脳を隅々まで調べる「脳ドック」。その効果や発見できる病気とは
人間ドック 検査脳ドックは、脳疾患を未然に防ぐために効果的な検査で、突然死のリスクを軽減します。特に働き盛りの方々は、脳ドックへの関心が強いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、主に脳ドックの目的、検査内容、検査結果とその後との対応について解説します。また、そのなかで後遺症の恐ろしさや受診の基準、脳ドックで発見できる病気なども網羅的に紹介しますので、ぜひご確認ください。
脳ドックとは?
脳ドックとは、脳疾患リスクを早期発見するための検査です。具体的にはMRI(磁気共鳴画像診断)や採血などを行います。脳疾患は自覚症状がないまま進行することがありますが、脳ドックによって発症を防ぐ可能性が高くなります。
検内内容
脳ドックの検査内容は、選ぶ検査コースによって異なります。基本的にはMRIでの画像診断が中心で、オプションで検査を追加できます。詳しくは実施施設の情報をご確認ください。
代表的な検査内容
MRI検査
脳の断面の構造に異常がないか調べ、脳梗塞や脳腫瘍などの兆候を確認
MRA検査
脳血管を撮影し、動脈瘤、血管の狭窄、閉塞を確認
頸動脈エコー検査
頸動脈の狭窄、動脈硬化を調べる
心電図
不整脈、心筋虚血を調べることで、脳梗塞のリスクを軽減
ABI(血液脈波)検査
両手両足の血圧を測り、血管年齢や動脈硬化の有無を調べる
血液検査
糖尿病や高血圧など全身の病気を調べる
検査の流れ
脳ドックの検査時間は全部で30分~3時間ほどです。実施施設や検査コースによって幅があるので、予約の際は注意しましょう。検査当日の一般的な流れは以下の通りです。
1.受付
書類などを預けます。その場で問診票を書くこともありますが、前日までにWeb問診票への記入を求められることもあります。
2.着替え
健診着に着替えます。MRIは強力な磁石を使うので、金属類の持ち込みはできません。
3.検査
ドーナツ型の機器 (MRI・MRA)に入り、脳や血管の状態を確認します。
4.検査結果の説明
当日に医師から伝えられる場合と、1~3週間かかる場合があります。
脳ドックで発見できる病気
脳ドックでは、脳の断面を見たときの異常や、脳疾患につながる全身の病気がわかります。先述した他の検査を組み合わせることで、以下のような疾患を見つけられます。
・脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)
・脳腫瘍
・アルツハイマー型認知症
・脳動脈瘤
・血管狭窄
・動脈硬化
・不整脈
・心筋虚血
・高血圧
・糖尿病
・高脂血症
脳ドックの目的
脳ドックの目的は脳疾患の早期発見です。脳卒中、脳腫瘍、動脈瘤などのリスクを調べます。このなかでも特に脳卒中を見つけることが主な目的です。脳ドックを活用することで、以下で説明するデメリットを回避しやすくなります。
脳疾患が人生に与えるデメリット
脳疾患の恐ろしさは様々ですが、その後の人生に損失をもたらす可能性が高いです。代表的なデメリットは2つです。
1.突然死
脳疾患は日本人の死因の上位を占めています。2020年の厚生労働省のデータでは、脳疾患(※)で亡くなった方は年間102,956人で、第4位でした。徐々に死亡率は減っているものの、依然として危険な疾患です。
※同資料内では「脳血管疾患」の表記
2.重大な後遺症
突然死を免れても、重大な後遺症が残る可能性があります。脳の神経細胞が死んでしまい、損傷した箇所の機能が失われるのです。以下は後遺症の例です。
・運動麻痺
・感覚麻痺
・目の障害
・構音障害、失語症
・嚥下障害
・高次機能障害
出典:厚生労働省「令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
脳ドックを受診した方が良い人とは?
一般的には40歳を超えた方は受診が推奨されます。脳疾患は40歳を超えたあたりで罹患率が上がるからです。厚生労働省の「脳血管疾患患者数の状況(2017)」でも、40歳に差し掛かかるタイミングで男女ともに患者数が増加しています。例えば、この資料では男性の患者数が以下のように推移します。
■年齢別の脳血管疾患患者数(男性)
・35~39歳:約2,000人
・40~44歳:約7,000人
・45~49歳:約9,000人
・50~54歳:約17,000人
・55~59歳:約25,000人
ただ、疾患の原因は個人によって様々です。それでは何を基準に受診すれば良いのでしょうか?
受診の基準になる項目
先のデータはあくまで平均なので、全ての人には当てはまりません。年齢はもちろんですが、下記に該当する方は受診を考えると良いでしょう。
・健康診断で高血圧、高血糖、脂質異常を指摘されている
・血縁者で脳疾患にかかった人がいる
・喫煙者
・過度な飲酒をする
・塩分、糖分、動物性脂肪の摂取量が多い
・肥満傾向
・ストレスが多い
・頭痛が多い
・頭部に衝撃を受けるスポーツをしている
出典:厚生労働省「図表1-2-4 脳血管疾患患者数の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-04.html
脳ドックの結果とその後の対応
脳ドックの結果は、当日の診察や郵送で受け取ります。異常が見つかった場合には、医師の説明を受けましょう。病状と今後の治療を聞くことができます。
一方、異常がなかった場合には頻繁な受診は不要とされています。受診頻度に関して明確な基準はなく、医療施設によって2~3年に1回を推奨するところや、2~5年に1回で十分とするところもあります。
早めの脳ドックで命とQOL(生活の質)を守りましょう!
最後に本記事の内容をまとめます。まず脳ドックの目的は脳疾患による突然死や後遺症などを防ぐためです。脳疾患は日本人の死因の多くを占めるので、定期的な受診が大切だとされています。
そのため、年齢・遺伝・環境要因などを考慮して受診を決めましょう。なお、検査内容はMRI検査がメインですが、オプションで他の検査を追加できます。脳ドックの活用を選択肢に入れて、命とQOL(生活の質)を守りましょう。