人間ドックは受けない方がいい?は本当か
人間ドックは、検査項目が数多くあり健康状態を詳細にわたって知ることができるため、病気の早期発見・早期治療に役立てられるのが特徴です。しかし勤務先の健康診断を受けている人や健康に自信のある人は、人間ドックは受けなくてもいいと思っているかもしれません。
今回は人間ドックについて、以下の内容をわかりやすく解説します。
- ●人間ドックにはどのようなメリットがあるのか
- ●一般の健康診断と何が違うのか
- ●人間ドックで受けた方がいい検査は何か
ほかにも人間ドックを受ける年齢や受診間隔についても説明します。ぜひ最後までチェックしてください。
人間ドックとは
人間ドックは、一般的な健康診断よりも検査項目を増やし、全身の健康状態を詳しく確かめる任意の検査です。人間ドックを受診すると、以下の3つの効果が期待できます。
- ●自覚症状のない病気を早期発見する
- ●体調を管理して症状が悪化しないようにする
- ●現時点での健康状態を把握する
一般的な健康診断の目的は、現時点で生活や労働に差し支えがないかを確認するのに対し、人間ドックの目的は、自分自身で体のメンテナンスをするために利用する点で違いがあります。
人間ドックは受けるべきか?受診をおすすめする2つの理由
健康に自信のある人は、人間ドックを受けるべきか悩む人もいるでしょう。人間ドックの受診をおすすめする2つの理由は以下のとおりです。
- ●詳しい検査で病気の早期発見が期待できる
- ●医師から説明やサポートを受けられる
ひとつずつ確認していきましょう。
詳しい検査で病気の早期発見が期待できる
人間ドックでは、学会で定められた検査項目が50項目以上あり、全身の健康状態を詳しく確認できるため、自覚症状がなくても病気や異常の発見が期待できます。一般の健康診断では世間でよくみられる病気がないか一様に確認する程度ですが、人間ドックでは一般的な健康診断検査にはない項目が多くあるため、さまざまな病気の有無を確認できるのです。
どちらの検査にも共通している生活習慣病にかかわる項目は、人間ドックの方がより多くの種類の検査ができるため、健康状態を詳しく確認できます。がんの可能性を確認する項目は、一般の健康診断ではほとんど検査できません。がんは早期発見・早期治療して、がんで命を落とさないようにすることが重要であるため、人間ドックを利用するのは非常に有効です。
医師から説明やサポートを受けられる
一般的な健康診断では、検査を受けた後に結果のみ郵送されることが大半です。人間ドック学会では、検査当日に結果を医師から説明することを定めているため、異常が見つかった場合に適切なアドバイスが受けられます。精密検査を受けた方がよいのか、治療を始めるべきなのかなど、疑問に思ったことをその場で医師に確認できるのです。
人間ドックでは希望に応じて、保健師や管理栄養士などの専門スタッフから、日常の健康管理や治療へのアドバイスも受けられます。精密検査を受けそびれている場合には受診するよう声がけするなど、受診した後も継続的なサポートもあるのです。
人間ドックと健康診断の違いは?
人間ドックと一般の健康診断との違いについて、検査項目と費用面からみていきましょう。
検査内容について
人間ドックと一般的な健康診断の検査内容は、それぞれ以下のとおりです。
人間ドック基本項目(全50項目以上)
身体計測・血圧・視力・聴力・胸部レントゲン・心電図・血液検査(腎臓系・肝機能・脂質・血糖・血液一般・血清学)・尿検査
眼底・眼圧・呼吸器機能・上部消化管X線・腹部超音波・便潜血検査
一般的な健康診断(全15~20項目)
身体計測・血圧・視力・聴力・胸部レントゲン・心電図・血液検査(肝機能・脂質・血糖・貧血)・尿検査
一般的な健康診断にはなく、人間ドックを受けることで調べられる病気の一部を下表にまとめました。
検査 | 病名 |
眼底検査・眼圧検査 | 緑内障、白内障、網膜剥離 |
呼吸機能検査 | COPD、間質性肺炎、肺線維症 |
上部消化管X線 | 胃や十二指腸のポリープ、胃潰瘍、胃がん |
腹部超音波 | 脂肪肝、結石、肝臓・膵臓・胆のうのがん |
腎臓系検査(クレアチニン、eGFR、尿酸) | 慢性腎不全・高尿酸血症 |
便潜血検査 | 大腸がん・大腸ポリープ |
検査費用について
企業でおこなわれる一般の健康診断は、労働安全衛生法により実施が義務付けられています。費用も企業が全額負担することが法律で定められています。一般的な健康診断の費用の相場は5,000~15,000円です。
人間ドックは、個人の希望で受診するため全額自己負担になります。検査費用は医療機関によって異なります。日帰りコースの相場は3万円~6万円、1泊2日コースの相場は4万円~10万円です。
1泊2日コースの方が検査項目が多く、精密な検査を受けられます。勤務先によっては、人間ドックの検査費用について一部補助が出る可能性もあります。
人間ドックでは、オプション検査を追加することが可能です。脳ドックは3万円~5万円、レディースドックは1万円~4万円、がんPET検査は約10万円が基本コースに上乗せされます。
人間ドックとがん検診の違いは?
人間ドックとがん検診の違いについて、わかりやすく解説します。
人間ドックはがん以外の病気も発見できる
がん検診は、がんの早期発見・早期治療をおこない、がんによって命を落とさないようにする目的があり、がんに特化した検査です。がん以外の病気については、別に健康診断の受診が必要となります。
人間ドックは多岐にわたる検査項目があり、1回の検査で生活習慣病・目の病気・呼吸器疾患・がんまで、全身の病気を検査することが可能です。
個人の目的や考え方に合わせて受診できる
自治体などでおこなう一般的ながん検診は、がんの疑いがあるかどうかを振り分ける検査であるのに対し、人間ドックで扱うがん検診は、個人のがんを見つけ出す検査です。一般的ながん検診は、大腸がん・肺がん・胃がん・乳がん・子宮頸がんの5種類のみですが、人間ドックで受けられるがん検診は、オプションによって幅広くフォローできます。
一般的ながん検診は、対象となる年齢や検査できるがんの種類が決められています。そのため、30代以下の若年者のがんや遺伝性がんの発見が遅れる可能性があるのです。一般的ながん検診の受診対象にならない人、またはがんの家族歴がある人は人間ドックの受診をおすすめします。
人間ドックで受けた方がいい検査とは
人間ドックで受けた方がいいオプション検査はどのようなものがあるのか、選び方のポイントについて解説します。
年齢や性別で選ぶ
年齢や性別によってかかりやすい病気が異なります。それを基本にオプション検査を選ぶ方法がおすすめです。
30代女性では、乳がんや子宮頸がんなど婦人科疾患のリスクが高まります。レディースドックを追加して早期発見につなげましょう。
40代になると、生活習慣の影響が体に出始めます。受診を検討するオプション検査は以下のとおりです。
- ●Lox-index検査:血圧・血糖・脂質の数値が高い人や喫煙歴のある人
- ●大腸内視鏡検査:男女かかわらず大腸がんになる人が増え始めるため
50代では、人間ドックそのものを定期的に受けましょう。それまでの生活習慣や既往歴によって、追加を検討するオプション検査は次のとおりになります。
- ●脳ドック(脳MRI):脳血管疾患を発症する人が増えるため
- ●胸部CT検査・喀痰細胞診検査:喫煙歴のある人は肺がんリスクがあがるため
- ●胃内視鏡検査・ピロリ菌検査:胃がんになる人が増え始めるため
- ●PSA検査:男性では前立腺疾患のリスクがあがるため
既往歴や家族歴から選ぶ
年齢や性別のほかに、既往歴や家族歴から発症しやすい病気について検査することをお勧めします。かねてより脂質や血糖の異常を指摘されている人では、動脈硬化が進んでいる可能性があるため、Lox-index検査、頸動脈超音波、脳ドックを検討してください。
乳がん・大腸がん・肺がんの一部は、遺伝性の可能性があります。これらのがんを発症した家族や親族がいる場合、レディースドック、大腸内視鏡検査、胸部CT・喀痰細胞診検査の追加を考えましょう。
気になる症状で選ぶ
日ごろから気になる症状がある人は、症状に合わせたオプション検査があれば検討してみましょう。参考例は以下のとおりです。
- ●ピロリ菌検査:胃痛や胃もたれ、胸やけが気になる人
- ●View39・アレルギーセット:鼻炎や喘息の症状がある人
- ●DEXA検査:年齢を重ねて骨粗しょう症が気になる人
人間ドックを受ける年齢や頻度は?
人間ドックは何歳から受診すればよいか、どのくらいの頻度で受けるのがよいか詳しく見ていきましょう。
推奨するのは40歳以上
人間ドックはどの世代でも受診できますが、推奨するのは40歳以上の人です。若いころからの生活習慣の影響は少しずつ蓄積されますが、顕著に出てくるのは40歳をすぎてからになります。
この年代では、年齢による体力の低下も現れてくるのです。女性は更年期に差しかかるため、ホルモンバランスの揺らぎが出始めます。統計的にも、がん発症のリスクが上昇し始めるのが40代です。
一般の健康診断はおおまかな検査であるため、病気の早期発見には物足りないところがあります。40歳を過ぎたら、人間ドックで詳しい検査をおこなって体調管理することをおすすめします。
受診頻度は年1回がおすすめ
人間ドックは1年ごとに受診しましょう。人間ドックは、検査項目が多く費用も高額であるため「1度きちんと受ければ、しばらく受診しなくてもよいだろう」と思う人もいますが、体調は時間の経過とともに変わります。
人間ドックを定期的に受けるメリットのひとつに、過去のデータと比較することで、生活習慣の改善につながることが挙げられます。毎年同じ時期に受診したほうが体調変化がわかりやすいため、誕生月など忘れない時期に人間ドックを受診しましょう。
人間ドックの上手な受け方3つのポイント
人間ドックを有効活用するためのポイントを3つ紹介します。
それぞれの検査の特徴をふまえて受診プランを立てる
人間ドックには、基本項目とオプション検査があります。オプション検査が豊富にあるため、なかには必要以上に追加する人もいます。しかし、やみくもにオプション検査を追加すると、受けるメリットがそれほどないものまで入ってしまうこともあるのです。
オプション検査を追加したいときは、何を調べる検査なのか、どのような方法でおこなうのか、検査による合併症はあるのかなど、検査の特徴を事前に医療機関へ確認してください。オプション検査は、年齢・生活習慣・家族歴などに合わせて選び、長い目で受診計画を立てましょう。
検査によるデメリットを理解する
人間ドックを受けると、健康管理に役立つメリットが多くありますが、デメリットもいくつかあります。一部の検査では合併症が起こる可能性があります。たとえば、上部消化管X線検査で用いるバリウムに対するアレルギー、採血時の皮下出血、大腸内視鏡検査時の穿孔(腸に穴が開く)などです。
すべての検査には一定の限界があります。今回の人間ドックの結果で異常なしと判断されても、病気がゼロだったことを保証するものではありません。検査をおこなう医療機関では、人間ドックの精度の向上に努めていますが、100%安全に受けられて正しい結果が得られるわけではないことを理解しましょう。
人間ドックを受けっぱなしにしない
人間ドックを受診しても、結果の説明を受けただけで終わらせないようにしましょう。人間ドックの目的は、検査をおこなうことで病気の早期発見や生活習慣の改善につなげることです。勧められた精密検査の受診を忘れたり、治療をおろそかにしたりすると、人間ドック受診のメリットが半減するため注意してください。
人間ドックを受診した後も、精密検査や治療が同じ医療機関で受けられるなどサポートが手厚いところを選ぶと安心です。体調で気になることがあればすぐに相談できるように、自宅や職場に近いなど受診しやすい医療機関で人間ドックを受けることをおすすめします。
まとめ
人間ドックは50項目以上の検査があり、一般的な健康診断よりも全身の健康状態を詳しく調べられるため、自覚症状のない生活習慣病やがんの早期発見に役立ちます。人間ドックにはオプション検査が豊富にあり、年齢・性別・既往歴などに合わせて組み合わせることで、自分に合った健康管理ができるのが大きなメリットです。
一般的な健康診断と異なり、人間ドックでは検査当日に医師から結果について説明があり、異常がみられたときは精密検査や改善方法についてアドバイスが受けられます。人間ドック受診後も、同じ医療機関で再検査や治療が受けられるなどサポート体制が整っているところを選ぶとよいです。40歳を超えると、生活習慣の影響が出始めたり、がん発症リスクが上昇したりするため、1年に1回のペースで人間ドックを受診しましょう。