心筋梗塞を予防する方法14選!生活習慣や検査、注意すべき前兆も解説
がん、脳血管疾患とあわせて3大疾病といわれている心疾患。そのなかでも代表的な病気である心筋梗塞は、ほとんどの場合で急に症状が現れます。
心筋梗塞を発症すると、場合によっては突然死に至る恐れもあります。そのため、生活習慣を見直して心筋梗塞の予防に努めるだけでなく、早期発見のための取り組みが重要です。
この記事では、心筋梗塞がどんな病気か、早期発見のための検査、注意すべき前兆について解説するほか、心筋梗塞を予防するための具体的な方法もご紹介します。気になる症状がある方や、心筋梗塞になった家族がいて自身のリスクが心配な方は、ぜひ参考にしてください。
心筋梗塞とは
心筋梗塞とは、心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が詰まり、心臓が酸素不足に陥る疾患です。心臓への酸素や栄養の供給が途絶えることで、心臓を構成する筋肉(心筋)が壊死を起こします。
心臓は、ポンプのような動きをして全身に血液を循環させています。血液には酸素や栄養分が含まれ、心臓の動きによって全身の臓器に栄養が供給されているのです。
しかし、血管内に「プラーク」と呼ばれる物質が蓄積するなどして血流が悪化する「動脈硬化」を発症すると、心筋梗塞や「狭心症」などの「虚血性心疾患」を招くことがあります。心筋梗塞を発症すると、突然強い胸の痛みを感じ、脈拍の乱れや呼吸困難などを伴うことがあります。また、完全に血管が詰まった場合には、死に至る恐れもあります。
心筋梗塞を含む心疾患は日本人の死因の第二位に挙げられ、発症後に適切な治療を受けても後遺症が残るケースもあります。心筋梗塞の発症の背景には、近年の食生活の変化や運動不足などの生活習慣が大きく関わっているため、心筋梗塞の予防には生活習慣の改善が重要です。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化とは、全身に血液を送る動脈が硬くなり、内側が狭くなったり詰まったりする状態です。いくつかの種類(病型)があるものの、心筋梗塞では血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)がプラークという物質となり、血管内に蓄積する「粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)」が主な原因です。
粥状動脈硬化を発症すると、動脈内が狭くなって血流が悪くなります。さらに、血管の内側に蓄積したプラークが剥がれると「血栓」となって血管で詰まり、心筋梗塞の発症につながるのです。動脈硬化は、喫煙や飲酒の習慣があること、糖尿病や高血圧などの基礎疾患があることで発症リスクが高まるといわれています。
心筋梗塞で注意すべき前兆
心筋梗塞で注意すべき前兆には以下の症状が挙げられます。
- ・胸焼け
- ・胸の痛み、締め付けられる感じ、圧迫感
- ・顎・腕・肩の痛み(放散痛)
心筋梗塞の前兆である場合、このような症状が数分〜10分程度持続し、その後軽快することが特徴です。しかし、症状は完全に消失することはなく、特に階段の昇降時などに繰り返し出現します。心筋梗塞を予防するほか、早期発見・早期治療のためにも、何らかの異常に気付いたら速やかに医療機関を受診することが重要です。
心筋梗塞の検査方法
心筋梗塞の検査方法には、血液検査、心電図、超音波検査、心臓カテーテル検査などが挙げられます。心筋梗塞の発症が疑われる場合には、速やかに血液検査や心電図検査、超音波検査をおこなって診断します。さらに、治療方針を決定するため、足の付け根からカテーテルを挿入し、血管の詰まった部位を特定する心臓カテーテル検査がおこなわれます。
心筋梗塞の予防法
心筋梗塞の予防法には、食事や運動などの生活習慣の改善のほか、日常生活で意識して取り組めるものがあります。ここでは、日常でできる心筋梗塞の予防法をご紹介します。
定期的に健康診断を受ける
心筋梗塞の予防には、定期的に健康診断を受けることが重要です。健康診断で受ける検査項目には、一般的に血液検査や心電図検査などが含まれています。
血液検査や心電図検査では、心臓に何らかの異常がある場合に変動する数値を確認するほか、脈拍の異常を特定できることがあります。そのため、健康診断を受けることで心筋梗塞の早期発見につながります。気になる症状がなくても、心筋梗塞の早期発見のため定期的に検査を受けるようにしましょう。
禁煙する
心筋梗塞を予防するためには、禁煙することも重要です。たばこの煙には、一酸化炭素やニコチンなど多くの化学物質が含まれます。一酸化炭素は、全身に酸素を運ぶ「赤血球」に結合し、体内を酸欠状態にします。
その結果、血圧が高くなったり血管が収縮したりして血流を悪化させます。また、ニコチンは「交感神経」を刺激し、一酸化炭素と同様に血管の収縮や血圧の上昇を招きます。すなわち、日常的に喫煙していると、化学物質の作用によって動脈硬化や心筋梗塞を発症しやすくなってしまうのです。
喫煙していると、心筋梗塞だけでなくさまざまな疾患に罹患する確率が高くなります。心筋梗塞を予防し、健康寿命を伸ばすためにも禁煙に取り組みましょう。
節度ある適量の飲酒を心がける
心筋梗塞の予防には、節度ある適量の飲酒を心がけることも重要です。多量のアルコールは血管を収縮させ、血圧を上昇させたり心拍数を増加させたりする作用があります。そのため、飲酒の習慣がある場合には、アルコールの摂取量に注意が必要です。
一方、適量の飲酒であれば心臓病に関連する死亡率が低くなることも分かっており、特に健康に問題がない場合には、断酒する必要はないといわれています。しかし、心筋梗塞の予防のためには、節度ある飲酒量を守ることが重要です。心筋梗塞を予防し、健康を維持するためには、一日あたりの飲酒量を2ドリンク(ビール中瓶1本程度)までを目安にすると良いでしょう。
ストレスを溜め込まない
心筋梗塞の予防には、ストレスを溜め込まないようにすることもポイントです。一般的に、心筋梗塞の発症には生活習慣が大きく関わっていますが、精神的・身体的ストレスも要因になるといわれています。
近年はストレス社会とも呼ばれ、知らず知らずのうちにストレスを溜め込みがちです。しかし、心筋梗塞の予防のためにもストレスを溜め込まないよう注意し、十分な休息を取るよう心がけましょう。
水分不足にならないよう水を飲む
心筋梗塞の予防には、水分不足にならないよう水を飲むことも重要です。水分が不足すると、心筋梗塞を発症するリスクが高くなることがわかっています。
脱水傾向になると、血液の粘稠度が高くなって血流が悪くなり、動脈硬化を来しやすくなるためです。そのため、特に汗をかきやすい夏場や、高齢者など脱水傾向になりやすい人は注意が必要です。
実際におこなわれた研究(岡村菊夫ら 「水分を多く摂取することで、脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか?」)では、一日あたりコップ5杯以上の水を飲む人は、2杯以下しか飲まない人と比較して心筋梗塞の発症率が低いことがわかっています。健康上水分の摂取量に制限がない場合には、心筋梗塞予防のため意識的に水分を摂取するようにしましょう。
バランスの良い食生活を心がける
心筋梗塞の予防には、バランスの良い食生活を心がけることも重要です。ここでは、心筋梗塞予防のための食事のポイントを5つ紹介します。
塩分を控える
心筋梗塞の予防には、塩分を控えることが有効です。塩分を摂り過ぎると、血液中のナトリウム濃度が上昇します。すると体内ではナトリウム濃度を下げようと、喉の渇きを感じさせて水分摂取を促します。
水分を摂取することでナトリウム濃度は低くなるものの、血管に流れる血液量が増えて血圧が高くなります。そのため、塩分の摂り過ぎは高血圧につながり、動脈硬化や心筋梗塞の発症率を高めるのです。
一般的に、健康を維持するためには一日あたりの塩分摂取量を6g未満にすることが推奨されています。まずは日頃どのくらいの塩分を摂取しているか把握し、摂り過ぎている場合には、加工食品の摂取や外食を減らすなどして減塩に努めましょう。
糖質の過剰摂取に注意する
心筋梗塞を予防するためには、糖質の過剰摂取にも注意が必要です。これは、糖質を過剰に摂取することで肥満や糖尿病を招き、動脈硬化や心筋梗塞の要因になるためです。
しかし、糖質はタンパク質、脂質と並ぶ「エネルギー産生栄養素」の一つで、生命を維持する上で欠かせない栄養素です。理想的な糖質の摂取量は、各年齢や性別ごとに必要な1日のエネルギー摂取量の50〜65%といわれています。糖質を過剰に摂取している場合には、ご飯の量を減らしたり、外食を控えたりして調整しましょう。
飽和脂肪酸の摂取を控える
心筋梗塞の予防では、飽和脂肪酸の摂取を控えることも重要です。飽和脂肪酸は脂質を構成する「脂肪酸」の一種で、主に乳製品や肉類など、動物性の脂肪に多く含まれています。
飽和脂肪酸はエネルギー源となる一方で、過剰に摂取すると血液中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化に至る恐れがあります。心筋梗塞を予防するためには、特に乳製品や肉類、植物油(パーム油)など、飽和脂肪酸を多く含む食品を摂り過ぎないよう注意しましょう。
食物繊維の摂取量を増やす
心筋梗塞の予防には、食物繊維の摂取量を増やすことが有効です。食物繊維は消化されずに大腸まで届く物質で、整腸作用のほか過剰な糖や塩分、脂質を排出する役割があります。そのため、糖質や塩分、脂質の過剰摂取による動脈硬化、心筋梗塞の予防に効果が期待できます。
食物繊維は野菜や果物、穀物、豆類、きのこ類などに多く含まれています。これらの食品を積極的に取り入れるほか、主食を玄米やライ麦パンなどに置き換えることでも食物繊維の摂取量を増やすことができるでしょう。
野菜や海藻を積極的に取り入れる
心筋梗塞の予防には、野菜や海藻を積極的に取り入れることも有効です。野菜や海藻には、さまざまな病気の原因となる活性酸素を除去するビタミン、塩分の排出を促す「カリウム」などのミネラルが含まれます。
さらに、食物繊維も含まれるため、心筋梗塞の予防に効果的な食材といえます。心筋梗塞を予防して健康を維持するため、意識的に野菜や海藻を食べるようにしましょう。
適度な運動を心がける
心筋梗塞の予防には、適度な運動を心がけることも重要です。しかし、現代人は忙しく、なかなか運動する時間を確保できないこともあるでしょう。そこで、日常で運動量を増やすための方法を3つ紹介します。
なるべく階段を使用する
心筋梗塞を予防するための取り組みとして、なるべく階段を使用することが有効です。エスカレーターやエレベーターは極力使わず、自力で階段を昇り降りすることで運動量を増やすことができます。階段の昇り降りは器具が不要で手軽にできるため、運動する時間が取れないという方に特におすすめです。
家事や庭仕事を積極的におこなう
心筋梗塞の予防のため、家事や庭仕事をすることも効果的です。家事や庭仕事は一見すると運動量が少ないように感じるかもしれません。
しかし、長期的に見ると、10分程度の歩行を1日数回おこなうだけでも、生活習慣病を予防する効果が期待できます。そのため、通勤時の移動のほか、家事や庭仕事に伴う活動も心筋梗塞の予防に効果が期待できます。普段も活動量が少ない方は、率先して家事や庭仕事をおこなうと良いでしょう。
大股・早足で歩くことを意識する
心筋梗塞の予防には、大股や早足で歩くことも効果的です。生活習慣病の予防には運動量を増やすことが有効とされていますが、実際には十分な運動量を維持できていない人が多い傾向にあり、今より少しでも運動量を増やすよう意識することが重要といわれています。
大股や早足で歩くと、運動量だけでなく運動の強度を高めることもできます。運動する時間を確保できないという人も、まずは大股や早歩きの習慣をつけてみると良いでしょう。
まとめ
心筋梗塞は、動脈硬化によって血管が詰まり、心臓に酸素や栄養が供給されなくなることで心筋が壊死する疾患です。動脈硬化の主な要因には、喫煙や過度の飲酒、偏った食生活、運動不足などが挙げられます。動脈硬化を放置して心筋梗塞を発症した場合には、治癒しても後遺症が残るほか、場合によっては死に至る恐れもあり非常に危険です。
心筋梗塞を予防するには、食事や運動などの生活習慣を見直すだけでなく、定期的に健康診断を受けることが重要です。自覚症状がない段階でも異常を特定できることがあります。自身の健康状態を把握し、心筋梗塞の予防と早期発見に努めましょう。