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善管注意義務とは? 取締役の善管注意義務違反はどうして起こるのか?

善管注意義務とは取引において委任者の職業や能力、社会的地位を考慮して、一般的・客観的に要求される注意義務のことです。民法の第644条は「受任者の注意義務」について規定しており、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と記載されています。これは委任が委任者と受任者の信頼を基礎とすることを考慮して、有償・無償を問わず、受任者が委任契約の趣旨に従って、受任者が善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理しなければならない、という趣旨です。

注意義務を怠り、履行遅滞、不完全履行、履行不能などの債務不履行があった場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となります。

取締役の善管注意義務

民法第644条の規定に加えて、取締役には会社法第330条によって善管注意義務が課されています。というのも取締役と株式会社は弁護士と依頼人、医師と患者と同様に受任者と委任者の関係にあると考えられているからです。第330条は「取締役の善管注意義務」について規定しており、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」と記載されています。つまり、取締役、会計参与及び監査役などは会社から委任された者として会社に対して善管注意義務が課されているのです。日本では従業員が会社の役員に昇進することが多く、取締役になっても「従業員」という意識があるかもしれませんが、会社と従業員が「雇用関係」にあるのに対して、会社と取締役は「指揮命令」の関係にあります。会社法に規定されている通り、法律上の立場が異なり、受任者としての責任を負うことに注意が必要です。

善管注意義務違反の例①

取締役の善管注意義務としてまず問題になるのは取締役が会社の事業について意思決定を行う場合に判断を間違って、結果として会社に損失が生じたという場合です。取締役の決定は変化する外部環境と様々な不確定要素があるなかで行わられなければならず、常に一定のリスクが存在します。それにもかかわらず「会社に損害を与えた」として取締役の責任を問うと取締役を萎縮させ、明確な企業経営に関する判断を妨げる恐れがあります。したがって、最高裁の判例では取締役会に一定の裁量権を認めた上で、善管注意義務となる一定の基準について言及しています。

判例によれば、経営に関する判断がされた当時の具体的な状況や経営者の知見や経験を考慮した上で、「判断の前提となった事実認識が著しく不合理であった」、「前提となる事実について情報収集や調査がしっかり行われていなかった」、「判断が著しく不合理であった」場合などに初めて取締役の善管注意義務違反を問うことができる、としています。したがって、取締役の判断に誤りがあったとしても直ちに善管注意義務違反となるのではなく、十分な注意のもとで判断が行われたかが問題となるのです。

善管注意義務違反の例②

続いて取締役の善管注意義務が問題となるのは法令などに違反した行為を犯した場合です。こちらについて明確な善管注意義務違反とされており、会社法第355条「忠実義務」において「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」と規定されています。取締役は会社の事業について重要な意思決定の場に参画することになりますが、取締役自身が法令や定款、株主総会の決議を遵守することは当然として、会社がそれらに違反することがないように監督することも責務とされています。したがって、取締役自身が法令違反行為をしなかったとしても会社がそのような行為をすることを見過ごした場合には善管注意義務違反と見なされます。

善管注意義務に違反した場合

取締役が善管注意義務に違反した場合は一体どうなるのでしょうか。民法上は状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となると規定されていますが、会社法においても善管注意義務に違反した場合について規定しています。会社法第423条「役員等の株式会社に対する損害賠償責任」によれば、「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。これは任務懈怠責任と呼ばれるものであり、取締役が会社に対して損害賠償責任を負うことになります。また、仮に会社が当該取締役に対して損害賠償を請求しない場合は株主が訴訟を提起することができます。これは株主代表訴訟と呼ばれるものです。取締役の任務懈怠責任により生じた損害に対する賠償金額は取締役の行為や不作為、過失の程度により決定されますが、一般的には多額にのぼる傾向にあります。

まとめ

取締役は企業経営について裁量があると同時に常に善管注意義務違反のリスクがあります。善管注意義務の定義や範囲には曖昧な部分が多く、個別具体的な事情においてそれが善管注意義務違反なのか判断するのは難しいのが実際のところです。したがって、多額の損害賠償責任を負わないためにも弁護士などの専門家に積極的に相談しましょう。

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