認知症を引き起こす病気の種類と割合
未病認知症は病名ではなく特有の症状を示す状態を総称する言葉です。
アルツハイマー病や脳梗塞、脳の外傷などが原因となって、認知症が発症します。
この記事では、認知症の原因になる病気を解説します。また、認知症に占めるそれらの病気の割合も紹介します。
認知症の基礎知識
原因の病気を紹介する前に、認知症に関する基礎知識を確認しておきます。
脳の異変で生じる生活の支障
厚生労働省は認知症を、脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなったりしたため、さまざまな障害が起き、その結果生活に支障が出ている状態と定義しています(*1)。生活上の支障の期間が6カ月以上続くと、認知症と診断されます。
ポイントは、1)脳の異変、2)生活上の支障の2点です。脳の病気を発症しても生活に支障が出なければ認知症ではありませんし、生活に支障をきたしてもそれが脳の病気によるものでなければ、やはり認知症とはいいません。
生活上の支障は1)中核症状と2)行動・心理症状の2つ「とても深刻」
認知症による生活上の支障はどれも深刻なものばかりです。深刻な支障が生じた結果、周囲や他人に与える影響が大きいため認知症が恐れられている、ともいえます。
認知症による生活上の支障は多岐にわたります。それで、生活上の支障を1)中核症状と2)行動・心理症状の2つに分類しています。
●中核症状
・記憶障害:覚えられない、思い出せない
・理解と判断力の障害:考えられない、家電を使えないなど
・実行機能障害:計画することや段取り通りに行動することができない
・見当識障害:時間、場所、人との関係などがわからなくなる
●行動・心理症状
・徘徊:目的なく外を歩き回って行方不明になることもある
・妄想:実際はそうではないのに「物を盗られた」などの被害妄想や嫉妬妄想など
・せん妄:家のなかを意味なくうろついたり、独り言をいったりする
・幻覚:本来は見えないものが見える、聞こないものが「聞こえる」こと
・暴力行為:感情のコントロールができず暴力的になる
・抑うつ:気分が落ち込む、無気力になる
・人格の変化:穏やかな人が短気になったりする
・不潔行為:風呂に入らなくなる、排泄物に触れてベッド柵などにこすりつける
いずれも、元気なころにはなかった行動や症状で本人と家族を苦しめることになる深刻な問題です。
脳は、行動のすべてに指令を出し、精神活動と身体活動をコントロールしています。その脳に異変が起きるので、精神にも行動にも異変が起きるのです。
原因となる病気は大きく3種類にわかれる
認知症を引き起こす病気の種類と割合についてみていきます。ここでも厚生労働省の資料から引用します。
●認知症を引き起こす病気の種類と割合
・アルツハイマー型認知症:67.6%
・血管性認知症:19.5%
・レビー小体型認知症と認知症を伴うパーキンソン病:4.3%
・前頭側頭葉変性症:1.0%
・その他:7.6%
個別の病気に注目すると、大まかに「アルツハイマー病7割、血管性認知症2割、その他1割」ということができます。
そして認知症を引き起こす病気は、病気の性質で次の3つに分類することができます。
●認知症を引き起こす病気の種類ごとの分類
1:神経変性疾患:アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症など
2:脳血管障害:血管性認知症など
3:その他:内分泌の病気、感染性の病気、腫瘍など
5つの病気を押さえておく
自分自身や家族たちの認知症が心配になったら、医師の受診をしましょう。神経内科、かかりつけ医、認知症外来などがあります。医師は検査や家族に問診などを行い、認知症の原因が、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症など多くの疾患から本人の病態をさぐります。
先ほど紹介したとおり、現在はこの5つで認知症9割以上を占めます。
ここではこの5つの病気の基礎知識を紹介します。
アルツハイマー型認知症の基礎知識
アルツハイマー型認知症は、脳内に異常なタンパク質がたまり、神経細胞が破壊されたり、脳が萎縮したりして発症します。
「昔のことは覚えているが最近のことは忘れてしまう」「時間や場所の感覚がなくなる」といった症状が出ます。
血管性認知症の基礎知識
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血によって脳細胞に血液が送られなくなり、脳細胞が死んでしまうことで発症します。
血管性認知症はさまざまな症状が出る特徴があります。障害が起きる脳の場所によって出現する症状が変わってくるからです。
レビー小体型認知症の基礎知識
レビー小体という特殊なタンパク質が脳内にたまることで発症します。脳の神経細胞が破壊されます。
症状の特徴は、幻視、手足の震え、筋肉がこわばる、歩幅が小刻みになる、転びやすくなるなどです。
パーキンソン病の基礎知識
パーキンソン病は、脳の中脳という部分の神経細胞が減ることで発症します。
症状は、手足の震え、筋肉のこわばり、緩慢な動作、姿勢を維持するのが困難になる、といった特徴があります。
前頭側頭葉変性症の基礎知識
前頭側頭葉変性症は、脳の前頭または側頭葉という部分の神経細胞が減少することで脳が萎縮して発症します。
症状の特徴は、感情をコントロールできない、ルールが守れないなどです。
まとめ~まず認知症の正体を知る
認知症はとても複雑で、ここで紹介した主な5つの病気以外の病気でも発症します。ただ、「高齢者に起きやすい、生活に深刻な支障をきたす脳の病気」という点は共通しています。
認知症を完全に防ぐことは難しいのですが、原因となる病気を遠ざけたり、進行を遅らせたりすることはできます。
病気の知識を身につけることは、認知症予防の第1歩になるでしょう。