新紙幣に描かれる人物とは?どんな理由で選ばれるのか
その他2019年5月、これまで使用されてきた紙幣の刷新に伴い、描かれている人物像も変更されることが発表されました。
1万円札はこれまでの福沢諭吉から渋沢栄一へ、5千円札は樋口一葉から津田梅子へ、1千円札は野口英世から北里柴三郎へと変更になります。
前回の変更から20年になる2024年から新たなお札の普及が始まるとされています。
なぜ今回の変更ではこの3人が選ばれたのでしょうか?
そしてこの3人はどういった人物なのか、ご存じでしょうか?
今回は新紙幣の人物について紹介しつつ、なぜ3人が選ばれたのか、そしてなぜ20年の節目に新紙幣を発行することになったのかを解説します。
新紙幣に描かれる人物とは
2024年の新紙幣に描かれる人物は次の3人です。
・1万円札「渋沢栄一」
・5千円札「津田梅子」
・1千円札「北里柴三郎」
それぞれがどのような人物で、どんな功績を残してきたのか紹介します。
渋沢栄一とは
新一万円札に描かれる「渋沢栄一」という人物は、「日本の資本主義の父」とも呼ばれている実業家です。
その功績は凄まじく、実に500社以上の会社の立ち上げに関わったとされています。
その中には第一国立銀行(現在のみずほ銀行)や王子製紙、東京瓦斯(現在の東京ガス)、大阪紡績など、現在も業界をリードする名だたる有名企業が数多く含まれます。
また渋沢が設立したとされる田園都市株式会社は、現代の東京急行電鉄の母体となりました。
日本の資本主義の基礎を作った人物として偉大な功績を残した渋沢ですが、なぜ現代では知らない人も多いのでしょうか。
理由は渋沢が「自分の名前を世に出すことにこだわっていなかったから」です。
これだけの功績がありながら、渋沢はいわゆる財閥というものを形成しませんでした。自分の利益に固執しない人物だったと言えるのかもしれません。多くの会社設立に深く関わりながら、自身の名を冠した会社や組織を決して作らなかったことからも、それはうかがえます。
それゆえ現代で「渋沢栄一」という名前にピンとこない人が多いのです。
津田梅子とは
新5千円札に描かれる人物は、現在の樋口一葉から津田梅子へと変わります。
5千円札は女性から女性へと引き継がれる形になりました。
津田梅子がどういう人物か、知らない方もいるかもしれません。
津田梅子は日本初の女子留学生として、岩倉使節団に加わり、11年間アメリカで過ごし、帰国後は日本の女子教育に生涯を捧げた人物です。
なにより驚きなのは留学した当時、津田の年齢がわずか6歳だったということです。
6歳で、しかも女性初の留学生に選ばれたということからも、津田が優れた才能の持ち主だったことがわかります。
津田は帰国後、当時の女子英学塾を設立して女子教育に力を入れました。
現代では名称を変更し、津田塾大学という名前になっています。
そして津田塾大学では今でも、津田が英学塾を設立した時の理念である「英語教育」「少人数教育」「留学・国際交流」を大事にしているそうです。
北里柴三郎とは
新1千円札は野口英世から変わり、北里柴三郎になります。
北里柴三郎は「近代日本医学の父」とも呼ばれる医学の発展に寄与した人物です。
北里は細菌学を専門に研究しており、ドイツの細菌学の権威であるロベルト・コッホにも師事しました。
ドイツ留学中には破傷風菌の純粋培養の成功や、毒素への免疫抗体の発見、そして血清療法を確立したことで研究者として注目を浴びました。
血清療法とはいわゆるワクチンのことで、現代でいえばインフルエンザワクチンなど身近に感じられる療法です。
日本に帰国後は日本初の結核の専門病院である「土筆ヶ丘養生園」を設立し、結核の予防と治療を研究しました。
さらに香港でまん延していたペストの現地調査ではペスト菌も発見するなどの功績を残しました。
北里は学業の分野でも大きな功績があり、のちに北里大学となる「北里研究所」を設立し、慶應義塾大学医学部の設立にも尽力したことで有名です。
新紙幣に選ばれる人物とは
新紙幣に3人が選ばれた理由はどういったものなのでしょうか。
選定の基準となぜ定期的に紙幣が刷新されるのか、その理由も解説します。
3人が新紙幣に選ばれた理由と共通点
新紙幣は財務省が方針を決定し、紙幣に描かれる人物の条件も設定されます。
財務省が公表している紙幣に描かれる人物の条件は以下の通りです。
1. なるべく精密な写真や絵が残っていること
2. 品格があること
3. 国民によく知られていること
この3点が条件とされています。
1の条件は、精密な写真が残っているほど、偽造しにくくなるという理由があります。
特に最近は民間の印刷会社でも印刷技術の進歩が凄まじいため、簡単に偽造できないように精密な人物写真が求められるのです。
2の条件は日本の品格を表すために求められます。
人相の悪い人物では、日常的に目にするお札にするには相応しくないということもあるでしょう。
3の条件は当然のことながら、残した功績や国民に名前が知られているということです。
今回選ばれた3人も認知度は高いとは言えないまでも、残した業績の大きさを考えると選ばれる理由はわかります。
そしてそれ以外にも、今回財務省が3人を選んだ共通点があります。
それは「現代の日本にも通じる、普遍的な問題に取り組んだ人物」であることです。
3人の功績は現代で言い換えるなら次のようなものになります。
・渋沢栄一:成長戦略や新たなビジネス・価値観の創出
・津田梅子:自立した女性・女性の社会進出
・北里柴三郎:技術力大国として世界へ発信
今回選ばれた3人は現代日本を象徴する分野をそれぞれ代表する人物ばかりということになります。
なぜ新紙幣への刷新が必要なのか
新紙幣への刷新の大きな理由は「偽造紙幣の防止」です。
新紙幣は20年毎に発行されますが、20年の間にも印刷技術や偽造技術が向上しています。
紙幣の偽造防止には偽造防止の技術も更新することで、簡単には偽造できないように対策しているのです。
また最近はどんな人でも利用しやすいユニバーサルデザインの考えが普及しています。
目の不自由な人や外国人にも使いやすいデザインに変更するためにも、今回の新紙幣は発行されることになりました。
財務省HPより:https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201906/201906c.pdf
まとめ
今回は新紙幣の人物について紹介しました。
残した功績は大きいものの、これまであまり日本国内において認知されてこなかった渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の3人。
NHKでも渋沢栄一の半生を描いたドラマが放送されていますから、今回の新紙幣発行の前に一度3人それぞれの生涯や功績を知っておくのも面白いでしょう。
現代日本の基礎を築いたと言っても過言ではない3人の新紙幣。発行される2024年が楽しみになりますね。