人間ドックのオプションはどう選ぶ?年代別におすすめの検査もご紹介
人間ドックをおこなっているほとんどの医療機関では、基本的な検査項目のほかにもさまざまな「オプション検査」を提供しています。
毎年人間ドックを受診している方や、健康診断からの切り替えを検討されている方のなかには、オプション検査とはどのような内容なのか、また、追加するべきなのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、人間ドックのおもなオプション検査の項目や選び方を解説するとともに、年代別におすすめの検査をご紹介していきます。
人間ドックのオプション検査とは
人間ドックには、基本的な検査項目のほかに任意で追加できるオプション検査があります。
ここでは、人間ドックの基本検査とオプション検査の項目、また、近年多くの医療機関で提供されている専門ドックについて説明していきます。
人間ドックの基本検査項目
人間ドックの基本検査項目は、以下のとおりです。
- ・身体計測
- ・血圧
- ・心電図
- ・眼・聴力
- ・呼吸機能検査
- ・胸部X線
- ・上部消化管X線
- ・上部消化管内視鏡
- ・腹部超音波
- ・血液検査
- ・尿検査
- ・便検査
- ・内科診察
人間ドックの基本検査項目は、医療機関や日程(1日または2日間)によって異なる場合がありますので、申し込みをする前に確認をしておきましょう。
人間ドックのオプション検査と専門ドック
人間ドックのオプション検査の目的は、基本検査項目だけでは発見できない疾患の有無やリスクを早期に見つけだすことです。公益社団法人 人間ドック学会・予防医療学会では、1日ドックの場合に推奨するオプション検査として、以下の6項目を挙げています。
- ・上部消化管内視鏡
- ・乳房診察+マンモグラフィ
- ・乳房診察+乳腺超音波
- ・婦人科診察+子宮頸部細胞診
- ・PSA検査
- ・HCV抗体検査
出典:日本人間ドック・予防医療学会HP「【参考】2020年度 基本検査項目」」
近年では、特定の部位の疾患をより詳しく調べるため、複数の検査をセットにして「専門ドック」を提供している医療機関もあります。(例:脳ドック・心臓ドック など)
また、基本検査項目に女性向けのオプション検査を追加したレディースドックなど、独自のコースを設定しているケースも多くみられます。
人間ドックのオプション検査の選び方
人間ドックでは、基本検査とオプション検査をあわせると50~100項目の検査を提供しています。どのようにオプション検査を選べばよいのかご紹介していきます。
年代や性別に応じて選ぶ
一般的に、30歳以降は人間ドックを受診することが推奨されています。しかし、発症リスクが高い病気は、年齢や性別によって異なります。
たとえば、子宮頸がんは20代後半から発症することが多いため、20代の女性であっても、早期発見のためには定期的な検査(子宮頸部細胞診)が必要でしょう。一方で男性は、50代になると前立腺がんが急激に増加する傾向にあるため、人間ドックの受診時にPSA検査をオプションとして追加することをおすすめします。
このように、人間ドックのオプション検査は、自身の年齢や性別に応じて選ぶことが大切です。
不安がある部位のオプション検査を選ぶ
「自覚症状はないけれど不安を感じている部位がある」という方は、オプション検査で詳しく調べることができます。また、喫煙習慣のある方は胸部CTや喀痰細胞診、動脈硬化が気になる方は脳ドックや心臓ドックを追加するなど、ご自身の生活習慣を考慮して選択してもよいでしょう。
遺伝リスク(家族歴)のある病気を調べるオプション検査を選ぶ
特定のがんや遺伝性の病気を発症した近親者が複数いる場合、同じ病気に罹患する可能性が高くなると考えられます。そのような方は、人間ドックの受診時にPET検査・腫瘍マーカー・遺伝子検査などのオプション検査を受けることで、ご自身の発症リスクを評価することができます。
男性におすすめのオプション検査(年代別)
ここからは、男性の年代別におすすめのオプション検査をご紹介していきます。
【30代男性】おすすめのオプション検査
30代の日本人男性で死亡率の高いがんは、胃がんと大腸がんです。
そのため、30代以上の男性には、人間ドックの受診時に胃と大腸のオプション検査を受けることをおすすめします。
- ・胃 胃内視鏡検査・胃がんリスク検査(ABC検査)
- ・大腸 大腸内視鏡検査・大腸CT検査 など
また、飲酒・喫煙が過多であると自覚している方は、生活習慣病である心疾患や脳血管疾患のリスクを評価するため、心臓や脳の検査を追加するとよいでしょう。
- ・心臓 心臓MRI検査・心臓超音波(エコー)検査 など
- ・脳(頭部) 頭部MRI/MRA検査・頸動脈超音波(エコー)検査 など
【40代男性】おすすめのオプション検査
40代になると、胃がん・大腸がんのほかにも肝臓がん・膵臓がん・肺がんの死亡率が上昇してきます。30代の男性におすすめしたオプション検査に加えて、肝臓・膵臓・肺の検査の追加も検討しましょう。
- ・肝臓/膵臓 上腹部CTまたはMRI検査・上腹部超音波(エコー)検査
- ・肺 胸部CT検査・喀痰細胞診 など
また、生活習慣の健康状態に対する影響があらわれ始める年代でもあるため、心臓ドックや脳ドック、全身の疾患をスクリーニングするPET検査も選択肢となります。
【50代以上の男性】おすすめのオプション検査
日本人男性の場合、50代になると前立腺がんの罹患率が急激に高くなります。30代・40代でおすすめした胃・大腸・肺・肝臓・膵臓・心臓・脳のオプション検査に加えて、前立腺がんの検査も追加しましょう。
- ・前立腺 PSA検査
PSA検査では、高い精度で前立腺がんのリスク評価をすることができます。採血だけで調べられる検査ですので、50代以上の男性には人間ドック受診時に必ず受けていただきたいオプション検査のひとつです。
また、50代以降はがんだけではなく、心臓病・脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)の発症率も高くなります。予防・早期発見のために、定期的にオプションとして心臓ドックや脳ドックを受診するようおすすめします。
女性におすすめのオプション検査の選び方(年代別)
つづきまして、女性におすすめのオプション検査を年代別にご紹介していきます。
【20~30代女性】おすすめのオプション検査
20代から30代の若い年代の女性であっても、発症のリスクが高いことで知られているのが乳がんと子宮頸がんです。がんを未然に防ぐためには、20代後半からは乳房、30代からは乳房に加えて子宮のオプション検査を定期的に受けたほうがよいでしょう。
- ・乳房 乳房超音波(エコー)検査・マンモグラフィ(乳房X線検査)
- ・子宮 HPV(ヒトパピローマウイルス)検査・子宮頸部細胞診
なお、乳房の検査としてはマンモグラフィを用いることが一般的ですが、20代・30代の女性は乳腺が発達していてがんとの見分けがつきにくいため、可能であれば超音波(エコー)検査を選ぶことをおすすめします。
【40代女性】おすすめのオプション検査
日本人女性は、40代で乳がん発症のピークを迎えるとともに、胃がん・大腸がんのリスクも高くなってきます。乳房・子宮の検査に加えて、胃・大腸の検査をオプションとして追加することを検討しましょう。
- ・胃 胃内視鏡検査・胃がんリスク検査(ABC検査)
- ・大腸 大腸内視鏡検査・大腸CT検査 など
女性は50代にはいって閉経を迎えると、骨密度が低下して骨粗しょう症を発症するケースが多くみられます。そのため、骨量の推移が把握できるよう、骨量が減少する前の40代から骨密度検査を受けておくとよいでしょう。また、がん発症率が高くなりはじめる年代でもあるため、全身のがんのスクリーニングと早期発見のためのオプション検査として、PET検査の追加もぜひご検討ください。
【50代以上の女性】おすすめのオプション検査
50代以降になると多くの女性は閉経を迎えますが、閉経により子宮体がんの罹患率が増加することがわかっています。そのため、20代・30代・40代でおすすめしたオプション検査のほかに、子宮に関しては以下の検査もおこなうことをおすすめします。
- ・子宮・周囲部位 HPV(ヒトパピローマウイルス)検査
- ・子宮頸部細胞診 経腟超音波(エコー)検査・子宮体部細胞診
医療機関によっては、人間ドックの基本検査項目に婦人科系のオプション検査が含まれた「レディースドック」などのコースが用意されていますので、受診の際に確認してみましょう。
部位別のおもなオプション検査と発見できる病気
ここからは、部位別のおもなオプション検査と発見できる病気についてご紹介していきます。医療機関によって提供しているオプション検査は異なるため、人間ドックを申し込む際は、公式ホームページやパンフレットなどで希望するオプション検査の有無を確認しておきましょう。
頭部のオプション検査
頭部のオプション検査の目的は、脳血管疾患の有無やリスクとなる状態を調べることです。
高血圧・糖尿病などの生活習慣病、またはそのリスクが高いと診断された方、頭痛の症状がある方、心筋梗塞や狭心症の既往歴がある方にもオプションとして追加することをおすすめします。また、これらの検査を組み合わせた「脳ドック」を提供している医療機関もあります。
- ・検査
頭部MRI/MRA検査
頸動脈超音波(エコー)検査
簡易認知機能検査 など
- ・発見できる病気
脳卒中(くも膜下出血・脳出血・脳梗塞など)
破裂脳動脈瘤
脳腫瘍
認知症(認知機能検査が提供されている場合)
心臓(循環器系)のオプション検査
心臓の病気は突然死を引き起こすだけではなく、脳梗塞をはじめとした病気のリスク要因にもなります。自覚症状がないまま進行するケースも多いため、心臓病の家族歴がある方や生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症)の方、飲酒喫煙の習慣がある方などはオプションとして選択しておくとよいでしょう。
- ・検査
心臓MRI検査
心臓CT検査(冠動脈CT検査)
心臓超音波(エコー)検査
頸動脈超音波(エコー)検査
血圧脈波検査 など
- ・発見できる病気
心筋梗塞
狭心症
心臓弁膜症
不整脈
心筋疾患
動脈硬化 など
肺(呼吸器系)のオプション検査
肺(呼吸器)のオプション検査は、おもに肺がんを発見することを目的におこないます。人間ドックの基本検査項目では見つけることの難しい肺がんを、いくつかの検査を組みあわせることで早期発見できるよう調べます。特に自覚症状が無い場合でも、喫煙歴が長い・家族に喫煙者がいる・呼吸器系のがんの家族歴があるという方は、ぜひオプション検査に加えてください。
- ・検査
肺機能検査
胸部CT検査
喀痰細胞診
腫瘍マーカー検査 など
- ・発見できる病気
肺がん
肺気腫
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺炎
気管支炎 など
胃のオプション検査
胃のオプション検査のおもな目的は、胃がん・胃ポリープ・食道がんを発見することですが、将来的に胃がんを発症するリスクについても調べることができます。
過度の飲酒の習慣がある方、食生活の乱れを自覚している方、40歳以上でまだ胃の検査を受けたことがない方に受けていただきたいオプション検査のひとつです。
- ・検査
胃内視鏡(胃カメラ)検査
胃がんリスク検査(ABC検査)など
- ・発見できる病気
胃がん
胃ポリープ
胃潰瘍
十二指腸潰瘍
食道がん
食道炎 など
肝臓・腎臓のオプション検査
肝臓がんや膵臓がんは早期に発見することが難しいことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。過度の飲酒や喫煙・肥満・肝炎の既往歴・生活習慣病などにあてはまる方は、人間ドック受診時に肝臓・腎臓のオプション追加を検討してください。
- ・検査
上腹部CT/MRI検査
腹部超音波(エコー)検査
腫瘍マーカー検査 など
- ・発見できる病気
肝臓がん
膵臓がん
腎細胞がん
肝硬変
肝炎
胆石
膀胱結石 など
大腸のオプション検査
健康診断や人間ドックの基本検査項目には、大腸の異常を調べる便潜血検査が含まれています。通常は便潜血が陽性となった場合に用いられる精密検査を、人間ドックのオプションとして追加することも可能です。特に、便通に異常がみられる方、痔の症状がある方、腹部膨満感がある方などには、大腸がんのリスク評価・早期発見のために必要なオプション検査です。
- ・検査
大腸内視鏡(大腸カメラ)検査
大腸CT検査 など
- ・発見できる病気
大腸がん
大腸ポリープ
潰瘍性大腸炎 など
乳房のオプション検査
乳房のオプション検査の目的は、乳がんの発見です。これまでもご説明してきたとおり、乳がんは20代後半から発症率が増える傾向がみられます。
そのため、年齢を問わず、人間ドック受診の際はオプションに追加することをおすすめします。また、人間ドックの基本検査項目に女性向けのオプション検査を組み合わせた「レディースドック」を受診してもよいでしょう。
- ・検査
マンモグラフィ(乳房X線検査)
乳腺超音波(エコー)検査
PEM検査(乳房専用PET検査) など
- ・発見できる病気
乳がん
乳腺症
乳腺のう胞 など
子宮・卵巣のオプション検査
子宮頸がんは20代の若い女性でも発症することがあり、さらに50歳以上になると子宮体がんを発症するリスクが高くなります。子宮や卵巣のがんを早期に発見するには、年齢に応じてオプション検査を選ぶ必要があります。人間ドックの申し込みの際に、乳房のオプション検査と同じように「レディースドック」のような女性向けコースを選択する方法もあります。
- ・検査
子宮頸部細胞診
HPV検査
経腟超音波(エコー)検査
子宮体部細胞診 など
- ・発見できる病気
子宮頸がん
子宮体がん
卵巣がん
卵巣嚢腫
子宮内膜症
子宮筋腫 など
前立腺のオプション検査
日本人男性のがん罹患率の1位は前立腺がんです。日本泌尿器学科では、自治体のがん検診では50歳以上、人間ドックでは40歳以上の男性に検査を受けることを推奨しています。
前立腺がんは進行が比較的ゆるやかであるため、早期に発見することで治癒が見込めるがんです。人間ドック受診時には、ぜひオプション検査として追加しておきましょう。
- ・検査
PSA検査
- ・発見できる病気
前立腺がん
前立腺肥大症
まとめ
本記事では、人間ドックのオプション検査の項目や選び方、年代別におすすめの検査についてご紹介してきました。
人間ドックでは、基本検査項目にオプションを加えると約50~100項目の検査を提供しています。そのため、多くの検査のなかから自分にあったオプションを選ぶことは、精度の高い検査結果を得るための重要なポイントになります。
オプション検査を選ぶ際には、性別・年齢のほかにも、現在の健康状態や生活習慣・家族歴などのリスク要因も考慮する必要があります。これらの条件を踏まえてオプションを選択することで、人間ドックの受診がより有意義なものになるでしょう。