生活習慣病の予防はとても重要ですが すべきことは実は単純で簡単
「生活習慣病」と聞くと、生活習慣が乱れて病気を発症すること、と簡単に捉えられるかもしれませんが、その考え方は少々危険です。
生活習慣病には次のような病気が含まれます(*1)。
■生活習慣病に該当する病気(健康日本21より)
・がん
・心臓病
・脳卒中
・糖尿病など
近頃では、がんも生活習慣病に含まれると位置づけています。生活習慣病というと、なんとなく誰でも罹かりそうな印象をを持たれるかもしれませんが、実はその先に、予想できないほどの肉体的、精神的、社会的なリスクが潜んでいることを知っている人はそう多くはないとおもいます。
生活習慣病の予防とは、そうしたリスクから自分や家族を遠ざけるために必要なことです。健康長寿を実現するためにぜひとも取り組んでいただきたいことです。
では、生活習慣病の予防に何をすればいいのでしょうか。その方法はとてもシンプルで、専門知識がなくてもできる簡単なことばかりです。
生活習慣病の概念
生活習慣病は以前は成人病と呼ばれていました。しかし「成人病」という名称には、40~60歳くらいで発症するリスクが高い病気という間違った認識が浸透していて、生活習慣が原因という概念が抜けていました。そこで1996年ごろから生活習慣病という言葉が使われるようになりました(*1)。
病気に関わる5つの生活習慣「食事、運動、休養、喫煙、飲酒」
生活習慣病に関係する生活習慣とは、食事、運動、休養、喫煙、飲酒の5つです。
つまり生活習慣病の正体は、食の問題、運動不足、睡眠不足、喫煙、過度な飲酒など、遺伝とは関係なく発症し得るもので、これまでの悪しき生活習慣が積み重なることで健康を維持できなくなり、次第に病気になってしまうというということなのです。
生活習慣に問題がないのに生活習慣病を発症することも
もちろん、生活習慣が決して良いとは言えない状態にありながら、生活習慣病をまったく発症しない方もいらっしゃいます。この逆で、生活習慣に何ら問題がないのに、その他の要因で生活習慣病を発症してしまう人もいますので注意が必要です。
例えば受動喫煙では、タバコを吸っていないのに肺がんを発症させるリスクがあります(*2)。肺がんを発症した人に対し「タバコを吸っていたのでは」と憶測することは正しいことではありませんし、この肺がんは環境要因が原因です。
また、冒頭で生活習慣病に該当する病気として紹介した糖尿病は、2型糖尿病と言われるもので、高カロリー食、高脂肪食、運動不足などが原因で、この結果、インスリンの作用不足が起こってきます。他方、1型糖尿病と言われるタイプのものは、免疫疾患に分類されます。
厚生労働省は次のように指摘しています。
「(生活習慣病の)発症には、生活習慣要因のみならず遺伝要因、外部環境要因など個人の責任に帰することのできない複数の要因が関与していることから、病気になったのは個人の責任といった疾患や患者に対する差別や偏見が生まれるおそれがあるという点に配慮する必要がある」
つまり、生活習慣病を発症する人に対して、生活習慣が乱れていると決めつけてしまうことに弊害があるということです。
生活習慣と生活習慣病の関係
生活習慣病を予防するために、具体的に何をすればいいのでしょう。
先ほど紹介した生活習慣病に関わる生活習慣のうち、食事、運動、喫煙、飲酒と、それに関する生活習慣病を紹介します(*1)。
生活習慣病に関わる生活習慣 | 生活習慣病 |
食事 | 糖尿病、肥満、高脂血症、高尿酸血症、循環器病、大腸がん、歯周病 |
運動 | 糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症 |
喫煙 | 肺がん、循環器病、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、歯周病 |
飲酒 | 肝硬変、痛風 |
上記の表に生活習慣病と言われるタイプの「心臓病」「脳卒中」の名称がありませんが、この2つの病気は上記の表のなかの糖尿病や高血圧、高脂血症などの病気が悪化した結果、罹患する疾患と言えます。。
生活習慣の予防には何をすればよいのか
生活習慣の予防としてやることは、次の5つです。
・栄養バランスが取れた食事を3食しっかり摂り、間食は極力回避する
・適度に運動する
・睡眠の質をよくする、しっかり休養する
・禁煙する
・過度な飲酒をしない
これらのやるべきことはとてもシンプルで、かつ簡単です。
しかし実行するとなると、それを習慣化できる人の方が実は少数です。
暴飲暴食は悪いと分かっていても、大切な仲間たちと飲食するのが好きな方もいるでしょう。そしてこれがストレス解消につながっている場合もあるはずです。このような場合には、頻度を調整し、食事やアルコールの量を少しずつ減らすだけでも生活習慣病のリスクは下げられます。
運動の場合は、体を動かすのが好きではない人にとっては、適度な運動ですら苦痛かもしれません。ただしこちらも考えようで、いきなりジョギングやウォーキングとなるとハードルが上がりますので、例えば、エスカレーターの代わりに階段を使うとか、1つ前のバス停で降りてみるなど、なるべく体を動かしてみようという意識に変えることで、習慣化に向けて一歩を踏み出しやすくなるでしょう。
休息には睡眠が一番ですので、睡眠環境を改善してみることをおすすめします。タバコを吸っている人は、他のストレス解消法を見つけて、早めにやめるのが賢明です。
まとめ~生活習慣病の予防にはリスクを減らす生活習慣を
生活習慣病を発症してしまうということは、人生における大きな損失です。言い換えれば、生活習慣病を回避できれば、人生に恵がもたらされると言えるでしょう。
重要なのでもう一度記しておきます。
・栄養バランスが取れた食事を3食しっかり摂り、間食は極力回避する
・適度に運動する
・睡眠の質をよくする、しっかり休養する
・禁煙する
・過度な飲酒をしない
生活習慣病を予防するためには、生活習慣病のリスクを軽減する生活習慣を確立することが大切です。我慢が多いとか不便などと考えず、将来への投資と前向きにとらえて、ぜひこの機会に身につけてください。