健康経営とは?メリットや具体的な取り組みについてわかりやすく解説
中長期的な業績アップや経営基盤を安定させる戦略として、注目を浴びている健康経営。しかし、健康経営の重要性や実際の内容について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、健康経営の概要や企業で取り入れたときのメリット、具体的な取り組みについてお話しします。
健康経営について知りたい方、またはこれから健康経営を始めたいと思っている経営者の方は、具体的な始め方までわかる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
健康経営とは
健康経営は、企業が従業員の健康を戦略的に管理し、企業全体の生産性や業績向上を目的とした経営手法です。
今まで従業員の健康管理は、それぞれ個人でおこなうものとされていました。
しかし、現在は企業側で従業員の健康保持・増進に向けて取り組むことで、将来的に企業や社会全体でさまざまなメリットが得られることが明らかになっています。
企業で健康経営を取り入れると、以下のような問題の解決につながります。
- ・従業員が疲れていて社内に活気がない
- ・従業員の高齢化が進んでいるのに、若い世代が育たない
- ・病欠する従業員が多く、業務が回らない
健康経営によって従業員の健康保持・増進に向けた投資(健康投資)をすると、組織の活性化や生産性の向上につながり、長期的に見て業績や株価のアップが期待できるでしょう。
また、従業員の健康状態が維持できることで、国民全体のQOL(生活の質)の向上や医療費の削減になって、社会問題の解決にもつながります。
健康経営の考えに基づいた取り組みをおこなう企業が、大手企業を中心に増えてきています。
健康経営が注目される背景
健康経営が注目されている理由は「少子高齢化による生産年齢人口の減少」「従業員の高齢化」「国民医療費の負担増加」などです。
日本の生産年齢人口は1995年の約8,700万人を境に減少が続いており、2015年には約7,700万人となっています。
生産年齢人口に人数減少はこの先も進み、2060年には約4,800万人に至ることが見込まれています。
このままだと社会保険制度を支えている労働の主体になる人口が減って、国民医療費の負担も増えていくでしょう。
また、高齢化に伴って、2025年4月から定年退職の年齢が60歳から65歳に引き上げられることが決定されています。
今後は従業員の高齢化が進むことも予想されるため、中高年の従業員でも健康に働ける環境づくりは欠かせません。
これらの理由から健康経営を取り入れて、将来の労働環境の変化に備える企業が増えてきています。
経済産業省 ヘルスケア産業課:「健康経営の推進について」
健康経営の顕彰制度
国や政府は、優良な健康経営を実践する法人を認定して顕彰する取り組みをおこなっています。
2014年から健康経営に優れた上場企業を対象に「健康経営銘柄」を選定することが決定されました。
また、2016年から「健康経営優良法人認定制度」が推進され、大規模法人部門の上位層に「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位層に「ブライト500」が付加されることになりました。
これらの名称で顕彰されると、企業のPR活動や自治体の公共調達における加点、金融機関の低利融資などの優遇措置などが受けられる利点があります。
健康経営の顕彰制度は、企業の経営理念や組織体制、制度・施策の実行、評価・改善などが評価されて認定されます。
健康経営銘柄
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場会社から選定された、健康経営に優れた法人のことです。
企業価値の向上を長期的に重視している法人として評価されることで、法人の健康経営の取り組みを促進させる目的があります。
健康経営銘柄に認定された法人は、以下の役割が求められます。
- ・アンバサダー的な立場として健康経営を普及拡大させる
- ・ステークホルダー(※)に対して健康経営による生産性や企業価値への効果を積極的に発信する
(※)ステークホルダー:企業を経営するうえで、直接的または間接的に影響を受ける関係者のこと。クライアントや従業員、株主、金融機関なども含まれる。
健康経営優良法人・ホワイト500
健康経営優良法人とは、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから、健康経営に取り組む姿勢に対して評価を受けている法人のことです。
大規模法人のなかで上位500社に入ると、ホワイト500の名称が付加されます。
大規模法人における健康経営優良法人は、グループ会社全体や取引先、地域の関係企業、顧客、従業員の家族などに健康経営の考え方を普及していく役割が求められます。
健康経営優良法人・ブライト500
健康経営優良法人のなかでも、中小規模法人のなかで上位500社に入るとブライト500として顕彰されます。
中小規模法人の健康経営優良法人は、地域における健康経営拡大のために、自社の健康課題に応じた取り組み事例の発信などをする役割が求められます。
健康経営のメリット
企業で健康経営を取り入れるメリットは以下の4つです。
- ・従業員の健康状態の改善
- ・企業ブランドイメージの向上
- ・労働生産性の向上
- ・優秀な人材の確保
それぞれ詳しく説明していきます。
従業員の健康状態の改善
健康経営を取り入れると、従業員が健康に働き続けやすいことがメリットです。
極力残業しない環境や、健康管理に特化した研修を取り入れるなど、従業員一人ひとりの健康に対する意識が上がることで、健康維持・増進が促されます。
健康に対する取り組みを日頃から意識することが病気の予防にもつながるため、結果的に医療費の削減にもなります。
企業ブランドイメージの向上
優良な健康経営を実践する法人として顕彰を受けると、従業員や取引先から信頼されやすくなります。
金融機関や投資家、自治体から評価されて取引が円滑に進んだり、消費者から商品やサービスを選好されたりする場面も増えるでしょう。
労働生産性の向上
健康経営は、組織の活性化とともに労働生産性のアップも期待できます。
従業員の自己研鑽に配慮された支援があると、一人ひとりのモチベーションも上がるでしょう。
健康増進につながるグループ活動を取り入れることで、従業員間のコミュニケーションの機会が増え、生産効率が上がったケースもあります。
優秀な人材の確保
健康経営を取り入れると、企業の優秀な人材の確保につながります。
健康経営を取り入れている企業として認知度が増すと学生へのイメージが上がり、就活生の増加や内定後の辞退率の減少につながるからです。
また、働きやすい環境が整備されて離職率を低下させることもメリットです。人材不足が続く現在では、働き手の生活にも配慮することで、優秀な人材が会社に留まるように工夫することが必要といえます。
健康経営の始め方
自社で健康経営を始めたい場合は、以下の手順を追って計画を進めましょう。
- ・加入している保険者に相談する
- ・社内外へ健康宣言を実施する
- ・社内で健康経営を実施できる環境を整える
- ・具体的な健康経営の目的と施策を設定して実施する
- ・実際におこなった取り組みを評価して次につなげる
健康経営を始め、施策を継続させるためには、保険者への相談や社内外への共有などの下準備と、次の取り組みにつながるための評価が重要です。
以下でそれぞれ詳しく説明していきます。
加入している保険者に相談する
健康経営を始めたい場合は、まず企業で加入している保険者に相談してみましょう。
協会けんぽや健康保険組合は、健康経営の専門知識を備えているため、窓口に相談すると的確なアドバイスをもらえます。
健康経営優良法人や健康宣言事業の参加を検討したいのであれば、その旨も相談しましょう。
社内外へ健康宣言を実施する
企業内で健康経営に取り組む姿勢を、社内の従業員や社外の関係者に発信します。
中小企業事業者は、協会けんぽなどの医療保険者が実施する健康宣言事業にエントリーする必要があります。
社内で健康経営を実施できる環境を整える
企業内で健康経営を実施できる環境を整えます。
経営層で健康経営に取り組む必要性を共有したり、担当部署を設定したりして、これから健康経営を実際に始めるための準備をします。
具体的な健康経営の目的と施策を設定して実施する
企業で健康経営に必要な対策を具体的にしたうえで、実行してみましょう。
実行する前に企業内の健康課題を明確にして検討し、目標と施策を設定することが大切です。
実際におこなった取り組みを評価して次につなげる
健康経営による施策を実行したら、経営層や担当部署で効果を確認して評価しましょう。
実行した内容を評価して終わるのではなく、次の取り組みに活かすことが重要です。
健康経営の具体的な取り組み
大規模・中小規模の法人における実際の健康経営の取り組みについて紹介します。
実際の取り組みについてイメージがつかない方、何を取り入れたら良いか迷う方は、ぜひ参考にしてみてください。
健康意識の向上につながった事例
- ・「3食の食事」や「毎日の睡眠時間」などの具体的な健康項目を従業員に提示して、定められた条件の達成者にはQUOカードを贈呈する。
- ・第1・3水曜日を早く帰って健康に良いことをする「健康推奨日」として設定し、同日に社内でプロの鍼灸師の施術が受けられる体制も整える。
- ・姿勢の改善や腹囲の減少につなげるための姿勢矯正クッションを導入し、業務中に従業員に使用してもらう。
- ・普段から野菜の摂取を習慣づけるために、企業の一部費用負担のもと、仕出し弁当に生野菜を付けて提供する。
- ・ヘルシー弁当の提供や、血圧測定を習慣化させる事業を開始することで、病気の予防を重視した取り組みをおこなう。
職場の生産性向上につながった事例
- ・資格取得のための教材費や受験料、学会の参加費や旅費などの費用を企業側で支援して、従業員のモチベーションの向上につなげる。
- ・SNSによる健康経営に関する発信を社内に浸透させるために、代表者だけでなくほかの従業員にも担当してもらう。
- ・健康白書やメルマガによる情報提供で、朝食欠食対策をおこない、若年層の集中力アップにつなげる。
- ・ノート型パソコンに外付けモニターを取り付けることで、業務中の眼の負担が減り、VDT症候群(※)の予防につなげる。
- ・有給取得の推進や昼寝エリアの設置によって、働きやすく十分な休憩が取れる環境をつくる。
(※)VDT症候群:パソコンやタブレットなどの出力機器(VDT:Visual Display Terminal)を長時間使うことで起こる眼や身体の筋肉、精神的な症状のこと。
人材の採用・定着につながった事例
- ・育児と両立できるよう、就業時刻の15分前に帰宅できる仕組みや、年次有給休暇を入社時に12日間付加する仕組みを導入する。
- ・地元の講演や新聞などの取材に積極的に応じて、健康経営に取り組んでいることをPRする。
- ・認知症になった家族の介護を両立できるよう、従業員の相談に応じられる体制や、認知症サポーター養成講座を導入する。
- ・ブライト500取得企業であることをアピールすることで、就活生の応募人数の増加につなげる。
- ・ストレスマネジメント向上に向けたセミナーを実施し、うつ病などによる休職者や退職者を減らす。
企業業績の向上につながった事例
- ・関連企業の4社で合同健康研究会を設立し、健康増進の共通の課題を話し合うことで、健康経営の新たな取り組みを導入する。
- ・健康経営に積極的に取り組んでブライト500に認定されることで、ほかの企業からの依頼増加につなげる。
- ・他企業の社長や健康経営の推進者とつながりをもち、SDGs17パートナーシップ(※)の構築につなげる。
- ・テレビや新聞の健康経営に関する取材を受け入れることで社外への認知を拡大させ、新たな事業進出につなげる。
- ・前年度を上回る健康経営の目標を設定して取り組むことにより、企業全体の経営課題の解決につなげる。
(※)SDGs17パートナーシップ:誰に対しても持続可能な未来を実現するために、政府や企業、学専門家、個人などが協力して取り組むことの重要性を示した目標のこと。
まとめ
健康経営は、企業が従業員の健康に投資をすることで、企業全体の業績を向上させる戦略です。
日本の生産年齢人口が徐々に減少していることや、従業員の平均年齢が上がったことによって重要視されるようになりました。
企業に健康経営を取り入れると、従業員の健康状態の改善だけでなく、企業のイメージや労働生産性の向上、優秀な人材の確保などにつながります。
健康経営を始める場合は、加入している保険者に相談した後、社内外へ情報を共有し、実際に考えた施策を実施して評価してみましょう。
会社の経営を維持するためには、従業員の健康はもちろん、経営者や役員が健康であることも欠かせません。
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