健康管理とは?健康管理に努めるうえで必要なことやポイント、重要性などを解説
企業は従業員が安全・健康に働けるよう配慮する必要があり、近年は組織全体で従業員の健康管理を実施する企業も増えています。「従業員の健康管理に努めたい」と考えていて、健康管理の取り組みを検討している経営者の方も多いのではないでしょうか。
健康管理をおこなうことは、従業員だけではなく企業にとっても多くのメリットがあります。取り組みの効果を高めるために、ポイントを押さえて健康管理を実施しましょう。
今回は従業員の健康管理を考えている企業経営者の方に向けて、健康管理に努めるうえで意識したいポイントや具体的な取り組みを解説します。
健康管理とは
健康管理とは、健やかな生活を送れる状態を保つために、心身の健康状態を管理することです。企業経営における健康管理は、健康診断を通じて従業員の健康状態を把握し、病気予防や健康増進に必要な措置を講じることを指します。
健康管理は、業務中の事故防止と従業員の健康維持に必要とされる「労働衛生の3管理」の1つです。
健康管理 | 健康診断を実施し、従業員の健康を維持できるよう管理する。 |
作業環境管理 | 作業環境中に存在する有害因子の状態を把握し、できる限り良好な状態となるよう管理する。 |
作業管理 | 作業方法などを管理し、従業員の負担を軽減できるよう必要な措置を講じる。 |
企業における健康管理というと、一昔前は健康診断のみを実施して、その後の病気予防や健康維持の取り組みは従業員個人が行うものという考え方が一般的でした。
しかし、近年では従業員の健康維持・増進も企業の大切な取り組みであるという考え方が広がり、従業員の健康管理が重要視されるようになっています。
従業員の健康管理が重要視されている理由
健康管理が重要である理由は、労働に関するいくつかの法律で従業員の健康管理が企業に義務付けられているためです。
労働契約法第五条では、従業員が生命や身体等の安全を確保しながら労働できるよう、企業が必要な配慮をすることを定めています。
参考:e-Gove-Govポータル「労働契約法」
また労働安全衛生法第七章では、従業員の健康の保持増進をするために企業がおこなうべき措置を定めています。健康管理を軽視することは労働に関する法律に抵触するため、従業員の健康管理は企業が取り組むべきことです。
参考:e-Govポータル「労働安全衛生法」
さらに近年は「健康経営」や「ウェルビーイング経営」といった経営手法が注目を集めています。
健康経営とは、従業員が健康的に働くことが生産性向上につながるという考え方にもとづき、従業員の健康管理に投資をしていく取り組みです。
もう1つのウェルビーイング経営とは、従業員が人生の充実感や仕事へのやりがいを持てるよう、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を目指す取り組みを指します。
健康経営もウェルビーイング経営も従業員の健康状態に着目する経営手法であり、国の施策や取り組みによって推進されていることが特徴です。たとえば経済産業省は健康経営に優れている企業を「健康経営銘柄」に選定し、長期的な視点での企業価値向上を重視する投資家に紹介しています。
健康経営やウェルビーイング経営を実現するには、企業による健康管理の実施が必要です。従業員の健康問題は社会的な関心が持たれており、企業が社会から求められている役割を果たす上で健康管理は重要性が高まっています。
従業員の健康管理をおこなうメリット
企業が従業員の健康管理をおこなうことには、従業員の健康維持から業務パフォーマンスの向上、企業のイメージアップまでさまざまなメリットがあります。健康管理の取り組みを検討している経営者の方は、まずは健康管理のメリットを把握しておきましょう。
以下では従業員の健康管理をおこなう5つのメリットを解説します。
従業員が健康な状態で、生き生きと働ける
健康管理をおこなうと従業員の健康維持・増進ができるようになり、従業員が健康な状態で生き生きと働けます。働きやすい労働環境は従業員のウェルビーイング実現につながり、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上が期待できることがメリットです。
従業員満足度や従業員エンゲージメントが高くなると、従業員が企業に対して抱く愛着や忠誠心も高まります。生産性の向上や人材定着を図るうえで、従業員満足度と従業員エンゲージメントの高さは重要なポイントです。
また、企業が積極的に健康管理に取り組むと、従業員自身も健康への興味関心を持ちやすくなります。多くの従業員が主体的に健康管理をするようになり、従業員の健康状態をさらに向上できるでしょう。
業務パフォーマンスが向上する
健康管理によって従業員の健康維持・増進を図ると、健康な従業員が多くなって業務の生産性を一定に保ちやすくなります。
従業員の健康状態は業務効率や成果に影響する要素です。たとえば製造業において1人の従業員が体調不良になると、生産ラインが停滞したり、他の従業員に負担がかかって体調不良が続出したりといった影響があります。業務の生産性を一定に保つには、従業員の健康状態に配慮することが大切です。
また、従業員の健康管理をおこなうと職場内の労働災害を抑止しやすくなり、リスクマネジメントができるメリットもあります。
従業員の離職防止につながる
従業員の健康状態に無関心であったり、職場環境が従業員の健康を損なうものであったりする企業では、従業員の離職が増加するおそれがあります。従業員の心身に多くの負担をかける職場は働きにくく、企業への愛着も持ちにくいためです。
従業員の離職が続出している場合は、従業員の健康状態の悪化を疑って健康管理をおこなってみましょう。
健康管理によって従業員の健康状態が改善され、働きやすい職場環境になれば、従業員が定着することが期待できます。職場内の人間関係が良好になり、業務に関する知識・ノウハウが承継されれば、従業員1人ひとりが働きやすさを感じられます。
優秀な人材を確保しやすくなる
健康管理は従業員の離職防止につながるだけではなく、採用活動時に優秀な人材を確保しやすくなるメリットもあります。働きやすい職場かどうかは求職者にとって重要な問題であり、就職先を決める要因の1つになるためです。
特に優秀な人材は「仕事にやりがいを感じられるか」「ワークライフバランスを保てるか」を重視する傾向があります。健康管理は従業員を大切にしていることを意味するため、優秀な人材の応募を期待できるでしょう。
また、従業員の健康管理をおこなっていることは、経営上の取り組みとして企業ホームページや採用コンテンツ上に掲載できます。採用活動における自社の強みを1つ増やせることも、優秀な人材の確保につながるポイントです。
企業のイメージアップができる
健康管理の取り組みをホームページなどで社外に発信することで、企業のイメージアップができます。株主・取引先・消費者といったステークホルダーが自社に良いイメージを持つことで、経営の安定化や売上向上といったメリットも得られるでしょう。
特に健康経営やウェルビーイング経営の一環として健康管理をおこなっていれば、健康管理によるイメージアップの効果をさらに高められます。健康経営に積極的に取り組むと健康経営銘柄や健康経営優良法人に認定されたり、メディアで紹介されたりする可能性もあり、企業の認知度向上が期待できます。
従業員の健康管理に努めるときのポイント
企業が従業員の健康管理をおこなうときはいくつかのポイントがあります。取り組みによってかかるコストや効果には違いがあるため、自社に適していて、かつ長期的に実施できるものを選択しましょう。
最後に、従業員の健康管理に努めるときに押さえるべきポイントと具体的な取り組みを紹介します。
健康診断を実施する
従業員の健康管理として、健康診断の実施は最も一般的に行われている取り組みです。職場における健康診断は労働安全衛生法第六十六条で規定されており、健康診断は企業の義務です。
参考:e-Govポータル「労働安全衛生法」
健康診断は大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があります。
一般健康診断は、1年以内ごとに1回おこなう定期健康診断が広く知られています。その他にも雇入時に行う健康診断、特定業務の従事者や海外派遣労働者を対象とした健康診断などが該当する健康診断です。
一方、特殊健康診断は有害な業務に従事する従業員を対象に行われます。
企業は定期健康診断を実施する以外にも、自社の従業員の業務内容に沿った健康診断を行わなければなりません。
長時間労働の是正に取り組む
職場内で従業員の長時間労働がたびたび発生している場合は、長時間労働の是正に取り組みましょう。
厚生労働省は時間外労働の上限を原則として月45時間、年360時間と定めています。特別の事情により労使が合意した場合であっても、以下のように守るべき項目が設定されており、違反すると罰則が科されるおそれがあります。
特別の事情がある場合に守るべき項目
- ・時間外労働が年720時間以内である
- ・時間外労働と休日労働を合計して月100時間未満である
- ・時間外労働と休日労働の合計は、2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均のすべてで1か月あたり80時間以内である
- ・時間外労働が月45時間を超えることが、年6か月以内である
参考:厚生労働省ホームページ「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
長時間労働を是正するには、従業員の労働時間の把握と、労働時間の短縮ができる仕組み作りが必要です。勤怠管理システムなどの導入によって労働時間を正確に把握するとともに、フレックスタイムや時短勤務の導入を進めましょう。
働きやすい職場環境を整備する
従業員の健康維持・増進を実現するには、働きやすい職場環境を整備することも重要です。働きやすい職場環境は従業員に身体的・精神的な負担がかかりにくく、心身の健康状態を改善することが期待できます。
従業員にとって働きやすい環境を整備するには、下記のポイントを押さえましょう。
- ・作業場の日当たりや明るさに問題がないか
- ・室内の温度や湿度は適切か
- ・1人あたりの作業スペースは十分に確保できているか
- ・作業場の近くに休憩スペースが設置されているかなど
また、職場環境を整備する際は従業員の声をヒアリングすることが大切です。従業員が抱える不満や業務上の問題を把握し、改善を進めると、従業員目線で働きやすい職場環境を作れます。
従業員の健康増進ができる福利厚生を導入する
健康管理にかかわる取り組みとして、従業員の健康増進ができる福利厚生の導入も検討するとよいでしょう。
従業員の健康増進ができる福利厚生としては、下記のような内容が挙げられます。
- ・住宅手当や家族手当など、生活に関係する手当の支給
- ・社員食堂の設置
- ・人間ドックの費用補助
- ・フィットネスクラブやスポーツジムの費用補助
- ・リフレッシュ休暇などの休暇制度の拡充
- ・社内イベントや慰安旅行の実施
紹介したような各種福利厚生を導入すると、従業員のワークライフバランスの向上やプライベートの充実を図ることができて、従業員の健康増進につながります。
ストレスチェック制度を導入する
従業員の健康管理において管理するべき健康には、身体的な健康のほかに、精神的な健康も含まれています。精神的な健康状態を把握・管理するために必要な取り組みがストレスチェック制度です。
ストレスチェックとは、ストレスに関連する質問票を従業員に回答してもらい、回答結果からストレスの状態を調べる検査です。ストレスチェックを行うと従業員のメンタルヘルスの不調を把握できるようになり、業務量の軽減や人間関係の改善といった対策を実施できます。
2025年2月時点では、従業員50人以上の企業はストレスチェックの実施が義務化されているものの、従業員50人未満の企業では努力義務とされている状況です。
参考:東京労働局ホームページ「ストレスチェック制度について」
しかし、従業員50人未満の企業であっても従業員のメンタルヘルスの不調は発生する可能性があるため、ストレスチェック制度の導入を検討するとよいでしょう。
社内に相談窓口を設置する
従業員の中には自分の健康に悩みを感じていても、誰に相談すればよいかが分からない方もいます。社内に相談窓口を設置すれば、健康に関する悩みや不安を相談できる場ができて、従業員の健康維持・増進につながります。
相談窓口を設置する際は、相談者の個人情報が守られることを重視しましょう。個人情報の管理や保護について研修を行う必要があります。
また、相談窓口は設置するだけではなく、相談窓口の存在を従業員に周知することが大切です。設置後は社内報やリーフレットで周知し、利用方法の説明もおこなうと、社内窓口の利用を促進できます。
まとめ
従業員の健康管理は労働契約法や労働安全衛生法で明文化されており、企業の義務と言えます。健康管理には生産性の向上や人材の定着、企業価値の向上といったメリットがあり、企業は健康管理の取り組みを導入することがおすすめです。
健康管理の取り組みには健康診断のほかに、長時間労働の是正や福利厚生の拡充などが挙げられます。取り組みによってかかるコストや期待できる効果は異なるため、費用対効果をよく検討して導入する取り組みを決めましょう。
また、経営者自身も健康管理をおこなうことが重要です。健康管理を考えている経営者の方は、エグゼクティブ向けの人間ドックや予防医療サービスを利用すると良いでしょう。
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