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脳梗塞はどう予防する?食事や運動など生活習慣のポイントを解説

脳梗塞はどう予防する?食事や運動など生活習慣のポイントを解説

社会の高齢化が進むにつれて、発症する人が増えている脳梗塞。治療方法の発達に伴い、発症しても元のとおりに回復するケースが増えてきましたが、現在においても脳梗塞は、三大疾病の一つである脳卒中のうちの主な疾患とされています。

今回は脳梗塞について、リスク因子や、発症を防ぐ食事・運動のポイント、前兆としてあらわれる症状などを解説します。

健康を維持してライフプランを守るために、脳梗塞の予防や早期発見に努めましょう。

脳梗塞の基礎知識

脳梗塞の基礎知識

脳梗塞はどのような病気なのか、症状や種類などについて解説します。

脳梗塞とは

脳梗塞は、脳卒中(脳血管疾患)のひとつです。脳の血管が詰まることで、詰まった部分から先へ酸素や栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまうことにより脳の機能が低下する病気です。

厚生労働省が発表した令和4年(2022)人口動態統計(確定数)において、脳卒中は死因の第4位で、脳梗塞の死亡者数は59,363人とされています。また令和2年(2020)患者調査のなかで、脳梗塞の平均入院日数は約75日間と報告され、がんや心疾患の入院日数と比べて倍以上も長期にわたるのです。

脳梗塞の主な症状

脳梗塞では以下の症状がよくみられます。

  • ・片側の手足や顔半分に、しびれや麻痺が出る
  • ・ろれつが回らない
  • ・言葉が出てこない
  • ・力はあるのに、フラフラする
  • ・片側の目が急に見えなくなったり、視野が欠けたりする

脳梗塞の種類

脳梗塞は、血管の詰まり方によって以下の3種類に分類できます。ひとつずつ確認しましょう。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、脳の深いところを流れる微細な血管が詰まって起こる脳梗塞です。高血圧・糖尿病・喫煙などによる動脈硬化で血管が狭くなったことが原因で発症します。ラクナ梗塞は、血管が詰まった後に病変する範囲が狭いため、目立った症状が現れないケースも多くみられます。

また、脳のあちこちでラクナ梗塞が起こることで、嚥下障害や認知症の引き金になることがあるのです。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、頸動脈や脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞です。血管の壁にコレステロールが溜まって狭くなったところに、血液の塊ができてしまうことが原因で発症します。発症すると、中等症から重症になる傾向がみられます。

アテローム血栓性脳梗塞は、発症する前に片側の麻痺・顔のゆがみ・言葉が出ないなどの前兆症状が現れる傾向があります。

心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症は、心臓で作られた血栓が流れてきて、脳の血管を詰まらせて起こる脳梗塞です。脳には異常がなく、心房細動などの不整脈が引き金となって発症します。ほかの脳梗塞とは異なり、前兆がなく突然発症するのが特徴です。

心臓でできた血栓は大きく溶けにくいため、脳の太い血管を詰まらせることから、心原性脳塞栓症は脳梗塞のなかで、もっとも重症化する傾向があります。

脳梗塞になりやすい人の特徴

脳梗塞になりやすい人の特徴

脳梗塞になりやすい人は、以下の疾患や習慣を持つことが挙げられます。脳梗塞のリスク因子を知り、生活習慣の改善につなげましょう。

高血圧

高血圧は、血圧140/90mmHg以上を指します。値が高いほど、脳梗塞発症のリスクが上昇します。血圧が高くなると、脳の血管の壁を傷つけることで、壁の内側が狭くなったり、コレステロールが溜まりやすくなったりして詰まりやすくなるのです。

発症リスクを下げるために、75歳以上の高齢者は血圧140/90mmHg未満、75歳未満の成人は130/80mmHg未満を目標にコントロールしましょう。

糖尿病

糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度が高くなる状態です。空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上が診断の目安となります。

血糖値が高いと、血管の内側を傷つけることで動脈硬化が促進し、脳梗塞を発症しやすくなるのです。

糖尿病は、脳梗塞のほかに、目・腎臓・神経も障害し、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害の合併症を引き起こします。血糖値が高いことを指摘されたら、早いうちから食事療法・運動療法に取り組むことが大切です。

脂質異常症

脂質異常症は、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の濃度が高い状態です。特にLDLコレステロールが高いと、傷ついた血管の壁に溜まりやすくなり、血管を狭くすることで、アテローム血栓性脳梗塞を発症しやすくなるのです。

発症リスクを下げるために、以下の基準値を超えないようにしましょう。

LDL(悪玉)コレステロール 140mg/dL以上
HDL(善玉)コレステロール 40mg/dL未満
中性脂肪(トリグリセライド) 空腹時150mg/dL以上、非空腹時175mg/dL以上
Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上

心房細動

心房細動は、何らかの障害が起きて、心臓にある心房という部屋の収縮するリズムが乱れる状態をいいます。心房細動が起こると、心臓のなかで血液の塊(血栓)ができやすくなります。このとき作られた血栓が、心臓から血流に乗って脳に運ばれることで、心原性脳塞栓症を発症させるのです。

健康な人でも、お酒やカフェインの摂りすぎ、睡眠不足、ストレスなどにより心房細動を発症します。動悸・胸の違和感・立ちくらみなどの自覚症状があれば、早めに医師に相談しましょう。

喫煙

喫煙は、脳梗塞の発症リスクを約2倍に上昇させます。タバコの本数が多くなるにつれ、リスクが上がる傾向があります。タバコに含まれるニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が、血管を狭くして血液の流れを悪化させることで、血栓ができやすくなり、脳梗塞を発症させるのです。

現在喫煙している人でも、禁煙を始めると脳梗塞の発症リスクが低下します。禁煙開始から2年で発症リスクが下がり始め、5年以上経つとタバコを吸わない人と同等レベルまで低下するのです。

脳梗塞の予防に効果的な食事のポイント

脳梗塞の予防に効果的な食事のポイント

脳梗塞を予防するには、リスク因子となる高血圧・糖尿病・脂質異常症にならないことが大切です。これらの疾患を防ぐために効果的な食事について解説します。

塩分と脂質をコントロールする

脳梗塞につながる動脈硬化を防ぐには、塩分と脂質の摂取量に気をつけましょう。

健康な人の1日の塩分量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満です。調理に柑橘類・酢・香辛料・香味野菜などを取り入れると、味にメリハリがついて塩分量を抑えることができます。

脂質は、コレステロールを増やす飽和脂肪酸の量を減らして、コレステロールを減らす不飽和脂肪酸を多く摂るようにしましょう。摂取量の比率は、飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸=1:2が目安です。飽和脂肪酸は肉類や乳製品に多く含まれ、不飽和脂肪酸は魚や植物油に多く含まれています。

積極的に摂るとよい食品とは

高血圧・糖尿病・脂質異常症を予防するには、食物繊維やビタミンを十分に摂りましょう。

食物繊維を多く含む食品は、豆類・根菜類・きのこ類・果物類・海藻類などです。食物繊維には、余分なコレステロール・糖・ナトリウムなどを吸着して、体の外へ排出する働きがあります。

ビタミンは、脂質・糖・タンパク質の代謝を助けたり、動脈硬化を促進させる活性酸素を除去したりする働きがあります。代謝や抗酸化に役立つビタミンを多く含む食材は緑黄色野菜です。

アルコールはほどほどに

純アルコールとして1日20g未満であれば、善玉(HDL)コレステロールが増えることで、脳梗塞の発症が抑えられるというデータがあります。純アルコール20gは、日本酒1合またはビール500mLです。

純アルコール量が1日平均60g以上になると、すべての脳卒中の発症リスクが約1.6倍に上昇します。さらにアルコールは摂取量が多いと、脂質異常症や脂肪肝の発症につながるのです。

アルコール量は控えて、肝臓に負担をかけないよう週1日~2日は休肝日を設けましょう。

こまめに水分補給をする

脳梗塞の発症には、脱水症状も原因の1つとして考えられます。

ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞は、体の水分不足と関係性が深いといわれています。また、夏場は汗をたくさんかいて、脱水症状を起こしやすく、脳梗塞になる人が多くみられます。

そのため、喉が渇く前のこまめな水分補給が大切です。目安としてコップ1杯程度の水分を、起床時・毎食後・入浴の前後・寝る前に摂りましょう。

脳梗塞を予防するための運動

脳梗塞を予防するための運動

脳梗塞を予防するには、食事のほかに運動も必要です。運動が脳梗塞予防に役立つメカニズムや、効果的な運動の種類などについて見ていきましょう。

運動による脳梗塞予防のメカニズム

運動をおこなうと筋肉量が増えることで、以下の効果があります。

  • ・筋肉に必要な酸素や栄養を運ぶため、血管が広がり血圧が下がる
  • ・筋肉が糖や脂質をエネルギーとして消費するため、血糖値やコレステロール値が下がる

さらに運動をおこなうことでカロリーを消費できるため、体脂肪が減り、生活習慣病のリスク要因となる肥満を防ぐこともできます。

脳梗塞を防ぐのに効果的な運動

脳梗塞を防ぐのに効果的な運動として、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせると効果が高いとされています。

「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、強度が3メッツ以上の運動を1週間あたり4メッツ・60分以上おこなうよう推奨しています。メッツとは運動強度のことで、安静時を1としたときと比べて、何倍のエネルギーを消費するかを示したものです。

強度3メッツ~4メッツの運動例は、以下のとおりになります。

3.0メッツ ボウリング・バレーボール・ピラティス・社交ダンス
3.5メッツ 自転車エルゴメーター・自体重を使った軽い筋力トレーニング・散歩(75~85m/分)
4.0メッツ 卓球・パワーヨガ・ラジオ体操第1

出典:厚生労働省 e-健康づくりネット「生活活動のメッツ表・運動のメッツ表」

実際におこなった運動強度は「運動ごとのメッツ×おこなった時間(時)」で求められます。たとえば、ピラティスを30分おこなった場合は、3.0×0.5=1.5メッツです。

運動する時間を増やす方法

運動をおこなう時間がなかなか取れない場合は、日常生活のなかで運動量を増やしましょう。日常生活における行動にもメッツが設定されています。具体例は次のとおりです。

3.0メッツ 犬の散歩・電動アシスト付き自転車に乗る・台所の手伝い・立位での子どもの世話
3.3メッツ カーペット掃き・フロア掃き・掃除機をかける
3.5メッツ 散歩(75~85m/分)・階段を降りる・モップがけ・風呂掃除・草むしり・楽に自転車に乗る
4.0メッツ 階段を上る・自転車に乗る(時速16km未満)・高齢者や障がい者の介護(身支度やベッドの乗り降り)
4.3メッツ やや早足の歩行(93m/分)・苗木の植栽

出典:厚生労働省 e-健康づくりネット「生活活動のメッツ表・運動のメッツ表」

通勤や買い物は、自動車を使わずに自転車や徒歩で行き、体を動かすようにしましょう。移動するときは、階段を使ったり早歩きしたりするのも、効率よく運動量を増やす方法です。

注意するべき脳梗塞の前兆

注意するべき脳梗塞の前兆

脳梗塞は、発症して倒れる前に、前兆といわれる段階の「一過性虚血発作(TIA)」と「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)」があります。これらが現れた時点で治療できれば、本格的な発症を防ぐことが可能です。それぞれの特徴や症状について解説します。

一過性虚血発作(TIA)

一過性虚血発作(TIA)は、脳梗塞と同じく、片側の手や足が動かない・ろれつが回らない・ものが二重に見えるなどの症状が現れますが、数分から1時間程度で自然と回復します。ただし、一過性虚血発作が起きると、2週間以内に本格的な脳梗塞を発症する割合が非常に高いのです。

「すぐに良くなったから大丈夫」と安心せず、症状がみられたらすぐに医療機関を受診しましょう。

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

隠れ脳梗塞は、正式には無症候性脳梗塞といいます。脳のごく小さな血管が詰まりますが、脳の働きに影響を与えないため、症状が現れずに経過するのです。なかには、ものを飲み込むときにむせるなどの嚥下トラブルがあらわれる場合もありますが、脳のMRI検査で偶然見つかったというケースが多いです。

隠れ脳梗塞は、将来の脳卒中の発症リスクが約4倍、認知症の発症リスクは約2倍といわれています。検査で隠れ脳梗塞が見つかった場合は、血圧や血糖値などの管理が必須です。喫煙習慣がある人は、禁煙も必要となるでしょう。

脳梗塞の予防につながる検査

脳梗塞の予防につながる検査

脳梗塞を予防するためには、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの早期発見が鍵となります。健康診断や人間ドックを毎年受けて、経過を確認しましょう。

すでに生活習慣病になっている人は、脳ドックの受診がおすすめです。脳ドックでは、MRI検査・頸動脈エコー検査などをおこない、隠れ脳梗塞や動脈硬化の程度を調べます。心電図検査を採用している医療機関もあり、脳梗塞のリスク因子である心房細動の有無を調べることもあります。

検査で異常が見つかったときは、早めに治療を開始することで、本格的な脳梗塞発症を防ぐことにつながるのです。

まとめ

脳梗塞の予防や早期発見には人間ドックや脳ドックの受診がおすすめ

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳の機能が大きく低下する疾患です。発症をきっかけに後遺症が残ったり寝たきりになったりすることがあります。そのため、脳梗塞の発症を防ぐことが肝心です。

脳梗塞の発症リスクには、生活習慣病や喫煙が挙げられます。生活習慣病を予防するには、栄養バランスに注意した食事や、日常的な運動習慣が必要です。また、脳梗塞には、前ぶれといわれる一過性虚血発作(TIA)や隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)がみられることがあります。

脳梗塞の予防や早期発見には、人間ドックや脳ドックの受診がおすすめです。年1回定期的に受診して、体の異常の有無を確認し、本格的な脳梗塞の発症を防ぎましょう。

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