副交感神経が優位になる状態とは? 心身が不調のときこそ副交感神経の活性化が必要
健康長寿交感神経や副交感神経という言葉をよく耳にします。どちらも体内の環境を整えるための大切な神経ですが、それぞれの神経が具体的にどのように働いているかご存知でしょうか?今回のコラムでは、とくに副交感神経にスポットをあて、副交感神経が優位とはどのような状態であるか、また優位にさせるためのコツをご紹介します。
自律神経とは
自律神経の乱れから体調を崩すとよく言われますが、そもそも自律神経はどのような働きをしているのかみていきましょう。
自律神経には、体の各部を活動モードにするための「交感神経」と、活動性を抑え、休養または回復モードにするための「副交感神経」という、相反する働きをする2種類の神経系があります。いわば、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキの役割を担っているといえるでしょう。状況に応じてどちらかの神経が優位になることで、血管をはじめ、身体のあらゆる内臓器官の働きをコントロールしています。
自律神経は、知覚神経や運動神経と異なり、私たちの意思で動かすことができない、独立した神経です。そのため、autonomic nerve(自律神経)と呼ばれています。
例えば、負荷のかかる運動をしているときに、心臓の拍動数が早くなり、汗が出るのは、自律神経系の交感神経が作用しているからです。
交感神経が優位になると、血圧が上昇し、身体が活動的な状態に入りますが、副交感神経が優位になると、血圧が低下し、リラックスした落ち着いた状態になるのです。体内のバランスを維持するために、この両者の神経が必要に応じて適宜切り替わっています。
意識しなくても自然に呼吸できるのも、食べたものを胃が消化できるのも自律神経が関与しています。消化に欠かせない腸の蠕動(ぜんどう)運動ですが、これを支配しているのは副交感神経です。しかしストレスが溜まると交感神経が優位になり腸の動きが鈍くなり便秘を引き起こします。
基本的に交感神経は人が起きている時間帯に活動し、副交感神経はリラックスしている時や夜就寝している時間帯に優位になります。
自律神経がうまく整っていると、スムーズに交感神経と副交感神経は切り替わりますが、乱れてしまうと、さまざまな不調が身体に現れてくるのです。つまり、この2つの神経が相互に拮抗して働くことで、消化吸収、血圧や脈拍,体温、代謝などが調節され、生命が維持されています。
副交感神経が優位な状態とは?
どんなに忙しい方でも、ずっと眠らずに活動するわけにはいきません。
心身ともに休ませる時間をつくるために作用するのが副交感神経です。副交感神経は、心身のさまざまな部分の活動性を下げ、回復、修復へと導きます。就寝中、食事中や食後、入浴時など、心身がリラックスしているとき、副交感神経が優位な状態になり、回復を優先させるモードとなっていす。
睡眠中は心臓の動きは落ち着いてくるので、全身の血流も穏やかになり、脈拍は下降し、呼吸は深く遅くなります。
消化管は日中より睡眠中に活発に働き、メンテナンスを行っていると考えられます。
副交感神経を優位にさせるコツ
自律神経がバランスよく機能しているかどうかは、心身の健康に大きく関わってきます。メンタルヘルスマネジメントでは、副交感神経がきちんと働いていることが重要と考えられています。
副交感神経を優位にさせるには、肩の力を抜いて、ゆっくり、にっこりと過ごすことがポイントです。では、具体的にはどのような方法があるかみていきましょう。
忙しい現代人にとって、ゆっくり過ごすというのは難しいかもしれませんが、お休みの日ぐらいはゆっくり朝を過ごしてみませんか?
ゆっくり朝を過ごすということは、遅くまで寝ているという意味ではありません。いつもより、30分程早起きして、朝食をゆっくりとり、余裕をもって一日をスタートさせましょう。
食べ物をよくかんでゆっくりと食べることも副交感神経を優位にさせます。消化・吸収は副交感神経が優位の場合に活発に行われますが、忙しくて食べ物をかきこむような食事をしていると、むしろ交感神経が優位になってしまいます。食事はリラックスして、楽しくいただきましょう。加えて、よく噛むことで脳が刺激されるので、血流が増え、脳が活性化します。
落ち着いてゆっくり話すこと、ゆっくり歩くこと、特に予定のない時間をつくることなど、これらすべてが副交感神経を活性化させるコツです。
また、にっこりすると顔の緊張がほぐれるので副交感神経が優位になります。笑顔は免疫機能を高めるともいわれています。作り笑いでもよいので、口角をあげてみてください。
イライラしている時、不安な時、緊張している時などは、ゆっくり深呼吸をして、背筋を思いっきり伸ばし、ゆっくり、にっこり過ごすことを思い出しましょう。
適度なストレスは、生きていく上でのスパイスのようなもので、人生に刺激を与え、自分自身の成長につながることもあります。それでも、過度なストレスに押しつぶされそうになったら、「何とかなる」「大丈夫」「考えたって仕方ない」と楽観することも必要なのではないでしょうか。副交感神経が優位になり、気持ちが楽になります。
副交感神経が優位になる生活を心がけましょう
自律神経の交感神経、副交感神経のどちらの働きも良いと、心も体も健やかな状態を保てます。ストレス過多の現代社会で多いのは、交感神経ばかりが優位になっているもしくは、どちらの神経も疲れきっている状態です。
体と心の抵抗力を高めるためには、とくに副交感神経を優位にさせる、つまり活性化させることが重要なカギといわれています。“ゆっくり”をキーワードにして行動すると、自然に副交感神経の活性化につながります。
日々の生活で大切なことは、心身の不調を感じている場合には放置せずに、ストレスを発散させたり、生活のリズムを整えたりして、副交感神経を優位にさせることです。