PSA検査とは?費用・信頼性など分かりやすく解説
PSA検査は前立腺がんを発見するのに役立つ検査です。日本の男性の9人に1人がかかるといわれる前立腺がん。PSA検査がどのような検査なのか、費用はどれくらいかかるのかなど分かりやすく解説します。前立腺がんの特徴やPSA検査の注意事項なども合わせてお伝えしますので、検査を受ける際の参考にしてください。
PSA検査とは
PSA検査とは血液中のPSA値を測定する検査です。PSA検査によって前立腺がんを発見することができます。PSA検査によってがんを早期発見できれば、高い生存率が見込めます。
PSAとは
PSAは「prostate-specific antigen(前立腺特異抗原)」の略語で、男性特有の生殖器官である前立腺で作られるタンパク質です。その多くは精液中に分泌され、通常であれば血液中ににじみ出ることは少ないですが、炎症やがんなどの疾患があると血管に流れ出てしまう量が増えると考えられています。
PSA検査の方法
PSA検査は血液中のPSA値を測定することで、前立腺の異常を発見することができる検査です。PSA検査は自治体の検診や医療機関、人間ドックのオプションとして受けることができます。PSA検査は血液検査(採血)で行うことができますので、まずはかかりつけ医に相談してみても良いでしょう。
採血をしてから検査の結果が出るまでの期間は医療機関によって違います。1時間程度で分かる病院もありますが、1~2週間程度かかることもあります。
前立腺とは
前立腺は3~4㎝、クルミくらいの大きさで恥骨と直腸の間にあり、膀胱の出口の部分で尿道を取り囲むように位置する器官です。体の深い部分にあるため、直接触ることはできません。触診するときは肛門から指を入れて確認します。
前立腺では前立腺液が作られます。前立腺液は精液の主要成分です。精子の活動性を高めたり、保護したりする働きがあります。
この前立腺が炎症を起こしたりがんになったりすると肥大し、尿道を圧迫することで排尿しにくくなったり尿の回数が増えたりします。
前立腺がんは前立腺肥大症と併発することもあります。
前立腺がんの特徴
前立腺がんは欧米で多い病気でしたが、日本でも食生活の欧米化や寿命が延びたことにともなって前立腺がんが増えています。前立腺がんは現在男性がかかるがんの中で最も高い罹患率です。一方で死亡率はそこまで高くはないのが特徴です。男性のがん死亡率1位である肺がんが人口あたりの死亡率61.3人であるのに対し、前立腺がんの人口あたりの死亡率は21.3人となっています(人口10万あたり)。
前立腺がんは初期では自覚症状がありません。ゆっくり進行することが多いですが、中には急速に悪化するケースもあります。進行するにつれて尿の出にくさや頻尿、さらに血尿などの症状が現れます。
前立腺がんがさらに進行すると、臀部や腰に転移して痛みが出たり、足が痺れたりします。
罹患者数の多い前立腺がんですが悪性でないことも多く、症状が非常にゆっくり進行することも珍しくありません。前立腺がんであっても寿命を全うできる患者さんもいます。
前立腺がんの5年生存率は99.1%と良好で、治りやすいがんであるといわれています。
前立腺がんの治療
前立腺がんの治療方法には4つの方法があります。がんの状態や患者さんの年齢などを鑑みて最適な治療を選びます。どの治療法にも向き不向きやメリット・デメリットがあります。主治医とよく相談した上で決定しましょう。
- ・内分泌療法
- ・放射線療法
- ・手術療法
- ・化学療法
内分泌療法
内分泌療法は男性ホルモンの働きを抑えることで、前立腺がんへの影響を小さくしようとする方法です。男性ホルモンを分泌する精巣を取り除いてしまう精巣摘除術、男性ホルモンの作用を抑える抗アンドロゲン剤、男性ホルモンの分泌を低下させるLH-RH(黄体化ホルモン放出ホルモン)アナログなどの方法があります。
放射線療法
放射線療法は、体の外から前立腺に放射線を照射する外照射療法と、体内に小さな放射線源を埋め込む密封小線源永久挿入治療の2種類です。内分泌療法と組み合わせたり、2種類の放射線療法を並行しておこなうこともあります。
手術療法
手術によって前立腺と精嚢を摘出します。お腹を切って行う開腹手術と、お腹にいくつか小さな穴を開けてそこから手術器具を入れて行う腹腔鏡手術があります。開腹手術で3時間程度かかります。術後は3週間の入院が必要です。
比較的初期の前立腺がんの患者さんであれば、根治できる確率が一番高い方法です。
化学療法
抗がん剤でがん細胞を死滅・縮小させます。前立腺がんが進行し、他の治療方法では効果がない場合に用いられます。
PSA検査以外の前立腺がん診断方法
PSA検査以外の診断方法としては以下の4つがあります。
- ・直腸内触診
- ・超音波検査
- ・正体検査
- ・画像検査(MRI検査・CT検査・骨シンチグラフィ検査)
直腸内触診
肛門から指を入れて触り、前立腺の状態を確認します。表面の凹凸があるか、触ると痛みがあるかなどから診断します。
超音波(エコー)検査
経直腸エコー検査では超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入し、前立腺の大きさや形を調べます。がんがある場合には黒い影となって画像に映し出され、形が非対称である場合などもがんが疑われるため注意が必要です。
正体検査(病理組織診断)
自覚症状やPSA値、直腸内触診、経直腸エコーなどから前立腺がんの疑いがある場合に生検が行われます。直腸内触診での異常や、PSA値が高めである場合も生検が必要になることがあります。前立腺生検では前立腺の状態を超音波で観察しながら、局所麻酔をして、生検用の細い針で前立腺の組織を採取していきます。はじめの検査では10~14カ所の組織を採取することが多いです。
前立腺生検によって起こる可能性がある合併症として、出血、感染、排尿困難、血尿、血便、精液に血が混じる血精液症などの症状があります。
画像検査(MRI検査・CT検査・骨シンチグラフィ検査)
画像診断では必要に応じてMRI検査、CT検査、骨シンチグラフィ検査などを行います。
CT検査では、がんの広がりや、リンパ節や肺への転移の有無や状態を確認します。MRI検査は前立腺の中が詳細に分かるため、がんが前立腺内のどの箇所にあるのか場所を特定することが可能です。
CT検査、MRI検査は造影剤を使用するため、アレルギー反応が起こることがあります。薬剤でアレルギー反応を起こしたことのある方は事前に申し出ましょう。
骨シンチグラフィ検査とは、骨転移があるかどうかを調べる検査です。検査前に骨シンチグラフィの薬を注射し、全身に行き渡らせてから30分程度撮影する流れです。
PSA検査を受けたほうが良い人
ご家族に前立腺がんの方がいる場合は、40歳になったらPSA検査をすることが望ましいです。第一近親者(親・兄弟・子)が前立腺がんに罹患していると、発症リスクが高くなるという報告があり、父親の場合で2.2~2.5倍、兄弟1人の場合で3.1~3.4倍になると言われています。また、前立腺がんは加齢に伴って発症率が増加するため、50歳以上になったらそれ以外の男性もPSA検査が推奨されます。
PSA検査を受ける頻度は、PSA値によって変わります。PSA値が1ng/mL以下の場合は3年ごと、1.1ng/mL以上の場合は年に1回検査を受けましょう。
また、尿が出にくい、頻尿になったなどの自覚症状がある場合も医療機関を受診してください。
PSA検査にかかる費用
PSA検査の費用は保険適用になるかどうかで金額が変わります。
自費の場合
特に自覚症状などがなく、検診の一環として受ける場合は自費診療となります。人間ドックなどのオプションの場合、費用はおおむね2,000~3,000円です。自治体の前立腺がん検診では無料の地区もありますが、500~2,000円程度の自己負担を設定しているところもあります。
保険適用になる場合
前立腺がんを疑う自覚症状がある場合には、人間ドックや検診ではなく医療機関を受診しましょう。PSA検査が必要と認められると健康保険が適用されます。3割負担の場合、検査費用1,000円前後+初診料がかかります。
補助金が出る自治体もある
自治体によってはPSA検査の費用を負担してくれます。助成条件は自治体によって異なり、年齢や自覚症状がないことなどが当てはまれば検査を少額で受けることができます。年に一度受けられる自治体もあれば、生涯で一度に限定している自治体もありますので、事前に確認しておきましょう。
PSA検査を受ける際の注意事項
PSA検査を受ける際に注意することは、以下の通りです。
- ・PSA採血の前、最低2日間射精しない
- ・前立腺の治療薬、脱毛治療薬、ホルモン製剤を使用している場合は前もって報告しておく
- ・直腸内触診の前に採血を受ける
- ・PSAの再検査を受ける場合は、同じ医療機関で同じ検査キットを使う
PSA値は飲酒や長時間の自転車やバイク、長時間座っているなどの要因でも上がることがあります。
PSA検査の意義
また、特に症状のない人がPSA検査を受けることについては様々な意見があります。PSA検査は偽陽性が出やすく、過剰検査につながるという指摘もあります。グレーゾーンと呼ばれるPSA値が出ても、実際に前立腺がんである確率は20~30%程度であると言われています。さらに、がんであっても進行が非常に緩やかで、寿命に影響しないケースも少なくありません。
PSA検査は前立腺がんによる死亡を減少させる効果があるというエビデンスはなく、前立腺がん検診は国が定める対策型がん検診に含まれていません。
がんの確定診断のために行う生検は合併症のリスクがあるため、必要のない検査を増やしているという声もあることを理解しておきましょう。検査については主治医とよく相談してください。
PSA検査の基準値
PSAの基準値は年齢によって違います。下の表を参照してください。
年齢 | PSA基準値 |
50~64歳 | 3ng/mL以下 |
65~69歳 | 3.5ng/mL以下 |
70歳以上 | 4ng/mL以下 |
基本的にPSA値は4以上で前立腺がん疑いになることが多いようです。この数値は目安であり、これより高くても問題ないこともあれば、低くても病気が潜んでいることもあります。
PSA値が高いと言われたら前立腺がん確定?
PSA値が高いからといって、必ずしも前立腺がんであるとは限りません、PSA値が上がる要因は他にも考えられるからです。PSA値が高くなった際に考えられる理由として、以下のことが挙げられます。
- ・前立腺がん
- ・前立腺肥大
- ・前立腺炎
前立腺肥大と前立腺炎とはどのような疾患か、詳しく見てみましょう。
前立腺肥大
前立腺肥大は男性ホルモンの働きが関与していると考えられている疾患です。肥満や高血圧などと関係があるのではないかと指摘されていますが、はっきりとした原因は分かっていません。
年齢を重ねるにつれてその頻度が増加していきます。50歳では30%ほどですが、80歳では90%の人にみられる病気です。すべての人に治療が必要なわけではなく、4分の1程度であると言われています。
症状としては排尿困難などの排尿症状、残尿感などの排尿後症状、頻尿や尿意切迫感といった蓄尿症状があります。
進行すると血尿や腎不全などの合併症を引き起こすことがあり、場合によっては手術が必要です。
前立腺炎
前立腺のまわりの組織が炎症を起こす病気です。急性と慢性、細菌感染と感染以外のものに分けられます。
細菌性前立腺炎の場合は、大腸菌や性感染症のクラジミアなどの細菌によって引き起こされます。急性だと前立腺が腫れ、38℃以上の高熱、排尿時の痛み、頻尿などが現れます。
慢性細菌性前立腺炎や慢性非細菌性前立腺炎では排尿症状のほか、会陰部や下腹部などの疼くような痛み、尿道や鼠径部などの違和感、血精液症といった症状が出ます。非細菌性前立腺炎は自己免疫疾患でみられることがあります。
細菌性の場合は抗生物質の投与での治療になります。慢性非細菌性前立腺炎は原因がはっきり分からないことも多く、抗生物質や鎮痛剤などでの治療になりますが完治が難しい病気です。
PSA値が高かったらその後どうする?
PSA値は体調などによって変化しますので、偶然高かっただけなのかを調べるために医療機関で再検査を受けます。その後、PSA検査以外の検査方法を行い、最終的に医師が診断をします。
まとめ
PSA検査によって初期症状のほとんどない前立腺がんの発見ができます。前立腺がんは50歳を超えると急激に増えるがんです。早期発見し治療に努めましょう。PSA検査は自治体によって補助金が出ていることがありますので、お住まいの地域で使える制度がないか確認してください。PSA値が高くなる原因は前立腺がんだけではないため、複数回の検査や他の検査方法と併せた診断が必要になります。PSA検査の問題点も踏まえた上で医師と相談して必要な検査を受け、結果に応じて治療を行いましょう。