にどのようなリスクがあるかを解説します。
正しい判断ができなくなり、経営状況の悪化につながる
強いストレスは脳を疲弊させて、判断力や記憶力に悪影響を及ぼします。中小企業の社長が経営の意思決定をする際に正しい判断ができなくなると、経営状況の悪化につながるリスクがあります。
たとえば売上向上のチャンスが巡ってきても、ストレスを抱えている状態では積極的な決断ができない可能性があります。反対に、細かく考えることが面倒になって、費用対効果のバランスを十分に考えずに大きな投資を決めてしまうケースもあるでしょう。
中小企業の経営において、社長に適正な判断力が備わっているかどうかは経営状況を左右する要素です。売上向上や事業拡大を目指すには、社長のストレス対策が重要となります。
従業員にパワハラをするおそれがある
キャパシティを越えたストレスは心理状態の悪化を起こし、人間関係の問題につながります。特に社長が孤独を感じていたり、実務に携わっていたりする場合は、ストレスによって従業員にパワハラをするおそれがある点に注意してください。
パワハラは直接の暴力行為だけではなく、精神的な攻撃や過大・過小な要求、プライバシーの侵害なども含みます。ストレスを抱えていると相手を思いやる余裕を持てなくなることが、パワハラにつながる原因です。
取引先や金融機関との関係に悪影響が生じる
ストレスによる人間関係の悪化は、取引先との関係にも影響します。ストレスを抱えた状態で取引先の人間に応対すると、気付かぬうちに相手に失礼な態度を取ってしまい、取引先からの信頼を失いやすいためです。
中小企業の社長は取引先の経営層と話し合う機会が多く、ストレスを抱えた状態での応対は致命的な失敗につながるおそれがあります。
また、ストレスで判断力や心理状態が悪化すると、金融機関からの評価が低下することにも注意が必要です。金融機関は企業への融資を実行するにあたって経営者の人柄や信頼性を重視しており、評価が低下すると資金調達が難しくなる可能性があります。
身体的・精神的な健康を損なうと事業継続が困難になる
ストレスを抱えた状態で働き続けると高血圧症や脳疾患などの病気を発症したり、精神状態が不安定になったりします。身体的・精神的な健康を損なうことで、経営者として働き続けられなくなることがストレスによるリスクです。
特に中小企業では後継者の選定・育成が進んでいない会社が多く、社長が病気になると事業継続そのものが困難になります。社長1人で経営の決定を行っていたり、重要な実務のやり方を社長以外の人間が知らなかったりする職場では、社長の離脱が大きなダメージにつながることに注意しましょう。
中小企業の社長のストレス軽減方法5選
企業経営や社長自身の健康にストレスによるリスクを及ぼさないためには、ストレスの軽減に努めることが大切です。
まずは自分が感じているストレスの原因を把握した上で、適切なストレス軽減の方法を実践するとよいでしょう。
最後に、中小企業の社長におすすめのストレス軽減方法を5つ紹介します。
自社が抱える課題を見える化する
経営に関する悩みや不安がストレスになっている方は、自社が抱える課題の見える化をしましょう。課題の内容が分かると解決の方向性も見えてきて、心理的な負担が減ります。
課題の見える化をするにあたっては課題のリスト化が必要です。リスト化では経営上の課題をホワイトボードなどに書き出し、解決の優先度を決定します。解決の優先度は経営への影響や解決することによる効果、解決に必要なコストをもとに定めることがおすすめです。
解決すべき課題が決まったら、課題の解決方法も考えましょう。ロジックツリーやPEST分析、TOWS分析などの課題解決に向いたフレームワークを活用すると、自社に適した解決策を立案できます。
社長自身がおこなう業務を減らす
社長自身が忙しく働いていてストレスが発生している場合は、社長の業務量を減らす方法を実施しましょう。
中小企業の社長がおこなう実務の中には、社長以外の人員でも担当できる業務が存在するケースがあります。従業員ができる仕事は従業員に任せることで、社長に時間の余裕が生まれてストレスから解放されやすくなるでしょう。
また、経営に近い実務を従業員に任せることは後継者の育成につながる点もメリットです。
複数の従業員が会社を支える業務を担当できれば、社長が病気などで経営から離脱しなければならない場合にも事業継続を図れます。万が一の事態への備えができるため、会社の将来について思い悩むストレスも軽減できる方法です。
仕事から頭が離れられる時間を作る
中小企業の社長が会社経営を第一に考えるのは当然であるものの、仕事のことばかりを考えていると脳が疲弊してストレスを感じやすくなります。ときには仕事から頭が離れられる時間を作り、心のリフレッシュを図りましょう。
たとえばゴルフやスキーなどのレジャーを楽しんだり、ジョギングやスイミングで身体を動かしたりする方法があります。他にも読書のように、自分1人だけの時間を楽しむのもよいでしょう。
また、マインドフルネス瞑想も効果的なストレス解消方法です。マインドフルネス瞑想は「今という瞬間」に集中するための瞑想で、実践すると将来への不安や焦りから解放されることが期待できます。さまざまなデータに取り巻かれ、心と脳に疲れを感じている方はぜひ実践してみてください。
身近に相談できる相手を作る
経営者の孤独を感じている方は、会社経営の悩みや不安について相談できる相手を身近に作るとよいでしょう。相談相手を作ると自分の悩みを相手に受け入れてもらったり、解決方法の糸口を見つけられたりします。
相談相手は、自分が相談したい内容に応じて決めます。経営に関する悩みは「経営者仲間」や「経営コンサルタント・中小企業診断士といった経営の専門家」が適した相談相手です。
大きなストレスで心に負担を感じている場合は「メンタルヘルスの専門家」に相談しましょう。
自身のストレスチェックをおこなう
ストレスを抱えていると自覚している場合は、ストレスチェックをおこなうことがおすすめです。
ストレスチェックは直接的なストレス軽減方法ではないものの、実施することで自分がどの程度ストレスを抱えているかを把握できます。大きなストレスを抱えていると分かればストレス解消の重要性に気付きやすくなり、ストレス解消に向けて意欲的な行動を起こせるでしょう。
さらに、ストレスチェックを行うとメンタルヘルスの不調を予防しやすくなります。心の健康に対する漠然とした不安の解消にもつながり、ストレスの発生を防ぐことが期待できます。
まとめ
中小企業の社長は経営への不安や責任による重圧など、さまざまなストレスを抱えやすい特徴があります。社長のストレスは経営へのリスクにつながるため、ストレスを溜め込まないように紹介した軽減方法を実践してみましょう。
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