PET検査とは?費用や検査でわかる癌の種類など解説
PET検査とは、全身のがんの有無や心臓・脳疾患の状態、治療状況などを調べる精密検査です。PET検査を受けてみたいと考えても、「費用はどれくらいかかるのだろう?」「そもそもどんな検査なのだろう?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
本記事ではPET検査の概要から費用相場、メリット・デメリット、検査時間と流れ、検査を受ける際の注意点について解説いたします。保険適用になる条件や保険適用にならない条件についても解説していますので、PET検査の費用面が気になっている方はぜひ参考にしてください。
PET検査とは
PET(Positron Emission Tomography)とは、陽電子放出断層撮影のことであり、細胞の活動状況を画像で診断する検査です。まずは、次のPET検査の概要を解説します。
- 1.全身のがんや心臓、脳疾患などの状態を調べられる
- 2.機器によって画像や検査時間、被ばく量は異なる
- 3.PET検査でわかる癌は10種類以上ある
- 4.PET検査とPET-CT検査の違い
検査費用の解説の前に、PET検査の基本的な情報を押さえておきましょう。
全身のがんや心臓、脳疾患などの状態を調べられる
PET検査は、全身の細胞の活動状況を見ることができます。それにより、全身のがんの状態や転移・再発状況に加えて、治療状況が調べられます。アルツハイマー病や心筋梗塞、てんかんなどの心臓・脳疾患の検査も可能です。
PET検査は、がん細胞が正常細胞よりも3倍〜8倍のブドウ糖を取り込む性質を利用して検査します。具体的な流れは次の通りです。
- ・18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)というブドウ糖を用いた放射性薬剤を静脈に注射する
- ・がん細胞に取り込まれた18F-FDGの分布を画像撮影する
- ・撮影された画像からがんの有無や位置、広がりを診断する
細胞の活動状況を見るため高い精度で診断が可能です。
機器によって画像や検査時間、被ばく量は異なる
PET検査は機器によって検査時間、被ばく量が異なります。機器により検出感度(病気を検出する力)などの性能が異なるのに加えて、頭部専用や乳房専用など複数の種類があるためです。
PET検査は放射性薬剤を用いるため被ばくが生じます。多くの医療機関で実施されている18F-FDGを用いたPET検査の被ばく量は、約3.5mSv(ミリシーベルト)です。
さらに、PET-CTのCT検査では、約1.4〜3.5mSvの被ばくがあります。人に健康被害をもたらす放射線量は100mSv以上であるため、放射線障害が生じることはないと考えて良いでしょう。
画像もアナログPETではなくデジタルPETであれば、より鮮明な画像を撮影できます。さらに高感度で検出できる機器であれば、撮影時間を短くできるため、放射線の被曝量を軽減できるでしょう。
PET検査でわかるがんは10種類以上ある
PET検査でわかるがんは10種類以上あります。検出率で分けたPET検査でわかるがんは次の通りです。
がんの種類 | |
---|---|
検出率が高い | 肺がん・悪性リンパ腫・頭頚部がん・転移性肺がん・子宮体がんなど |
検出率がやや低い | 乳がん・食道がん・大腸がん・膵臓がん・子宮頸がん・卵巣がんなど |
検出率が低い | 早期がん・上皮内がん・腎がん・前立腺がん・膀胱がん・尿管がん・肝細胞がん・胆管がんなど |
PET検査とPET-CT検査の違い
PET検査とPET-CT検査の違いは、PET検査で撮影した画像に加えて、CT検査の画像を組み合わせているかどうかです。PET検査の画像は病変の正確な形や位置が不明瞭ですが、CT検査の画像と重ね合わせることで、がんの位置や形を正確に捉えやすくなります。
このように、CT検査の画像を組み合わせるとより精度が高くなるため、PET検査とCT検査を組み合わせて実施するのが主流です。
PET検査の費用相場はいくら?
PET検査の費用相場は次の通りです。
費用相場 | |
---|---|
保険診療適応時の費用 | 約3万円〜7万円 |
自由診療の場合の費用 | 約9万円〜約20万円 |
PET検査は、医療機関によりPET総合検診や認知症PETドックなど、複数のコースが用意されておりそれぞれ費用も異なります。実際の費用を知りたい場合は、受診予定の医療機関に問い合わせるかホームページを参考にしましょう。ここからは、保険適用になる条件や保険適用にならない条件を解説します。
保険適用(3割負担)になる条件
PET-CT検査の費用が保険適用になる条件は次の通りです。
- ・早期の胃がんを除く悪性腫瘍の病期や転移・再発の診断目的で、他の検査によって診断できない状態である
- ・手術や放射線治療により瘢痕(傷跡)と再発病変の判断が困難である
- ・心臓サルコイドーシスの診断目的である
- ・難治性部分てんかんで外科切除が必要な方である
- ・虚血性心疾患による心不全患者でバイアビリティ診断(心筋細胞の生存状況や血行再建により改善ができるかを図る診断)が必要である
- ・大型血管炎の診断がされている
PET検査は高額な費用がかかります。保険適用の条件は十分に確認しておきましょう。
保険適用とならない条件
PET-CT検査の費用が保険適用とならない条件は次の通りです。
- ・悪性・良性腫瘍の診断目的である
- ・同月に同病名で複数回検査を実施している
- ・同月にガリウムシンチグラフィを受診している
- ・他の画像診断(CT・MRI・超音波検査など)を実施していない
- ・健康診断やスクリーニング目的である
- ・原因不明の発熱の診断目的である
健康診断目的の場合の検査費用は、基本的に10割負担であると把握しておきましょう。
PET検査のメリット
PET検査のメリットは次の通りです。
- ・約1cmの小さながんを見つけられる
- ・がんの悪性度を診ることができる
- ・抗がん剤の効き目や転移・再発状況を調べられる
それぞれ解説します。
約1cmの小さながんを見つけられる
PET検査は、約1cmの小さながんを見つけられます。陽電子を放出する放射性薬剤を全身の細胞に行き渡らせて検査を実施するためです。具体的な仕組みは次の通りです。
1.がん細胞は放射性薬剤(ブドウ糖)を多く取り込み、取り込んだ分陽電子を放出する
2.その陽電子が消滅するころにガンマ線を体外へ放出する
3.ガンマ線を機器で撮影することでがん細胞が疑われるところが光って見える
このように放射性薬剤をがん細胞自体に行き渡らせて調べることができるため、約1cmの小さながん細胞も見つけられます。
ただし、前述の通りPET検査には得意・不得意があります。肺がんなどの発見は得意ですが、早期の胃がんはPET検査では見つけられないのが現状です。PET検査だけではなく、内視鏡検査など他の検査と組み合わせて検診を受けるのが一般的でしょう。
がんの悪性度を診ることができる
PET検査は、がんの進行度や転移・再発状況などの悪性度を見ることができます。放射性薬剤が集まる量(がん細胞の活動量)と、放射線量(発光の様子)は相関するためです。
悪性度の診断ができると、小さながんであっても手術範囲を広範囲にしたり、抗がん剤を併用したりと、がん細胞の悪性度に応じた治療ができます。早期発見・治療につながるため、生存率・完治率にも関係してくるでしょう。
抗がん剤の効き目を調べられる
PET検査では、放射線治療や化学療法の治療状況を調べられます。がん細胞は放射線治療や化学療法により活動量が低下して死滅していきます。活動量が低下するということは、発光の様子も減退していくため、視覚的に治療効果があるかを捉えられるのです。
まれに、化学療法の効果が出ているのに病巣が小さくならないということが起きます。これはがん細胞が死滅した病巣の跡に、傷跡のようなものができることで生じます。
PET検査を活用すれば傷跡であるかどうかも診断できるため、不要な放射線治療や化学療法を施す必要がなくなり適切な治療が可能です。無駄のない治療は患者さんの身体的負担だけでなく、費用面の負担も軽減できるでしょう。
PET検査のデメリット
PET検査は、がんの種類や大きさによっては見つけにくかったり、糖尿病の方は正確に調べられなかったりするデメリットが存在します。それぞれデメリットを補う対策があるため、ここで確認しておきましょう。
見つけにくいがんもある
PET検査は小さいがんや転移・再発状況を早期に見つけられるメリットがあります。一方で、次のようながんは見つけにくいとされています。
- ・1cm以下の小さすぎるがん:上皮内がん・早期がんなど
- ・ブドウ糖の消費量が少ないがん:肝細胞がん・前立腺がん・肺腺がん・胃がんなど
- ・正常細胞に放射性薬剤が集まりやすい部位のがん:脳腫瘍・腎臓がん・膀胱がんなど
- ・細胞密度の低いがん:のう胞がん・膵臓がんなど
PET検査は弱点がはっきりしているため、CTと並行して実施するPET-CT検査が主流になっています。全身のがんを調べる場合は、PET-CTだけなくMRIなどあらゆる検査を組み合わせて受診するのが、推奨されるでしょう。
糖尿病の方は正確に調べられないことがある
糖尿病による高血糖状態の方は、正確な検査ができない可能性があります。血糖値が高い状態であると、すでにがん細胞がブドウ糖を取り込んでいる状態になります。そして、放射性薬剤の取り込みが悪くなるため、正確な検査ができないのです。
血糖コントロールを行い事前に血糖値を150ml/dL以下にして、検査を受けるのが望ましいです。糖尿病による高血糖状態の方は、事前に主治医に相談しましょう。
PET-CT検査の検査時間と流れについて
がん検診を目的にしたPET-CT検査の流れは次の通りです。なお、検査時間や流れは医療機関により異なるため、あくまで参考として捉えてください。
検査の流れ | 詳細 |
---|---|
1.受付 | 病院の窓口で受付したあとに放射線科に移る |
2.更衣 | 検査着に着替えてスケジュールを確認にする |
3.問診 | 身長・体重測定を実施する。問診を受ける |
4.採血・投与 | 処置室にて採血と放射性薬剤の投与を実施する |
5.安静 | 投与後は放射性薬剤が体内に行き渡るまで1時間ほど安静にする |
6.排尿 | 検査前に排尿をする |
7.撮影 | 約30分間かけて全身を撮影する |
8.休憩 | 放射性薬剤の効力が減少するまで約30分安静にする |
9.会計 | 着替えたあとに窓口で会計を済ませれば検査終了となる |
検査時間は2時間〜3時間程が目安になるでしょう。
PET検査を受ける際の注意点
PET検査を受ける際に注意すべき点は次の通りです。
- ・検査5時間前から絶食
- ・内服薬や点滴に関する注意点
- ・検査前日と当日の過ごし方
それぞれ解説します。
検査5時間前から絶食
当日の検査時間の5時間前から絶食です。飲食をしてがん細胞が余分な糖分を取り込んでしまうと、正確な検査ができないためです。
糖分を含むジュース・スポーツ飲料・牛乳・アルコール飲料に加えて、シュガーレスのガムや飴なども飲食しないようにしましょう。水分摂取は、糖分を含まないお湯や水であれば可能です。検査後は、放射性薬剤を早く排出するために水分を多めに取りましょう。
内服薬や点滴に関する注意点
内服薬や点滴に関する注意点は次の通りです。
- ・かかりつけの医師が処方している薬は普段通りに服用できる
- ・糖尿病の方でインスリンや血糖降下剤を処方されている方は絶食時間に服用しない
- ・日常的に痛み止めの薬が必要な方は検査の際に持参しておく
- ・ブドウ糖またはインスリンを含む点滴をされている方は検査5時間前に終わらせる
検査前日と当日の過ごし方を確認する
PET検査は運動や冷気により、病変以外に放射性薬剤が集まってしまう可能性があります。そのため、次の行動を控えるようにしてください。
- ・激しい運動・重労働・カラオケ(喉の安静が必要な場合)などは控える
- ・長距離の歩行・自転車の移動は避けて公共交通機関や自家用車を利用する
- ・体が冷えないように暖かい服装で来院する
なんらかの理由で、万が一検査前日や当日にキャンセルまたは日程変更してしまうと、「検査にかかる費用の50%」や「PET検査に必要な薬剤の費用」などの負担が発生します。日程調整や注意事項に気をつけて、トラブルなく検査を受けられるようにしましょう。
PET検査はメリット・デメリットを理解して納得の上で受診しましょう
現在主流であるPET-CT検査の場合、保険診療は約3万円〜約9万円、自由診療は約9万円〜約20万円ほどです。PET検査は全身のがんの有無や悪性度を調べるメリットがあります。一方で、一部のがんは見つけにくいというデメリットもあります。
PET検査を受ける際は費用だけを確認するのではなく、これらのメリット・デメリットを理解して受診することが大切です。負担費用は増えますが全身のがんを調べることが目的である場合は、CT検査やMRI検査、内視鏡検査、腹部超音波検査などを組み合わせて受診できる総合がん検診を検討しても良いでしょう。
いかがだったでしょうか。セントラルメディカルクラブでは最新のPET-CT検査を実施しています。精密な検査で早期発見・早期治療を目指しております。人間ドックや検査をご検討の方は一度ぜひご相談ください。