経営者に多い病気・注意すべき病気とは?原因や予防法も解説
経営者は会社を代表する存在であり、経営者自身の健康状態は会社の事業継続やステークホルダーからの信頼にかかわる要素です。現在は精力的に働いている経営者の方も、「もしも自分が病気になったら……」と不安を感じることは多いでしょう。
経営者の方は自身の健康状態に関心を持ち、病気に極力かからないように注意することが大切です。
そこで本記事では、経営者に多い病気・注意すべき病気の原因や症状を説明し、実践すべき予防法も紹介します。
経営者の健康状態を取り巻く環境
経営者が病気になるリスクを考えるにあたり、まずは経営者自身の健康状態を取り巻く環境を解説します。
信金中央金庫 地域・中小企業研究所の調査によると、調査に参加した中小企業経営者のうち81.9%は週の労働時間が40時間を超えています。なかでも、週の労働時間が60時間以上の方は31.1%となっていて、長時間労働や過重労働になっている経営者の方は多い状況です。
同調査では経営者が健康診断を受ける頻度も調べており、1年に1回以上受ける方は84.1%でした。定期的に健康診断を受ける方が多いものの、「2~4年に1回」など頻度が不定期な方も少なからず見受けられます。
また、経営者が1か月離脱した場合の業務継続についての調査では、「通常通りの業務継続が可能」と回答した経営者は57.6%です。一方「主要業務に限り継続可能」は23.4%、「大幅に業務を縮小したうえで継続可能」は7.3%、「業務継続は不可能」は5%でした。中小企業のおよそ半数は経営者の離脱による影響が少なからずあるといえます。
参考:信金中央金庫 地域・中小企業研究所「中小企業における経営者の健康リスクについて」
長時間労働が多かったり、健康診断を定期的に受けていなかったりする環境は、さまざまな病気のリスクを高める要因です。
経営者が病気で経営から離脱すると、今までと同じ規模での事業継続が難しくなり、売上減少につながると考えられます。株主や取引先、資金調達をしている金融機関にも影響は及び、ステークホルダーからの信頼や企業価値を損なう可能性があるでしょう。
経営者の病気は、経営者自身の生活だけでなく、会社経営にも多くの支障をもたらします。会社の事業継続性を高めるにも、経営者は病気に気を付けることが大切です。
経営者に多い病気や注意すべき病気とは
経営者に多い病気としては「がん」「心疾患」「脳血管疾患」の三大疾病が挙げられます。精神疾患や糖尿病なども経営者が注意すべき病気です。
以下では経営者に多い病気・注意すべき病気を7つ紹介し、それぞれの病気の概要や症状、主な原因を解説します。
経営者に多い病気:がん
がんとは、傷ついた遺伝子から作られた異常な細胞が増殖する病気です。がんは2022年時点で日本人の死亡原因の第1位であり、日本人の2人に1人は生涯で何らかのがんに罹患するといわれています。
参考:厚生労働省「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
がんは罹患する部位によっていくつかの種類に分けられます。肺がん・胃がん・すい臓がん・肝臓がん・大腸がんなどがよく知られているがんの種類です。
また、がんは男性と女性のそれぞれで特有ながんがあります。たとえば前立腺がんは男性特有のがんであり、子宮頸がんは女性特有のがんです。
厚生労働省が2020年に公表した「令和2年 全国がん登録 罹患数・率 報告」によると、2020年における男性・女性それぞれのがん罹患数が多い部位は下記の通りとなっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 前立腺 | 大腸 | 肺 | 胃 | 肝臓 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
参考:厚生労働省「令和2年 全国がん登録 罹患数・率 報告」
がんの症状は、がんの種類やステージ(病期)などによって違いがあります。がんの症状としてよく知られているものは下記のとおりです。
- ・身体の一部に痛みやしこりがある
- ・平常にしているのに呼吸が苦しい
- ・疲れやすさを感じる
- ・病気にかかりやすくなった
- ・吐き気をよく感じる
- ・便秘や下痢によく悩まされるなど
がんの原因はさまざまなものがあり、罹患する部位によっても発症原因は異なります。がんの発症につながる主な要因としては喫煙や感染(肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヘリコバクター・ピロリなど)があります。他にも飲酒・食生活・身体活動・体格などもリスクにつながる要因です。
がんは罹患率が高い一方で、早期のステージではなかなか自覚症状が現れない病気です。定期的な健康診断やがん検診を受けていない経営者の方は、がんの発見が遅れる可能性もあります。
経営者に多い病気:心疾患
心疾患とは、心臓に起こるさまざまな病気をまとめた総称です。心臓を構成する筋肉の「心筋」や、心臓につながる血管に何らかの異常が起こることで発症する病気で、2022年時点で日本人の死亡原因の第2位となっています。
参考:厚生労働省「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
心疾患に含まれる主な病気には虚血性心疾患・心不全・不整脈・心臓弁膜症があります。
- ・虚血性心疾患
虚血性心疾患は、心臓に酸素や栄養が十分に供給されなくなる病気です。虚血性心疾患はさらに狭心症と心筋梗塞の2つの病気に分けられます。
狭心症は心筋への血流が一時的に悪くなることで起こる病気で、心臓周辺の痛みや息切れ・呼吸困難などの症状が現れます。症状は基本的に長く持続せず、数分程度で収まることがほとんどです。
もう1つの心筋梗塞は、心臓に血液が届かなくなって心筋の細胞が壊死する病気です。心筋梗塞が起こると胸部にはげしい痛みや圧迫感・灼熱感が現れ、多くの場合は20分以上持続します。 - ・心不全
心不全は、心臓のポンプ機能が低下することで、全身への血液の送り出し・汲み上げが十分にできなくなる病気です。主な症状は疲れやすさや軽い運動での息切れ、食欲不振、手足のむくみ、体重増加などが挙げられます。 - ・不整脈
不整脈は、心臓の拍動リズムが通常より速くなったり、反対に遅くなったりする状態のことです。不整脈の症状には動悸・息切れ・胸の苦しさ・めまいなどがあります。 - ・心臓弁膜症
心筋弁膜症は、心臓にある4つの弁が正常に機能しなくなり、心臓のポンプ機能にさまざまな異常が発生する状態です。心筋弁膜症の症状には胸の痛みや動悸があり、心不全を引き起こす原因にもなります。
心疾患の原因としては、動脈硬化や喫煙、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病が挙げられます。
不規則な生活や運動不足、ストレスに悩まされることが多い経営者の方は、心疾患の罹患リスクに注意してください。
経営者に多い病気:脳血管疾患
脳血管疾患とは、脳の血管に何らかの異常が起こることで発症する病気です。脳血管疾患は脳機能に大きなダメージを与える病気であり、2022年時点では日本人の死亡原因の第4位となっています。
参考:厚生労働省「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
脳血管疾患の中でも発症が急激なものは「脳卒中」と呼ばれ、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つが該当します。
- ・脳梗塞
脳梗塞は、脳内の血管が詰まることで血流が途切れがちになり、脳に酸素や栄養が十分に供給されなくなって脳細胞が壊死する病気です。脳細胞の壊死によって脳機能に障害が起こり、言語障害や意識障害、運動麻痺などの症状が現れます。 - ・脳出血
脳出血は、脳内の血管が破れて出血する病気です。出血した血液は「血腫」という血の溜まりになり、脳組織の圧迫や脳細胞の破壊を引き起こします。
脳出血の主な症状としては頭痛・嘔吐があり、他にも意識障害や身体のしびれ、半身麻痺が起こる可能性もあります。 - ・くも膜下出血
くも膜下出血は、脳を保護している3つの髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間にある「くも膜下腔」で出血が起きている状態を指します。
くも膜下出血の代表的な症状は、突然起こる激しい頭痛です。他にも嘔吐や意識障害、呼吸停止などの症状が現れることもあります。
脳血管疾患の主な原因は動脈硬化や高血圧・肥満・糖尿病などの生活習慣病です。
脳血管疾患は、治療ができても言語障害や麻痺などの後遺症が残るケースが多く、予防と早期発見が重要な病気といえます。気になる症状が現れた経営者の方は、検査や医療機関の受診をおこなうことがおすすめです。
経営者が注意すべき病気:精神疾患
精神疾患とは、原因がないのに気分が落ち込んだり、幻覚や妄想を見たりなど、心身にさまざまな影響が出るこころの病気です。精神疾患にはうつ病・躁うつ病や統合失調症、不安障害、摂食障害などさまざまな種類があり、どのような人でも罹患する可能性があります。
特に経営者の方が注意すべきなのが「うつ病」です。うつ病は気分の落ち込みや無気力、身体のだるさなどが現れる病気で、社会生活でのストレスが原因となって発症することが多いといわれています。
経営者の方は会社経営の見通しにかかわるストレスはもちろん、従業員との人間関係や長時間労働によるストレスもあります。うつ病を発症するリスクがあるため、自身のメンタルヘルスに注意を払いましょう。
経営者が注意すべき病気:胃腸炎
胃腸炎は、胃や腸の粘膜に炎症が生じる病気です。胃腸炎にかかると胃や腸に痛みを感じたり、下痢や便秘がしばらくの期間続いたりといった症状が現れます。
胃腸炎の種類としては、ウイルスや細菌を原因とする感染性胃腸炎が一般的であるものの、過度のストレスが原因で発症するストレス性胃腸炎もあります。経営や業務のストレスが多い経営者の方は、ストレス性胃腸炎のリスクに注意しましょう。
胃腸炎によって胃や腸の粘膜が慢性的な炎症を起こすと、消化器を守っている粘膜の機能が低下し、さまざまな病気に感染しやすくなります。特にヘリコバクター・ピロリの感染は胃がんのリスクを高める要因です。
また、胃腸炎で現れる胃腸の痛みや下痢・便秘は、消化器系のがんでもよく見られる症状です。仕事に忙しい経営者の方は「症状があるけどストレス性胃腸炎だから放置してもいいだろう」と考えていると、がんの発見・治療の遅れにつながる可能性もあります。
経営者が注意すべき病気:糖尿病
糖尿病とは、糖の代謝を調節するインスリンがうまく働かず、血液中を流れる糖の濃度(血糖値)が高い状態が続く病気です。
糖尿病には、自己免疫疾患などによりインスリン分泌が不足する「1型糖尿病」と、生活習慣・肥満・遺伝など複数の要因により発症する「2型糖尿病」があります。現代の糖尿病患者の多くは2型糖尿病です。
糖尿病はさまざまな症状があり、代表的なものとしては喉の渇きや疲れやすさ、頻尿などが挙げられます。重度の糖尿病では糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害といった特有な合併症も現れることが特徴です。
また、糖尿病のリスク要因である肥満や、糖尿病によって引き起こされる動脈硬化は、心疾患・脳血管疾患のリスクも高めます。
経営者が注意すべき病気:高血圧症
高血圧症とは、血圧が高い状態が続く病気です。具体的には医療機関で血圧を測定し、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上のときに高血圧症と診断されます。
高血圧症の発症にはさまざまな要因が絡んでいて、主なものとしては塩分の摂りすぎや過度の飲酒・喫煙、運動不足・ストレス・加齢などが挙げられます。
高血圧症は自覚症状が現れにくいことが特徴です。しかし、放置すると動脈硬化を引き起こしやすくなり、心疾患や脳血管疾患といった命にかかわる病気のリスクも高めるため、経営者の方は注意してください。
高血圧症を自覚するには、血圧測定をおこなって高血圧かどうかを確かめる必要があります。
経営者に多い病気の3つの予防法
経営者が病気に極力かからないためには、普段から病気の予防を心がけることが大切です。
病気の予防法としては食事・睡眠・運動といった健康的な生活習慣を身につけるとともに、病気の早期発見に努めるとよいでしょう。
最後に、経営者に多い病気・注意すべき病気の予防法を3つ紹介します。
規則正しい生活を送る
経営者に多い病気や注意すべき病気のいくつかは、肥満や飲酒・喫煙が罹患リスクを高める要因です。毎日の生活習慣を改め、規則正しい生活を送ることで病気のリスクを低減できます。
具体的な取り組みとしては、下記の内容を実践するとよいでしょう。
- ・栄養バランスの良い食事を摂る
- ・食事から摂取する塩分量を少なくする
- ・間食を控える
- ・飲酒や喫煙の頻度を少なくする
- ・睡眠時間をきちんと確保する
生活習慣を変えるときは、自分が実践できる内容で、かつ継続できる方法を選ぶことが重要です。たとえば毎日喫煙している方であれば1日に吸う本数をまずは1本減らし、身体が慣れてきたらさらに1本減らす、というように実践します。
段階的に挑戦することで、健康的な生活習慣を徐々に身につけられるでしょう。
運動習慣をつくる
健康的な生活習慣を身につけるとともに、運動する習慣もつくりましょう。
適度な運動をおこなうと、筋肉の発達や心肺機能が向上でき、血流促進やストレス解消にもつながります。肥満の解消や動脈硬化の予防、免疫力向上による病気予防といった効果が期待できます。
ただし、激しい運動は筋肉や関節に負担がかかり、かえって怪我や体調不良が発生するおそれもある点に注意してください。自身の年齢や体力を鑑みて、無理のない程度の運動をおこなうことが大切です。
人間ドックを受診する
病気の早期発見には、人間ドックの受診がおすすめです。
人間ドックとは、病気の早期発見を主な目的とした、任意で受けられる総合的な検査のことです。一般的な検査内容としては身体測定や血圧・心電図・呼吸機能の検査、超音波検査、CT検査・MRI検査などがあり、身体に異常がないかを詳しく調べてもらえます。
人間ドックを受診するメリットは、自分が症状を自覚していない病気や、潜在的な病気リスクを発見できることです。がん・心疾患・脳血管疾患といった経営者に多い病気も早期発見できて、早い段階での治療につなげられます。
健康に自信がある方や、健康診断の結果で異常がない方も、病気に罹患するリスクは常に存在しています。経営者として長く活躍できるように、定期的に人間ドックを受診して健康管理をおこないましょう。
まとめ
経営者に多い病気は、主にがん・心疾患・脳血管疾患の3つです。他にも精神疾患や胃腸炎、糖尿病と高血圧症にも注意する必要があります。
経営者は長時間労働をする方が多く、ストレスや運動量不足に悩まされることも少なくありません。病気にかかるリスクを低減するために、紹介した3つの予防法を実践しましょう。
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