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がんの三大治療(標準治療)とは?わかりやすく解説

がんの三大治療(標準治療)とは?わかりやすく解説

がん治療の基本になっているがんの三大治療。がんの診断後、医師から治療法の提案を受けて、正しい選択が何か迷う方もいるのではないでしょうか。がんの三大治療はそれぞれがんの適応や体に負うリスクが大きく異なるため、がんの状態だけでなく、ご自身やご家族の意思に沿って決める必要もあります。

この記事では、がんの三大治療のメリットやデメリット、費用の相場などについてわかりやすく説明します。がんの三大治療を選択する重要なポイントまでお話ししていますので、ご自身やご家族の治療の選択に悩まれている方はぜひ最後までご覧ください。

がんの三大治療とは?

がんの三大治療とは?

がんの三大治療(標準治療)とは手術、薬物療法、放射線治療を指し、がん治療の3つの柱ともいわれています。科学的根拠に基づいて有効性が証明されている、現時点で最良の治療と定義されており、がんの種類やステージ・患者の全身状態などに応じて、単独もしくは組み合わせて使用されることがほとんどです。

医師ががんの三大治療のどれかを提案するときは、専門医師だけでなく、ほかの多職種とも連携し、個々の患者の状態に適した内容を総合的に判断します。

手術(外科治療)

がんの三大治療のひとつである手術は、がん組織を切除し直接的にアプローチします。がんが存在する部位によっては臓器の一部を取り除くことにもなるため、臓器の修復もおこないます。早期がんの場合、手術単独で完治につながるケースも多いです。

手術の目的は、がん組織を可能な限り完全に取り除くことですが、正常な組織への影響をできるだけ抑えることも重要です。正常な組織の侵襲を減らすために、内視鏡やロボットを用いた手術も開発されています。これらの手術は患者の身体的な負担が軽減されますが、がんのステージや位置によっては適応が難しいケースもあります。

薬物療法(抗がん剤治療)

がんの三大治療の薬物療法(化学療法)では、抗がん剤などを用いてがん細胞を破壊したり、増殖を抑制したりします。一つひとつのがんを直接切除する手術とは異なり、全身に転移したがんや血液がんなど、局所療法が難しい場合に向いている治療法です。

手術の前後に併用する場合は、術前に腫瘍を縮小させたり、術後に再発を予防したりする目的で利用します。がんの栄養源となるホルモンの生成を抑えるホルモン療法や、がん細胞の分子を標的にして攻撃する分子標的薬なども開発され、選択肢が広がっています。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射することでDNAに損傷を与え、がん細胞を破壊したり増殖を抑制したりする治療法です。手術と同様、がんを局所的に治療する方法で、完治もしくは苦痛を和らげる目的でおこないます。

放射線治療はがんの三大治療のなかでも、重篤な副作用が生じやすいです。大量の放射線被ばくは体に影響を及ぼし、脱毛や頭痛、嘔吐などが伴うため、副作用のリスクよりも患者の利益が十分に大きい場合に治療が適応されるケースが多いです。

脳の腫瘍にピンポイントで照射するサイバーナイフや、前立腺がんに集中照射する強度変調放射線治療(IMRT)など、正常組織への影響をできるだけ抑えられる技術も開発されています。

がんの三大治療と免疫療法

がんの三大治療のほかに注目を集めている治療法として、免疫療法が挙げられます。免疫療法は患者自身の免疫機能を活用してがんを攻撃する治療法で、がんの三大治療と合わせて「4つのがん治療」とも呼ばれています。

がんの三大治療ががん細胞に直接攻撃するのに対し、免疫療法は体内の免疫機能を活性化させて攻撃する能力を高めることが特徴です。がんの三大治療よりも副作用が少なく、患者の生活を維持しながら継続しやすい利点もあります。

免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤などが当てはまり、がんの三大治療と組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。

がんの三大治療のメリットとデメリット

がんの三大治療のメリットとデメリット

がんの三大治療にはそれぞれメリットとデメリットがあります。ひとつずつ見ていきましょう。

手術(外科治療)

手術はがんの三大治療のなかでも副作用が少ない治療法ですが、術後の身体的な負担は大きくなります。また、微小ながん細胞や全身に転移しているケースには向いていません。

メリット

  • ・早期のがんであれば完治できる可能性がある
  • ・薬物療法や放射線療法に比べて副作用が少ない

デメリット

  • ・身体的負担が大きく、回復に時間がかかる
  • ・小さすぎたり手術できない部位にあったりする場合は適さない
  • ・手術後に合併症が起こるリスクがある
  • ・入院が必要になるため、生活や仕事に影響を及ぼしやすい

薬物療法(抗がん剤治療)

薬物療法は局所的ながんだけでなく、全身に広がったケースでも利用しやすいです。しかし、がんの三大治療のなかでも効果が薄れやすく、治療が長期化することも多いです。

メリット

  • ・全身に転移したがんや血液がんにも効果がある
  • ・手術前後の補助療法として使用できる

デメリット

  • ・正常な細胞にも影響が生じるため、副作用が強い場合がある
  • ・治療が長期に渡るケースも多い
  • ・継続するうちに薬剤に対する耐性ができ、効果が薄れる可能性がある

放射線治療

放射線治療は手術が難しい症例でも適用できますが、がんの三大治療のなかで最も重篤な副作用が生じやすいです。

メリット

  • ・手術が難しい部位のがんにも適用できる
  • ・侵襲することがないため、正常な臓器の機能を温存できる

デメリット

  • ・放射線を照射する部位の周りの正常組織にも影響を与える可能性がある
  • ・長期的な副作用のリスクがある
  • ・一部のがん(放射線の感受性が低い部位)には効果がない

がんの三大治療を選択するまでの流れ

がんの三大治療を選択するまでの流れ

がんの三大治療を選択するときは、以下の流れで進めていきます。

  • ・がんの状態を知る
  • ・治療のメリットとデメリットを確認する
  • ・主治医と相談する

それぞれ詳しく解説していきます。

がんの状態を知る

がんの三大治療を選択するには、まず主治医の診察によってがんの状態を詳しく知ることが大切です。問診時に自覚症状を主治医に伝えた後は、がんの種類やステージ、がんの大きさや位置、転移の有無などを把握するために検査がおこなわれます。

検査でおこなうのは、血液による腫瘍マーカー検査や、MRIやマンモグラフィなどの画像検査、内視鏡検査、PET検査などです。診断結果が出るまでに時間がかかることもありますが、これらの検査結果から総合的に判断してがんの状態を明確にします。

主治医から結果や診断内容について知らされた後は、治療方針を決めていきます。治療方針を決めるのに特に重要になるのが、がんのステージです。一般的にステージが低いほどがんは早期であるため、治療の選択肢が広がります。

がんは種類によっても有効な治療法が異なります。がんの状態をはじめの段階で詳しく把握することは、適切ながんの三大治療を選択するのに不可欠です。

治療のメリットとデメリットを確認する

治療を選択する際は、主治医からの説明受け、メリットとデメリットを十分に理解したうえで進めることが大切です。がんの状態や治療によって「期待できる効果」「副作用や後遺症が起こる可能性」「再発が起こる確率」は大きく異なります。

副作用を強く感じやすい治療法でも、治療後の再発率が低ければ、多少がまんしてでも受ける気になるかもしれません。乳がんの摘出術などで体の見た目が大きく変わるケースであれば、手術よりも薬物療法や放射線治療を受けたいと感じる方もいるでしょう。

主治医に提案された治療をそのまま受け入れるのではなく、自身の気持ちや生活状況なども考慮しながら、適している治療法を家族とともに考えることが大切です。治療後の療養生活や定期的な通院の可能性なども考えたうえで、納得できる治療法を選びましょう。

主治医と相談する

最終的に主治医と相談のうえで、治療方法を決定します。患者の状態に対して適応できる複数の治療を提示して説明し、進行するのは主治医の役目です。

がんの三大治療の選択肢は、がんの種類やステージ、治療の回数などによって異なり、2つ以上の治療法を組み合わせる場合もあります。患者は主治医から受けた説明の内容を十分に理解し、納得したうえで家族とともに選択することが重要です。

説明の内容でわからないことがあれば納得できるまで質問してみましょう。主治医の説明がどうしても納得できない場合は、治療方針について別の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」をする手段もあります。

がんの三大治療の費用相場

がんの三大治療の費用相場

がんの三大治療の費用相場について説明します。(※あくまで目安です。費用はがんの種類やステージ、治療内容によっても大きく異なります。)以下の治療費のほかに、入院費の差額のベッド代や食事療養費、診察費、検査費、介護サービス費、術後の通院費なども必要になることを知っておきましょう。

がんの三大治療はどれも治療費が高額になりやすいため、適用区分に当てはまるのであれば、高額療養費制度の利用を検討すると良いでしょう。詳しくは以下の厚生労働省のページを参考にしてください。

厚生労働省:「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

手術(外科治療)

保険診療が3割負担で、入院費込みの治療費の相場は以下のとおりです。

  • ・肺がん:約30〜60万円
  • ・胃がん:約20〜60万円
  • ・大腸がん:約30〜60万円
  • ・乳がん:約7〜30万円
  • ・子宮がん:約40〜50万円
  • ・食道がん:約15〜80万円

手術はがんの種類やステージによって適応される術式と費用が異なります。術後の状態によって入院期間が長引くと、そのぶん費用が増す可能性があることも心構えておきましょう。

薬物療法(抗がん剤治療)

保険診療が3割負担で、年間にかかる抗がん剤治療の費用の相場は以下になります。

  • ・肺がん:100~650万円
  • ・胃がん:80~260万円
  • ・大腸がん:80~350万円
  • ・乳がん:70~400万円

抗がん剤治療はがんの種類やステージだけでなく、薬剤の種類や量でも大きく異なります。薬剤の量は患者の体表面積や体重で1日に投与する量が決定されます。手術の前後におこなうケースや抗がん剤単独で治療するケースなど、目的によって薬剤の種類や投与する頻度も違うため、医師から十分に説明を受けることが重要です。

放射線治療

保険診療が3割負担の場合は、以下が相場になります。

  • ・肺がん(30回):20~25万円
  • ・乳がん(16~30回):15~30万円
  • ・前立腺がん(20~39回):35~45万円
  • ・肝臓がん(30回):20~25万円
  • ・脳腫瘍(サイバーナイフ1~3回):20〜25万円

放射線治療の費用は、放射線を照射する部位や方法、回数によって異なり、放射線を照射する回数は正常の組織がどれだけ耐えられるかによっても違ってきます。しかし、放射線治療は手術と違って通院で治療可能なケースもあったり、薬物療法よりも費用が抑えやすかったりする利点もあります。

がんの三大治療以外の選択肢

がんの三大治療以外の選択肢

がんの三大治療以外に、先進医療を受ける選択肢もあります。先進医療とは、厚生労働大臣が定めた最新で高度な医療技術を用いた治療のことです。有効性や安全性が認められていますが、医療保険制度の対象にはなっていません。

令和6年9月時点での先進医療の数は76種類ほどで、幅広い種類のがんに適応できる治療が揃っています。放射線や炭素イオンの粒子を使用してがんを治療する陽子線治療や重粒子治療などは、正常組織への負担が少なく、副作用も抑えられる利点があります。

先進医療は治療費が高額になってしまいますが、がんの三大治療で十分な効果が得られない場合は、選択肢として視野に入れても良いでしょう。

まとめ

がんの三大治療は外科治療・抗がん剤治療・放射線治療を指す

がんの三大治療は、手術(外科治療)・薬物療法(抗がん剤治療)・放射線治療を指し、がん治療の基本となる方法です。単独または組み合わせて用いられ、がんの種類やステージ、患者の全身状態などに応じて選択されます。

がんの三大治療にはそれぞれメリットとデメリットがあり、患者やご家族の希望に合わせて選択することも重要です。治療の選択には、がんの状態を正確に把握したうえで医師と十分に相談することが不可欠です。がんの三大治療以外に、先進医療による選択肢も増えているため、個々の状況に適した治療法を選ぶようにしましょう。

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