女性のための人間ドック「レディースドック」について
健康の維持や病気の早期発見のために、人間ドックは欠かせない存在です。最近、女性のための人間ドック「レディースドック」に注目が集まっています。
レディースドックではどのような検査で病気し、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
この記事では女性のための人間ドック「レディースドック」について、一般的な人間ドックとの違いや、費用の目安などを解説しています。レディースドックの受診を検討されている方や、検査項目の違いによるコース選びに悩まれている方は、参考にしてみてください。
女性のための人間ドック「レディースドック」とは
女性のための人間ドック「レディースドック」には、一般的な人間ドックでの検査項目に加えて、乳房や子宮、卵巣といった女性特有の器官に焦点をあてた検査項目が含まれています。さらに、ホルモンバランスの変化に伴って起きやすくなる骨粗しょう症や、甲状腺機能の異常についても検査できます。
ここでは、レディースドックをおすすめする理由や対象年齢について解説していきます。
レディースドックが女性におすすめの理由
日本人女性がなりやすいがんの種類の1位は乳がんです。次いで大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんとなっています。男性の場合、前立腺がんが最も多く、大腸がん、胃がん、肺がん、肝臓がんと続きます。
男性と女性ではなりやすいがんの種類が違うため、特に女性特有の器官に対するがん検診や詳しい検査を、定期的に受けることが重要です。
しかしながら、がん検診の受診率はあまり高くないのが現状です。検査による痛みや恥ずかしさなどのイメージから、なかなか病院に足が進まないという方も少なくありませんが、早期発見によって病気が治る可能性が高まるだけでなく、治療の選択肢も多くなります。
たとえば、乳がんや子宮がんが進行してしまうと切除を余儀なくされますが、早期に治療開始できれば器官を温存したまま治療ができるでしょう。
このように、女性特有の疾患はライフプランにも影響します。そのため、忙しく毎日を過ごしている方にこそ人間ドック・レディースドックの受診をおすすめします。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス:「最新がん統計」
レディースドックの検査項目
レディースドックの検査項目の特徴は、乳がんや子宮頸がんに対する検査が含まれている点です。骨密度検査や腫瘍マーカー検査、大腸がんや胃がんといった消化器系の検査など、乳がん・子宮頸がん以外に女性に多く見られる病気がないかを確認することもあります。
具体的には以下のとおりです。
- ● 身長・体重などの身体検査
- ● 血液検査
- ● 尿検査
- ● 腎機能・肝機能・甲状腺機能に関する検査
- ● 生活習慣病に対する検査
- ● 呼吸器系の検査
- ● 血圧・心電図検査
- ● 腹部エコー検査
- ● 乳がん・子宮頸がん検査
- ● 大腸がん・胃がん検査
- ● 骨密度検査
- ● 腫瘍マーカー検査
病院の設備やコースの種類によって、これらの検査が組み合わさっていたり、別のオプション検査が設けられていたりします。企業に勤めている方が年に一度受ける定期健康診断にはない詳しい検査も含まれているため、自分の体調や年齢・家族の病歴などから、気になる検査や受けておきたい検査が含まれているレディースドックを選択するようにしましょう。
女性は何歳から人間ドックを受けるべき?
一般的に、40歳以上の方は年に1回人間ドックを受診することが推奨されています。しかし、人間ドックは20歳から受診できます。
家族で生活習慣病(高血圧・脂質異常症・心筋梗塞・狭心症・高尿酸血症・成人型の糖尿病・アルコール性肝疾患・がん)に罹患した方がいる場合は、生活環境や遺伝によりリスクが高まるといわれているため、20代からでも定期的に受診しておくと良いでしょう。
また、女性特有の疾患として、子宮頸がんに関しては20~30代で、乳がんに関しては30代から発症数が急増するといわれています。このことから、若い方でも人間ドック・レディースドックを受けるべきといえます。
レディースドックで発見される疾患
レディースドックを受けることで、以下のような病気を発見できます。
- ● 乳がん
- ● 子宮頸がん
- ● 子宮筋腫や卵巣嚢腫
- ● 骨粗しょう症や生活習慣病
- ● 大腸がんや胃がんなどの消化器疾患
これ以外に一般の人間ドックと同様、貧血、腎臓や肝臓の機能障害などもわかります。ここでは、レディースドックの特徴とされる検査からわかる病気について解説します。
乳がん
乳がんに対しては、マンモグラフィ検査や乳房超音波検査をおこないます。
マンモグラフィ検査は、痛みを伴ったり、乳腺が発達している年齢の若い方は診断しにくかったりする場合もありますが、乳がんによくみられる石灰化を発見しやすいという特徴があります。
超音波検査では、小さなしこりを見つけやすく検査に痛みを伴わないメリットがありますが、石灰化の評価が難しい場合もあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、年齢によってどちらかを選択する場合と、両方の検査をおこなう場合があります。
乳がんを早期発見するために、30代からは乳房のセルフチェックをおこないながら、定期的乳がんの検査も受けておくと安心でしょう。ただし、家族・親族に乳がんの方が多い場合は、遺伝的要因で乳がんになるリスクが高い可能性もあるため、20代のうちから検査を受けるようにしましょう。
子宮頸がん
子宮頸がんには、「細胞診」と「HPV検査」の2種類の検査があります。どちらも、子宮頸部の細胞を採取して検査をおこないます。
「細胞診」では、採取した細胞を顕微鏡で確認し、がん細胞やがんの前段階の細胞も発見できます。
「HPV検査」では、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスへの感染を確認します。
どちらの検査も痛みはほとんどありません。子宮頸がんは、20代から発症数が増えていくため、年齢が若いうちから検査を受け始めるようにしましょう。
子宮筋腫や卵巣嚢腫
経腟超音波を用いて検査をおこなうことで、子宮筋腫や卵巣嚢腫の可能性のある病変を発見できます。
経膣超音波検査では、プローブと呼ばれる細い棒を膣の中に入れます。プローブの先から出る超音波が子宮や卵巣に反射することで、画像として子宮や卵巣の様子を確認できるのです。
プローブの直径は1.5cm〜2cm程度であり、個人差はありますが痛みはほとんど感じないでしょう。
腫瘍が見つかった場合、他の病気との鑑別のために、良性であっても腫瘍マーカー検査やMRI検査などの追加の検査が必要となる場合があります。
骨粗しょう症や生活習慣病
骨密度検査とは、X線を使って骨の量を調べる検査で、骨粗しょう症の診断に用いられます。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きをします。40代頃からエストロゲンの分泌が低下することで、骨が次第に弱くなり骨折しやすくなるのです。
骨粗しょう症になると、骨折のリスクが高くなり、転倒などに注意が必要です。自分の骨密度を知ることで、早期に骨粗しょう症の治療を開始できる可能性があり、とくに50代以降の女性に骨密度検査をおすすめします。
また、血糖値やコレステロール値の上昇、高血圧などの生活習慣病も発見できます。異常を指摘された場合は、専門の病院にて経過観察したり、薬による治療を受けたりすることになります。
大腸がんや胃がんなどの消化器疾患
大腸や胃の内視鏡検査をおこない、大腸がんや胃がんの可能性のある病変の有無を確認します。オプションとして、胃がんのリスク因子である「ヘリコバクターピロリ菌」の感染を調べることもあります。
女性が人間ドックを受けることのメリット
企業に勤めており年1回の健康診断を受けている方や、家事や子育てで手一杯となっている方は、人間ドックのために時間をつくることが難しいと感じるかもしれません。
しかし、自分だけでなく仕事や家族を守るためにも人間ドックは重要な役割を果たします。ここでは、女性が人間ドックを受けることのメリットについて解説します。
女性特有疾患の早期発見
乳がんや子宮頸がんは、病気の進行に応じてステージに分類されます。Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)と進むにつれて、より進行したがんであることを示しています。
国立研究開発法人国立がん研究センターにおいて、2014~2015年に乳がんの各ステージの5年生存率を調査しています。女性の乳がん患者の結果は以下のようになります。
ネット・サバイバル
(がんのみが死因となる場合の5年生存率) |
|
ステージ1 | 98.9% |
ステージ2 | 94.6% |
ステージ3 | 80.6% |
ステージ4 | 39.8% |
ステージが進むにつれて生存率が下がるのは言うまでもなく、ステージ1や2の段階では、生存率が94%以上と高くなります。このことから、できるだけ進行度の低い段階で早期発見することがいかに重要であるかがよくわかります。
同様に子宮頸がんでも、ステージ1の段階では94%以上ある5年生存率が、ステージが進むにつれて79.4%(ステージ2)、64.0%(ステージ3)、25.9%(ステージ4)と下がっていきます。子宮頸がんにおいては、ステージ1とステージ2の5年生存率も大きく差が開いており、より早期に発見できるよう定期的な検査が必要といえます。
疾患を早期発見することは、治療方法の選択肢を増やし、治療にかかる期間を短くすることにもつながります。治療後に生活の質が下がらないようにするためにも重要といえるでしょう。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん統計 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 乳がん」
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん統計 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 子宮頸がん」
専門医による説明
一般的な健康診断では、検査結果が自宅や職場に送られてきて、内容を自分で確認しなければならないケースがほとんどです。一方人間ドックでは、検査結果について専門医から説明を受けられる点もメリットの1つです。さらに。詳しい検査が必要な場合には専門病院を紹介してくれます。
また、マンモグラフィや超音波検査を用いた画像結果は、小さな病変を見落とさない画像診断力も重要です。小さな病変の段階で発見できれば、さらに精密検査を受けることで良性か悪性かの診断を受け、早期に治療を開始できるようになります。
画像結果を見ながら直接医師による説明を受けると、自分の目でも確認できるため、解説に対してより信頼が高まるでしょう。
専門家による健康へのアドバイスとサポート
女性向けの人間ドックをおこなっている病院には、医師以外にも栄養士やセラピストなどの専門家が在中しているケースがあります。
検査結果から、個別に自宅での食事において注意した方がよいポイントや、フレイル(加齢による身体の衰え)を予防するために手軽にできる体操など、健康に関するアドバイスを受けられます。
年齢を重ねるごとにあらわれてくる体の不調は、ホルモンバランスの乱れが原因であることも多く、適切なタイミングで治療することで体の調子が少しずつ整っていく場合があります。
「ただ疲れているだけだから少し休めば大丈夫」と思っていてもなかなか回復しない場合は、検査結果の説明を受けると同時に相談してみるのも良いでしょう。
レディースドックのコースと費用
レディースドックは、検査項目を組み合わせていくつかのコースを設けている病院が多く見られます。それぞれのコースと費用の相場について解説していきます。
女性特有疾患に特化したコース
レディースドックの代表的検査である、乳がん検査と子宮頸がん検査を中心としているコースがあります。一般的な健康診断の検査項目に加えて、マンモグラフィー検査や超音波検査をおこないます。費用相場は40,000~70,000円です。
ブライダルチェックになるコース
妊娠の妨げになる可能性のある疾患(子宮筋腫や卵巣嚢腫、卵管癒着など)がないかを調べたり、卵巣内に残っている卵子の数を推定し卵巣機能を予測したりします。
また、感染症の検査や風疹の抗体価を調べ、妊娠を希望する女性の健康をサポートするコースもあります。費用相場は20,000~40,000円です。
更年期におすすめのコース
ホルモンバランスの変化に伴ってあらわれる更年期の症状としては、のぼせやほてり、倦怠感、動悸、息切れなどがあげられます。40~50代に多く見られ、症状が徐々に進行すると自分で気づかない場合もあり、体調が優れずに辛い思いをし続けている方も少なくありません。
さらに年齢を重ねると、女性ホルモンだけでなく、甲状腺ホルモンにも異常がみられるようになったり、女性ホルモンの減少に伴う骨粗しょう症のリスクがあがってきたりします。
ホルモン検査や骨密度検査は、必須の検査ではないかもしれませんが、これから先の人生をストレスなく生活していくために定期的に受けておくのもおすすめです。病院によっては、通常の人間ドックやレディースドックにオプションで追加できるところもあるでしょう。費用相場は20,000~40,000円です。
消化器疾患に特化したコース
女性のかかりやすいがんには、大腸がんや胃がんもあります。女性特有の疾患ではないため一般的な人間ドックでも検査できますが、レディースドックのコースとして設けられているところもあります。胃カメラ検査と大腸カメラ検査をおこない、がんの早期発見に役立てています。費用相場は、70,000円前後です。
まとめ
女性のための人間ドック「レディースドック」について、検査項目や検査費用の相場、発見できる病気などについて解説してきました。
これから続く人生を安心して快適に過ごすために、心身の健康に関心を持って、定期的に自分の体の健康チェックをしていかなければなりません。病気の早期発見の重要性からも、レディースドックを受けるメリットは十分にあります。
さまざまな診療科の病院に行って検査を受けるのではなく、一度に婦人科や乳腺科などを含めた検査が可能なレディースドックは、忙しい毎日を送る女性の健康をサポートする大きな味方となります。ぜひレディースドックを受けることを検討してみてください。