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画像診断におけるAI利用の現在と課題とは

人間ドック 検査

X線やCTやMRIは、人の体内の情報を知ることができる重要な医療検査機器です。これらの画像検査機器で受診者の体内を撮影し、そこから得られる情報により医師が診断を下すことを、画像診断といいます。

AI(人工知能)が、この画像診断の領域に進出してきました。

この記事では、画像診断におけるAI利用の現在を紹介したうえで、その課題を探っていきます。

なぜAIが画像診断をサポートできるのか

AI画像診断とは、受診者の画像を、AIを搭載したコンピュータに読み込ませて、病気の有無を見つける手法です。

例えば医師は受診者のCT線画像を見て「がんがありそうだ」と推測しますが、AIも同様のことを行うわけです。

AIが画像診断をサポートできるのは、AIが提示された画像が何の画像であるかを判別できるからです。これをAIの画像認識技術といいます。

AIに、正常と異常の画像を多数読み込ませて学習させていきます。それによりAIが「これは、がんがある画像である」と医師の診断をサポートします。この学習の裏では、がんがない画像も多数読み込ませており、「これは、がんがない画像である」と学習させています。

AIには多くのビックデータが必要です。そしてそれを学習させているのも医師なのです。

「画像診断はAIの実用化が最も早い分野」

AI画像診断技術は、IT企業が力を入れて開発しています。

あるIT企業は、「医療向けAIの研究開発は急激に活発化しているが、画像診断はAIの実用化が最も早い分野である」と述べています(*1)。

AI画像診断技術ができることは、画像の自動撮影、医師の診断支援、検査業務や診断業務の効率化、診断の質の向上などとなっています。

今後は、画像を読み込んだだけで、将来病気が発症するかどうかや、病気が悪化するかどうかなど、AIが予測できるようになるとされています。

具体的に、AIは何ができるのか

AI画像診断技術はすでに実用化されていて、アメリカ合衆国で開発されたAIは、失明につながる病気を94%の確率で当てると言われています。

また、顕微鏡でがんの有無を調べる病理検査の領域では、AIは胃がんの有無を8割の確率で言い当てるそうです(*2)。

さらに、胸部X線画像やマンモグラフィ(乳房X線)画像、CTやMRIで撮影した肺や頭部の画像で異常を検出する技術の開発も進んでいます。

AI画像診断技術の課題

世間では「AIはとても優れたコンピュータ技術」と認識されていますが、もちろん完全ではありません。

ここでは1)判断根拠の提示、2)大量の学習データの確保、という2つの課題について考えてみます。

判断根拠の提示という課題

AIに画像を読み込ませて、がん細胞があるかどうか判定させるとします。このときAIは、「がんがある」または「がんがない」と回答したり、もしくは「がんがある可能性は70%」といったように評価したりします。

ただ、AIは、なぜ、がんがある可能性が70%なのかは説明できません。つまりAIは、判断を下した根拠を提示することができないのです。

これは今後の課題といえます。

判断根拠を提示できるAIが開発されれば、医師はその判断根拠の是非を判断することができます。

大量の学習データの確保という課題

AIは、読み込んだ画像が何の画像であるかを判別できますが、これは学習をするからです。その学習方法は、大量の画像を読み込むという単純作業になります。

AIが画像を認識する方法は、人間の画像認識の学習方法と似ています。

例えば、大人は犬と猫を間違えることはありませんが、子供は猫を見て「ワンワン」と答えることがあります。これは子供が、1)毛むくじゃらで、2)4本脚で歩いて、3)ひと抱えくらいの大きさの、4)人間でない動物を、「ワンワン」と認識しているからです。この4つの条件は犬にも猫にも当てはまるので仕方がないことです。

しかし、生活のなかで犬と猫を多数見るうちに、子供も100%の確率で犬と猫を言い当てられるようになります。

AIにも、大量の犬の写真と猫の写真を読み込ませて、「これが犬」「これが猫」と教えなければなりません。

犬と猫の写真を数枚しか読み込ませないAIは、他の種別の画像の場合にはもちろん外す確率が高く、読み込ませる写真とその種別が多くなるほど当たる確率が高くなっていきます。

AI画像診断技術の開発でも、同じことをしなければなりません。

つまり、AIに大量の「がんの画像」と「がんがない画像」を読み込ませるには、大量の画像を用意しなければなりません。

そうなると、例えば、胃がんを判定するAI画像診断技術を確立するには、「胃がんの画像」と「胃がんがない胃の画像」を大量に用意しなければならないわけで、疾患ごとに大量の画像が必要になります。

IT企業だけではAIの学習に必要な大量の画像を集めることはできません。また、病気の画像を持っている病院でも、1つの疾患について大量の画像を持っているわけではありません。また、医療技術の発展のためとはいえ、個人情報の取り扱いについて患者さんの同意がない画像を企業に提供するわけにはいきません。

そのため、AI画像診断技術の確立には、企業と病院と患者が協力していく必要があります。

まとめ~AIは補助だが強力な補助

当然の結論になりますが、どれだけAI画像診断技術が進化しても、最終的に診断を下すのは医師です。そういった意味では、医療の領域ではAIは補助的な役割を担うことになるでしょう。

しかし、AI画像診断技術の正解率はすでにとても高く、強力な補助となっています。

ITもAI技術も、まだまだ進化していくので、この補助がさらにどれだけ強力になるのか期待されるところです。

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