がんは「いつまで」に見つけると早期発見といえるのか
未病がんはかつて「死の病」と恐れられていました。もちろん今でもがんは多くの人の命を奪っています。その一方で、早期に発見して早期に治療を開始すれば「死に至る確率を大きく下げられる」という認識が広まっているからです(*1)。
がんの5年生存率を大きく上げるのポイントは早期発見です。早期に見つけることができれば早期に治療でき、生存率は高まります。また複数の治療法を選択することもできます。
では、がんをどの段階で見つければ、早期発見といえるのでしょうか。
健康な人でも毎日がん細胞は生まれている
がん細胞は、正常細胞が変異したものです。正常細胞の変異は多くの人に起きていますが、そのすべてが「がん」になるわけではありません。
健康な人でも毎日5,000個ほどのがん細胞が生まれています(*2)。しかし健康な人は、免疫細胞が活発に働いてがん細胞を攻撃します。そのため、がんになる細胞は1日にが5,000個程度と言われていて、免疫細胞が正常に作動していれば基本的には「がん」になりません。
つまり、がん細胞が発生していても、必ず「がんになる」というわけではありません。
では、がんという病気が診断されるのはどのような状態かというと、免疫細胞による攻撃が追いつかず、がん細胞が塊(かたまり)を形成してしまったときです。
がん細胞は、絶えず増え続ける性質があります。
そのため、様々な検査を経てがんであると診断をされたら早期に根治へ向けて、切除あるいはその他の治療を行うことが望まれます。
早期発見・治療のメリット「不治の病ではない。半分は治る」
厚生労働省は「がんは不治の病ではない。全体をみれば、半分程度のがんは治るといえる」と力強く指摘しています(*4)。
これこそが、早期発見・治療のメリットといえます。
胃がんの場合
病院では患者さんの胃がんを、進行度によってステージ1~4に分類します。ステージごとのがんの状態は次のとおりです(*5)。ステージ1を早期がんと呼んでいます。
<胃がんのステージ1~4>
・ステージ1:早期がん
がんが粘膜、粘膜下層にとどまっている
・ステージ2
がんが筋層に入り込んでいる、あるいは浸潤している
・ステージ3
がんが筋層を越えて漿膜下組織に浸潤している
・ステージ4
がんが漿膜を越えて胃の表面に出ている
がんが胃の表面に出たうえに、他の臓器にも広がっている
そして、ステージごとの生存率は次のようになっています。このデータは、独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災病院のものです(*6)。
<胃がんのステージごとの生存率>
3年生存率 | 5年生存率 | |
ステージ1 | 88.0% | 79.1% |
ステージ2 | 71.0% | 64.6% |
ステージ3 | 40.7% | 32.4% |
ステージ4 | 11.3% | 7.2% |
5年生存率とは、診断から5年後に生存が確認できた割合です。
ステージ1(早期がん)で治療できれば、5年後に8割の確率で生き続けることができますが、ステージ4になると1割弱にまで減ります。
胃がんが「不治の病ではない」病気にするには、早期発見・早期治療が必要になることがわかります。
まとめ~がん検診を受けよう
がんを早期に発見するために、がん検診を受けましょう。国は「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン」などを実施して、受診をよびかけています(*7)。
目標が50%ということは、50%に届いていないということです。これでは早期発見できる確率はなかなか高まらないでしょう。
厚生労働省によると、男性の胃がん、肺がん、大腸がんの検診の受診率は4~5割程度、女性の乳がん、子宮頸がんの受診率は3~4割程度です。
検査しなければがんは見つからず、がんが見つからなければ早期治療できません。早期発見早期治療を実現するためにも、積極的にがん検診を受けましょう。