乳がんを自分で発見できるかもしれない「しこりの場所と特徴」
未病女性のがんのなかで最も多い乳がん。
その兆候は、自分でチェックすることでつかめることがあります。
乳がんは「しこり」になるので、自分の手で乳房(にゅうぼう)を触ることで感知できることがあるのです。
この記事では、乳がんによって生じるしこりの場所と特徴を紹介します。
乳房の構造
乳がんとしこりの関係を理解するには、乳房の構造を把握しておく必要があります。
専門用語を表にまとめましたので、これに沿って解説します。
乳房 | |||
乳腺(にゅうせん)
・母乳をつくる |
脂肪組織 | ||
乳頭(乳首)
・乳腺葉の先頭に位置する |
乳腺葉(にゅうせんよう)
・15~20本ある ・放射線状に張り巡らされている |
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乳管
・母乳がとおる管 |
乳腺小葉
・腺房(せんぼう)の集まり ・母乳がつくられる |
乳房は、母乳をつくる器官である乳腺と脂肪組織でできています。乳房が柔らかいのは脂肪組織があるからです。
がん細胞は、乳腺にできます。
乳腺は、15~20本程度の乳腺葉で構成されています。
乳腺葉は、乳頭を先頭に束ねられている形態をしていて、乳房のなかで放射線状に張り巡らされています。
乳腺葉は乳管と乳腺小葉で構成されています。
乳腺小葉は、複数の腺房で集まってできています。
母乳は、腺房で血液を原料にしてつくられ、乳管を通って乳頭に達します。
がんは乳腺にできるから、しこりでわかる
乳がんの特徴は次のとおりです。
・乳がんは乳腺にできる
・脂肪組織にできない
この2つの特徴が、しこりを理解するうえで重要になってきます。
がん細胞は、増えると塊(かたまり)になり、それがしこりとして感じられる大きさになります。
脂肪組織は柔らかいので、乳腺にがん細胞ができていると、手で乳房全体を外側から触ることで、しこりとして感じることができます。
本人が、自分の手だけで初期のがんを発見できるのは、乳がんくらいしかありません。それを可能にしているのは、乳がんが、柔らかい脂肪組織に包まれるような形で発生するからです。
しこりは全体にある:自分で確認する方法
多くのがん細胞は、乳腺のうち乳管でできます。
乳管は乳房のなかを放射線状に張り巡らされているので、しこりは乳房内のどこにあっても不思議はありません。
しこりを探すときは、乳房全体をしっかりチェックしてください。
自分でしこりの有無を確認するセルフ触診の仕方と、見た目で確認するセルフ視診の仕方を紹介します。
セルフ触診の仕方
セルフ触診は、「手の平」または「人差し指と中指と薬指の指先」を使います。それほど時間がかからないので、両方で試してみてください。
触る場所は、乳房全体とその周辺です。
しこりは「パチンコ玉のようにゴリッと硬い」「マシュマロのようだが、中心に硬さがある」「グミキャンディーのよう」と表現されます。
そのような感じがあったら、医療機関にかかることになります。
セルフ視診の仕方
しこり以外にも乳がんの兆候があり、それは目で確認できることがあります。
セルフ視診では、乳房を鏡に映して次の点に注意して観察してください。
<乳房全体の観察ポイント>
・えくぼのようなくぼみ
・盛り上がり
・発赤(ほっせき)
・浮腫み(むくみ)
<乳頭(乳首)の観察ポイント>
・湿疹
・ただれ
・かゆみ
・液体がたれている
・陥没
気になる点があったら、迷わず医療機関にかかってください。
正しく恐がりましょう:8~9割は良性でも
しこりをチェックする第1の目的は、初期の乳がんをみつけ、早期治療につなげることです。
そして第2の目的は、乳がんでないことの確認することです。
実は、しこりの8~9割は良性で、つまり、がんではありません。
したがって、しこりを確認できたからといって、ただちに恐がる必要はありません。
「ないかもしれない」と「ない」は全然違う
しこりの8~9割が良性であるならば、なぜ、しこりチェックが重要になってくるのでしょうか。
しこりがみつかったら「がんかもしれない」と恐れることになり、無駄な不安を体験することになりかねません。
しかし「ないかもしれない」と「ない」は全然違います。
セルフ触診でしこりを発見して、医療機関にかかって良性であることがわかれば、「がんではない」ことが確定します。
「ない」ことがわかれば、「ないかもしれないが、あるかもしれない」という不安が消えます。
しかも、しこりチェックでしこりがみつかり、早期がんがみつかればすぐに治療に取りかかることができます。
しこりチェックをしない理由はないといえるでしょう。
確かな画像診断が行えるクリニックへ
しこりを確認できたら、もしくは「これがしこりなのか」と感じた場合も、医療機関にかかりましょう。
そのとき、確かな画像診断が行えるクリニックを選ぶことをおすすめします。
乳がんの画像診断ではマンモグラフィーが知られていますが、その他にも、次のような検査機器があります。
・乳房専用のPET検査装置「PEM」
・自動全乳房超音波装置「ABVS」
そして、放射線科専門医がいるかどうかも、クリニック選びの基準の1つになるでしょう。
しこりチェックによる早期発見の重要性
乳がんの「期ごと」の10年生存率は次のとおりです(*1)。
Tis:94.72%
0期:95.45%
1期:89.10%
2期:78.60%
3a期:58.74%
3b期:52.04%
4期:25.49%
10年生存率とは、乳がんを発症してから10年後に生存している人の割合です。
Tisは、乳管内にとどまる乳がんのことで、超早期と呼ばれています。
0期は、画像診断で異常がみつからない早期の状態です。
1期は、2cm以下のしこりがあり、リンパ節への転移がないと思われる状態です。
以下、数字が増えるごとにしこりが大きくなり、転移が広がります。
Tis~1期であれば、10年生存率は9割です。
このことから、しこりの早期発見が、乳がん治療の成否にどれだけ大きな影響を与えるかがわかると思います。
まとめ~簡単かつ精度が高い
がんの有無を自分で触って確認できることは稀(まれ)です。
胃がんも肺がんも大腸がんも、ほとんどのがんは体の奥にできるので、体の表面を触ってもその存在を確認することはできません。
乳がんは体の表面近くにでき、しかも柔らかい脂肪組織に囲まれているので、その存在を触って確認できる場合もあります。
セルフチェックを習慣化することで早期発見につながる可能性も高まりますのでぜひご励行ください。ただし、それで万全というわけではありません。素人の感覚に限界があることも事実です。そこはやはり、科学的なアプローチも必要です。セルフチェックを日常的に行いながら、医療機関で定期的に乳がん検診を受けるようにしましょう。万全のチェックによって、健康で豊かな生活をお送りください。