がんや生活習慣対策に欠かせない予防医療の「二次予防」。その具体例とは
未病健康寿命の延伸や医療費増大の抑制などにつながる「予防医療(予防医学)」のうち、発症してしまった病気の早期発見・早期治療が目的の段階を「二次予防」といいます。二次予防に積極的に取り組むことで、将来、健康的な日常生活に支障をきたす恐れがある病気の影響を小さくできます。二次予防は今、健康だと思っている人にとっても取り組むべき理由が十分にあるため、ぜひ記事の内容をチェックしてください。
二次予防とは
予防医療は以下のように三段階に分けられ、目的もそれぞれ異なります。
■予防医療の三段階
・一次予防:健康増進、疾病予防、特殊予防などで病気の発症を防ぐ
・二次予防:発症した病気を早期に発見して早期の治療につなげる
・三次予防:治療中の病気の再発防止、進行抑制、早期社会復帰を目指す
二次予防は、一次予防で防げなかった病気をなるべく健康的なリスクが小さいうちに治療することが大きな目的と考えられます。
例えば、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の多くの初期症状は軽度なため、自覚症状が生まれる頃になると深刻化してしまうケースは珍しくありません。また、がんも同様で発見が遅れると転移してしまうなど命の危険が高まります。このように早期発見・早期治療を行うことで「救命の効果」と治療中も「安心して従来の生活を続けられる」という大きなメリットを得ることができるのです。
二次予防の方法
二次予防は病気を早期発見し、早期に適切な医療と合併症対策などを行うことが求められます。そのため生活習慣の改善などが中心の一次予防と比べると、医療機関との連携が重要になります。なかでも「早期発見」については、自覚症状がない状況の病気をなるべく早く見つけるための方法を把握しておく必要があるでしょう。
健康診断
ほとんどの会社員が1年に1回は受けている「健康診断」は、日頃の一次予防の効果をチェックするには有効な二次予防だといえるでしょう。多くの人が受けているのは「一般健康診断(定期健診)」であり、労働安全衛生法に基づいて年に1回の受診が義務付けられています。検査項目は以下となります。
■検診項目
・身長
・体重
・胸部X線
・尿検査
・血圧測定
・心電図検査
・血糖検査
後述する「検診」と比べると、検査項目は10~15と少なく内容も基本的な検査が多いです。また、40~74歳を対象にした「特定検診」も設けられており、主にメタボリックシンドロームに着目した健診を受診することができます。さらに特定検診の結果、「生活習慣病の発生リスクが高い」と診断され、生活習慣の改善によって予防効果が期待できる人に対しては保健師や管理栄養士などによるサポートを受けられます。
※出典:特定健診・特定保健指導について
人間ドック
健康診断と同じく、二次予防の代表的な方法が「人間ドック」です。人間ドックは個人の判断で受診する必要があり、さらに基本的に医療保険の適用外のため、受診者数は健康診断と比べると多くはありません。ただし、人間ドックは「胃内視鏡検査」や「腹部超音波検査」といった50以上の検査が設けられることが一般的で、健康診断よりも精度の高い検査を網羅的に受診できるのが大きな特徴です。健康診断では発見できなかった病気を見つけられる可能性もあるので、二次予防を徹底するうえでは受診する価値は非常に高いといえるでしょう。
専門ドック
通常の健康診断では行わない検査を「単独」で提供する人間ドックのことを「専門ドック」といいます。脳や心臓などの特定の臓器を集中して調べることができるので、検査の対象となる臓器に関連する病気の早期発見・早期治療につなげやすくなります。
■専門ドックの種類
・脳ドック:脳血管疾患、脳腫瘍などのリスクを検査
・PET検診:全身
・がん検診:胃がん、大腸がんなどの部位別にがんリスクを検査
・心臓ドック:不整脈、心筋梗塞などの心疾患のリスクを検査
特定の部位の検査項目を増やす方法としては、人間ドックの「オプション検査」を利用することも有効です。人間ドック学会が推奨するオプション項目としては、PSA検査、HCV抗体検査、上部消化管内視鏡、乳房診察+マンモグラフィ、乳房診察+乳腺超音波、婦人科診察+子宮頚部細胞診が挙げられています。
※出典:公益社団法人 日本人間ドック学会「人間ドックの検査項目」
自身の環境に合わせた二次予防を行いましょう
自身の年齢、生活習慣、病歴、遺伝などによって「どこまで二次予防を徹底すべきか」は異なります。また、人間ドックは医療機関ごとに検査項目の差異があるうえ、検査機器にも違いがあることも覚えておきましょう。オプション検査の有無も医療機関で異なるため、事前にしっかりとリサーチして臨むことをおすすめします。