人間ドックの所要時間はどれくらい?半日・日帰り・宿泊それぞれの流れや検査項目について解説
人間ドックには、基本的な検査項目だけを調べる短時間のコースから、全身の状態をくまなく調べることができる宿泊コースまで、医療機関によってさまざまなコースが用意されています。しかし、それぞれ所要時間や検査項目が異なるため、どのコースを選ぶべきなのか迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、人間ドックのコース(半日・1日・宿泊)それぞれの受診に必要な時間や流れ、検査項目について詳しく解説していきます。
人間ドックの受診を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
人間ドックのコースのタイプと所要時間
人間ドックのコースには「日帰り」と「宿泊」があり、さらに日帰りのコースは「半日」で終了するものと「1日」かかるものに分かれています。
ここでは、人間ドックの所要時間について、それぞれのコースごとに説明していきます。
半日コース
半日コースの所要時間の目安は2時間~4時間で、血液検査やX線・超音波検査をはじめとした人間ドックの基本的な検査項目で構成されています。
午前中に始まってお昼には終了することが多く、ほとんどの医療機関では、希望によりオプションで検査を追加することができます。また、午後開始のコースが設けられている医療機関もあるため、仕事や家事の状況に合わせて選べることがメリットです。
日帰り(1日)コース
日帰りの1日コースは、基本的な検査項目に専門的なオプション検査を組み合わせて設定されていることが多く、所要時間は4時間~7時間程度です。ただし、1日と半日の定義については、所要時間・検査内容ともに明確なルールがありません。
そのため、ある医療機関では1日コースでなければ受けられない検査が、ほかの医療機関では半日コースにオプションで追加できる場合があります。
宿泊コース
泊りがけで人間ドックをおこなう宿泊コースは、おもに1泊2日や2泊3日の日程で提供されています。最近では、受診する人間ドックの施設に宿泊するコースだけではなく、提携しているホテルや温泉旅館に宿泊するコースを提供する医療機関も増えており、休養を兼ねて受診する人も多いようです。
全身の状態が確認できる検査項目を揃えていることがほとんどですが、あえて時間にゆとりをもってスケジュールを立てているために、1日(日帰り)コースと大きく内容が変わらない宿泊コースも存在します。そのため、所要時間の長さだけではなく、受けたい検査が含まれているか確認することが重要です。
人間ドックの検査項目
ここからは、人間ドックの検査項目について、それぞれのコース(半日・1日・宿泊)ごとに詳しくみていきます。
人間ドックのすべてのコースに共通する検査項目・オプション項目
日本人間ドック・予防医療学会では、人間ドックでおこなう検査項目を「基本項目」と「オプション項目」に分けて、以下のように定めています。
<基本項目>
- ・身体計測:身長・体重・肥満度・腹囲・BMI
- ・生理機能:血圧測定・心拍数・心電図・聴力・視力・呼吸機能など
- ・X線・超音波検査:胸部X線・上部消化管X線・腹部超音波
(上部消化管X線は、金額を加算することで内視鏡に変更可) - ・血液:赤血球・白血球・総蛋白・アルブミン・中性脂肪・血糖など
- ・尿一般・沈査:尿蛋白・尿糖・潜血など
(尿蛋白・潜血反応が陰性の場合、沈査は省略可) - ・便の検査:潜血
- ・問診・診察:医療者による面接・医師の診察
- ・判定・指導:医師の結果説明・医療者からの保健指導
以上の基本項目は、すべての人間ドックのコースで実施されます。
また、宿泊コースの場合は、上記の項目に「血糖(75gブドウ糖負荷試験)」が基本項目として加わります。
<オプション項目>
- ・上部消化管内視鏡(基本は上部消化管X線であるが、希望により選択可能)
- ・乳房診察+マンモグラフィ
- ・乳腺超音波
- ・婦人科診察+子宮頚部細胞診
- ・PSA
- ・HCV抗体(厚生労働省の肝炎総合対策により、未実施の場合は実施が推奨されている)
オプション項目は、本人の希望により選択可能な項目です。
ただし、医療機関によっては実施していな検査もあるため、事前に受診可能か確認しておきましょう。
オプション(専門ドック)の検査項目
多くの医療機関では、日本人間ドック・予防医療学会の定める基本項目・オプション項目に加えて、より専門的な検査項目を「オプション検査」として提供しています。その項目数は医療機関によって異なりますが、おおよそ50~100項目と多岐にわたります。
<オプション検査の例>
- ・頭部MRI・MRA検査
- ・頸動脈超音波検査
- ・胸部CT検査
- ・心臓超音波検査
- ・運動負荷心電図検査
- ・内臓脂肪測定検査(CT)
- ・大腸X線検査・大腸内視鏡検査・大腸CT検査
- ・がんリスク評価(アミノインデックス)
- ・腫瘍マーカー
- ・骨密度測定
- ・子宮頸がん検査・子宮体がん検査・HPV検査
- ・PET-CT検査
自分でオプション検査を選ぶこともできますが、最近ではあらかじめオプション検査を追加したコースを用意していることが多いようです。
また、特定の部位や臓器のオプション検査をパッケージにした「レディースドック」「脳ドック」など、専門ドックを提供している医療機関も増えています。
半日コースの検査項目の例
半日コースの所要時間は長くても4時間程度と限られていますが、オプションを追加したコースも提供されています。
<例1:標準的な半日コース>
- ・人間ドック基本項目の検査
- ・肝炎ウイルス(HBs抗原・HCV抗体)
- ・子宮頚部細胞診(女性)
- ・前立腺腫瘍マーカー/PSA(男性)
基本項目に、自分で選択したオプションを追加したパターンです。
所要時間は2~3時間が目安です。
<例2:脳ドック>
- ・人間ドックの基本項目の検査
- ・頭部MRI・MRA検査
- ・頸動脈超音波検査
- ・動脈硬化度測定
脳にフォーカスした専門ドックの検査項目の例です。
脳梗塞・脳腫瘍・脳動脈瘤のリスクを診断するため、頭部MRI・MRA検査を中心に、複数のオプションがパッケージになっています。ほかにも「心臓ドック」「レディースドック」などさまざま専門ドックが提供されています。
所要時間は、おおよそ3~4時間です。
1日コースの検査項目の例
人間ドックの1日コースの所要時間は、4~7時間とやや幅があります。そのため、同じ「1日コース」という名称であっても、医療機関によって含まれる検査項目が異なります。また、半日コースとは違い、あらかじめ複数のオプションが組み込まれたコースとして提供されることが多いようです。
ここでは、所要時間6時間前後の1日コースの例をご紹介します。
- ・人間ドックの基本項目の検査
- ・肝炎ウイルス(HBs抗原・HCV抗体)
- ・腫瘍マーカー(CEA・PSA・CA-125など)
- ・上部消化管内視鏡(基本項目の上部消化管X線から変更)
- ・頭部MRI・MRA検査
- ・頸部MRA検査
- ・胸部CT検査
- ・頸部超音波検査
- ・動脈硬化検査
1日コースでも、コースで提供される検査項目にオプション検査を追加することができます。
また、最新の医療機器(PET-CTなど)を使用することにより、全身のがんと生活習慣病のリスクをチェックできるプランなど、幅広いメニューが提供されていることも特徴のひとつです。
宿泊コースの検査項目の例
宿泊コースの多くは、1泊2日か2泊3日で設定されています。
人間ドックの基本項目に専門的なオプション検査があらかじめ組み込まれており、希望があればさらにオプションを追加できるというコースが多いようです。
また、1泊2日と2泊3日の差は、検査の項目数というよりもスケジュールの組み方によるところが大きい傾向があります。ここでは専門ドックを複数組み合わせたコースの検査項目の例をご紹介します。
- ・人間ドックの基本項目の検査
- ・肝炎ウイルス(HBs抗原・HCV抗体)
- ・腫瘍マーカー(CEA・PSA・CA-125など)
- ・上部消化管内視鏡
- ・大腸内視鏡もしくは大腸CT検査
- ・頭部MRI・MRA検査
- ・頸部MRI検査
- ・胸部CT検査
- ・頸部超音波検査
- ・動脈硬化検査
- ・婦人科検査(子宮頸がん・子宮体がん・乳がん)
2泊3日の場合、さらに運動負荷試験(心電図)やPET-CT検査などが追加されることがあります。
人間ドック受診の流れ
ここからは、人間ドックの日帰りコース(半日・1日)と宿泊コースそれぞれの受診の流れについて、詳しく解説していきます。
半日・1日コースの場合
<事前準備>
人間ドックの受診前日までに、同意書・問診表の記入や、便潜血検査のための便の採取は済ませておくようにします。また、飲食止め(食事やアルコールなどの制限)や内服薬の制限など、医療機関からの案内をしっかりと読んで決まりを守るようにしましょう。
<受付・着替え>
医療機関に到着したら受付をおこない、用意した同意書・問診表を提出します。受付後、身につけている装飾品(アクセサリー・時計など)はすべて外し、指定された検査着に着替えます。
<尿の採取>
着替え後は、最初の検査に呼ばれる前に尿の採取をおこないます。場合によっては、自宅で起床直後の尿を採取するように指示されることもあります。
<問診>
提出した問診票をもとに、医師からの問診を受けます。
<身体への負担が少ない検査・採血>
日帰りコースでは、身体計測・血圧測定・視力/聴力検査など、身体的負担の少ない検査から始めます。採血もこのタイミングでおこなわれます。
<専門の医療機器を使用した検査>
眼圧・眼底検査・心電図検査・呼吸機能検査・腹部超音波検査などの検査をおこないます。ほどんどの医療機関では検査の順番が決まっているため、基本的には指示されたとおりに移動するだけで問題ありません。
<画像検査・内視鏡検査>
胸部X線検査・上部消化管X線検査をおこないます。上部消化管内視鏡に変更をした人は、胸部X線検査の終了後に内視鏡検査を実施します。
<医師の診察>
すべての検査の終了後、医師の診察を受けます。検査の結果や注意点について説明があり、要精密検査の項目があれば今後の受診について指示が出されます。
<医療者による面接指導>
保健師や管理栄養士などによる面接指導がおこなわれます。検査の結果をもとに、生活習慣病のリスクに対する生活上の注意点や、食事についての具体的なアドバイスを受けることができます。
<着替え・会計>
検査着から着替え、最後に会計をして帰宅となります。
宿泊コースの場合
人間ドックの宿泊コースには、日数・検査項目などさまざまなパターンがありますが、ここでは一般的な1泊2日コースの流れをご紹介します。
※事前準備と各プロセスでおこなわれる内容については、半日・1日コースと同じです。
<1日目午前>
下剤を服用し、絶食の状態で来院
- ・受付・着替え
- ・問診
- ・上部消化管内視鏡・大腸内視鏡
- ・胸部CT検査・腹部CT検査・頭部MRI/MAI検査・頸部MRI検査
<1日目昼食>
指定された場所(レストランなど)で、指定されたメニューから選択
<1日目午後>
- ・婦人科検査(子宮頸がん・子宮体がん・乳がん)
- ・そのほかオプション検査
<宿泊施設へ移動・夕食・宿泊>
夕食も指定された場所・メニューから選択
<2日目午前>
- ・受付
- ・尿の採取
- ・身体への負担が少ない検査・採血
- ・専門の医療機器を使用した検査
- ・医師の診察
- ・医療者による面接指導
<2日目昼食>
1日目と同様に指定された場所・メニューから選択
<2日目午後>
- ・着替え・会計
- ・宿泊の場合は、翌日に受ける検査によって飲食の制限や下剤の服用が必要になることがあります。
人間ドックのコースについてよくある質問
胃カメラを受ける場合はどのコースを選べばよい?
人間ドックの基本項目である上部消化管X線検査を胃カメラ(上部消化管内視鏡)に変更することで、基本的にはどのコースでも受けることが可能です。
ただし、胃カメラを受ける際の注意点として、以下の2点が挙げられます。
- ・胃カメラへの変更には追加の費用がかかる
- ・人間ドックの所要時間が30分~1時間ほど長くなる
特に、鎮静剤を使用して検査を受けた場合は眠気やふらつきが生じるため、医療機関で1~2時間の安静が必要になることがあります。
人間ドックの待ち時間にスマホは使用できる?
人間ドックにスマホの持ち込みを許可している医療機関であっても、使用できるエリアが決められていたり、以下のようなルールが設けられていたりすることがあります。
- ・通話・写真の禁止
- ・医療機器のそばでの使用禁止
- ・検査室内への持ち込み禁止
これらのルールは医療機関によって異なります。よく確認したうえで、マナーを守って使用するようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、半日・日帰り・宿泊それぞれの人間ドックのコースについて、所要時間や検査項目、検査の流れを詳しく解説してきました。
これまでの人間ドックでは日帰りコースが一般的でしたが、最近では宿泊コースも多く提供されており、より整った環境で人間ドックを受けられるようになりました。また、医療機器の発達や医療機関による検査の効率化により、時間の短い日帰りコースでも充実した内容が提供されています。
ご自身のライフスタイルに合った人間ドックを選択するためにも、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
セントラルメディカルクラブ世田谷では、会員制人間ドックをご提供しております。
コンシェルジュがスケジュールを調整し、不要な待ち時間が発生したり、他の方と接触したりしないようプライバシーに配慮しながらご案内するため、限られた時間のなかで健康管理が必要となる経営者・エグゼクティブの方にもストレスなくお過ごしいただけます。
無駄な時間を省きながら、精度の高い人間ドックを受けたい方は、是非ご相談ください。