トモシンセシスとは?痛みや特徴など徹底解説
乳がん検診は、がんの早期発見のためにとても大切な検査です。乳がん検診にはいろいろな検査機器が使われますが、近年登場したトモシンセシスは、多方向から精密に撮影する最新の検査機器です。
マンモグラフィと同じように乳房を圧迫して行うため、多少の痛みはありますが、従来よりも鮮明な画像を撮影することができるのが大きな特徴です。そのため、乳がんの早期発見に役立つと期待されています。この記事では、新しいマンモグラフィとして登場したトモシンセシスについて取り上げます。乳がん検診の大切さを改めて認識していただき、ぜひ受診を検討してください。
トモシンセシスとは
トモシンセシスとは、3Dマンモグラフィとも呼ばれる新しい乳がん専門の検査機器です。通常のマンモグラフィは2Dという撮影方法で、一方向ないし二方向からの撮影です。一方トモシンセシスはCTやMRIのようにX線を少しずつずらしながら撮影します。
そのため立体的に、また今まで乳腺に隠れてしまい、はっきりと見えなかった腫瘤を発見することが可能です。特に、高濃度乳房(デンスブレスト)と呼ばれる、若い女性やアジア人に多く認められる乳腺の密度が濃いタイプでは3Dマンモグラフィ撮影において効果的です。
トモシンセシスの原理
トモシンセシスはX線を少しずつ移動させながら撮影します。CTやMRIのように対象をスライスした画像を、連続して撮影する方法です。そのため、撮影した対象がより立体的に見えるのです。またマンモグラフィよりも鮮明に病変部を描出することが可能です。
トモシンセシスの特徴
トモシンセシスの最大の特徴は、今まで乳腺に隠れて見えなかった病変をはっきりと見ることができるようになったことです。マンモグラフィは一方向(ないし二方向)からしか撮影できないため、組織の後ろに隠れてしまった腫瘤を見つけるのが難しかったのですが、トモシンセシスは様々な方向から撮影するため、見たい場所を見たい角度でとらえることができます。
また、超音波検査やAUBS(乳房自動超音波)と組み合わせることにより、より精密な検査を行うことが可能です。3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)を含め、乳がん検診はとても大切です。では次に、乳がん検診の重要性について考えてみましょう。
乳がん検診について
乳がんにかかる女性は毎年3万人といわれています。これは10人に1人が乳がんにかかるということです。また、乳がんが40代~50代の女性における、がんの死因トップであることを考えると、定期的な検診を受ける大切さは明白です。
ただし、乳がん検診と言っても年代によって適用になる検査や、効果的な検査は異なります。まずは乳がんについて、また乳がん検診でよく用いられる検査方法と、それぞれに効果を発揮する年代について見てみましょう。
乳がんとは
乳がんとは、乳腺の中にできるがんです。乳腺の中で石灰化した細胞ががん化し、周囲の細胞に広がっていきます。乳がんの主な症状は固いしこりです。梅干しの種があるように感じると表現されることもあります。多くは定期的なセルフチェックで気が付きます。
他の症状としては乳房にくぼみができる、乳輪にただれが生じる、左右の乳房の大きさに違いができる、乳頭から分泌物が出るなどです。
参考:https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html
定期的な検査で乳がんが見つかることもあります。多くの場合は、石灰化したしこりが1cmの大きさになるまでに2年かかるといわれています。そのため、2年ごとに検査を受けていれば、がんがまだ小さいうちに発見することが可能です。多くの場合、痛みはないといわれています。
ほとんどの乳がんは乳腺の中にとどまっているものであり、摘出することで完治をめざすことができます。ですから、乳がんにおいては早期発見、早期治療はとても重要です。いずれにしてもしこりがあることに気が付いたら、できるだけ早く乳腺外来、乳腺外科を受診してください。
乳がんの検査
乳がんの検査方法にはいくつかあります。最も簡単な方法はお風呂に入る前や着替えのときなどに、鏡を見ながらのセルフチェックです。
少し力を入れて押さえるようにしながら、まんべんなく乳房を触診します。明らかに硬いところはないでしょうか。腕を上げたときに突っ張る感じがするところはないでしょうか。
また鏡でも見てみましょう。片方だけ大きさが違ったり、張っていたり、乳首の周りがただれていたり、乳首から母乳のような分泌物は出ていたりしないでしょうか。違和感がある場合はすぐに受診しましょう。
次に、乳がん検診で用いられる検査方法を見てみましょう。
超音波検査(エコー)
エコー検査は針を刺したり放射線を当てたりする検査ではないため体への負担が小さい検査です。乳腺が発達している40代未満の人にはエコー検査が行われます。乳腺が発達していると、マンモグラフィでは真っ白に映り、石灰化した細胞をはっきり見ることができません。
また、エコー検査は放射線を使用しないため、妊娠中でも検査を受けることが可能です。小さいしこりを見つけることに優れており、がんを早期発見することができます。ただし、乳腺の石灰化は健康な人にもよく見られる現象であるため、良性なのか悪性なのかについての評価には時間がかかるのがデメリットです。
マンモグラフィ
マンモグラフィは、石灰化した組織を発見するのに優れた検査です。1mmほどのちいさな石灰化した組織を発見することができます。40歳以上の方から、乳がん検診ではマンモグラフィを受けます。
2枚の板の間に乳房を挟んで引き伸ばし、レントゲンで撮影します。この「挟んで伸ばす」ときに、人によっては痛みを強く感じます。一般的に痛みを強く感じるのは乳腺が発達している方や、生理前の乳房が張っているときだといわれています。痛みをできるだけ感じないように検査を受けるためには、生理が終わった直後くらいが良いでしょう。
トモシンセシス
新しいタイプのマンモグラフィです。2枚の板の間に乳房を挟んで撮影するという方法はマンモグラフィと同じです。トモシンセシスは、マンモグラフィでは不得意とする、乳腺が発達している方の撮影もきれいに撮影することが可能です。ただ、いまのところ、トモシンセシスのみでの検査は行われていません。マンモグラフィのオプションとして受けることができます。
トモシンセシスとマンモグラフィの違い
最も大きな違いは、マンモグラフィが2Ⅾ撮影であるのに対し、トモシンセシスは3Ⅾ撮影であるということです。マンモグラフィは一方向からの撮影のため、乳腺が多い方では、画像が白くぼやけてしまい、石灰化した病変組織がよくわからないという欠点があります。
一方トモシンセシスは、多方向からの撮影を行うことができるため、マンモグラフィでは乳腺に隠れて見えなかった、石灰化した病変組織をはっきりとらえることができます。
トモシンセシスの検査方法
基本はマンモグラフィと同じですが、X線の球体が移動して乳房をあらゆる角度から撮影します。
トモシンセシスでの検査は痛くない?
トモシンセシスもマンモグラフィと同じく、2枚の板の間に乳房を挟んで撮影します。そのため、圧迫による痛みはあります。また、生理前の期間に撮影すると痛みを強く感じるという人もいます。ただし、マンモグラフィほど平たく乳房を伸ばす必要なないため、痛みはかなり軽減されるといわれています。
トモシンセシス検査の所要時間
トモシンセシスはX線を移動させながら撮影を行うため、マンモグラフィよりもやや時間がかかります。通常マンモグラフィで5秒程度ですが、トモシンセシスは15秒と少し長い傾向です。
トモシンセシス検査の注意事項
生理前は乳房が張るため、排卵日から生理直前までは検査を受けるのを避けた方が無難です。検査のとき、必要以上に痛みを感じる可能性があります。また、検査時にはピアスやネックレスなど金具の付いた装飾品を外します。また、ラメの入った化粧品や制汗・防臭剤、パウダーは落としてから検査を受けてください。画像に映り込むことがあり、石灰化した組織と間違って診断する場合があります。
トモシンセシスを受けられない方
下記の方は検査を受けることができません。
妊娠・授乳中の方
放射線を使用する検査のため妊娠中の方は受けることができません。また、授乳中は乳腺が発達して密になるため正確な診断ができません。断乳1年後からの検査が望ましいといわれています。
豊胸手術を受けている方(ヒアルロン酸や脂肪注入を除く)
豊胸手術で生殖パックを胸に入れている方の場合は破損の危険があるため検査を受けられません。直接組織に注入するヒアルロン酸や脂肪注入術の場合は検査を受けることが可能です。
ペースメーカーをつけている方・CVポート・VPシャントを造設中の方
ペースメーカーをつけている方や、CVポート、VPシャントなどを埋め込んでおられる方は、破損の危険があるため、検査を受けることができません。
トモシンセシスについてのよくある質問
トモシンセシスについて、良く受ける質問について取り上げました。
検査はどこで受けられますか?
乳腺外来のある医療機関、または自治体が主催する集団検診などで受けることができます。
検査の結果はすぐわかりますか?
検査の結果について、検査後に簡単な説明を受けることもありますが約一週間後に改めて診察を受け、結果をお聞きください。
放射線の被ばくはないですか?
X線を使用した検査ですから、放射線の被ばくはあります。とはいえ、一回の被ばく量は普通のマンモグラフィだけなら約1mGy、マンモグラフィとトモシンセシスを両方受けた場合で約2mGyです。
これは、私たちが普段生活している中で自然界にある放射線を浴びているのとほぼ同じ量です。そのため、マンモグラフィやトモシンセシスを受けて健康被害が生じることはありません。
生理中でも受けられますか?
生理中でも受けられます。ただし、生理が始まってすぐのときは乳房が張っていることが多く、痛みを強く感じやすいかもしれません。できれば生理が終わった直後から1週間以内に受けるのが望ましいでしょう。
費用はどれくらいですか?
トモシンセシスの費用の目安は3,000~5,000円程度です。ただし、自由診療のため医療機関によって金額に差があります。
また、マンモグラフィ検査のオプションとして用意されており、単体ではなくオプションとしての申し込みが必須の場合もあります。くわしくは受診予定の医療機関や、集団検診の場合はお住まいの自治体に確認しましょう。
胸が小さいと痛いですか?
乳房の大きさは痛みに比例しません。若い方・乳腺の量が多い方が痛みを感じやすいとされています。また、痛みの感じ方は個人差が大きく、個々の人によって異なります。
しかし、生理前を避けることや、気持ちをリラックスさせておくことで痛みの軽減は可能です。
何歳ぐらいから検診を受けられますか?
乳がん検診は一般的に30歳以上から受けることが望ましいとされています。ただし、乳がんは遺伝が大きく関係するといわれているため、近い親族に乳がんにかかったが人いる場合は20代のうちから乳がん検診を受けると良いでしょう。
国は2年に一度の受診を進めているため、各自治体でも女性がん検診を行っています。40歳未満の若い年代では乳腺が発達しているため、マンモグラフィではなくエコー検査が一般的です。マンモグラフィで撮影しても乳腺が白っぽく映ってしまい病変部をはっきり見ることができないためです。
もちろん、両方受けることでより精度は上がります。ただし、自治体などでの集団検診ではエコーかマンモグラフィのどちらかしか受けられないところが多いようです。
トモシンセシス単体で検査を済ませても大丈夫ですか?
トモシンセシスはマンモグラフィと合わせて受けることでより精密な検査を行うことができます。マンモグラフィーは石灰化した組織を発見するのに優れた検査方法です。
ただ「これをしているから絶対に大丈夫」といえる検査はありません。毎日のセルフチェックや、可能であればエコーを組み合わせた検査を受けておくとよいでしょう。
早期の乳がん発見にはトモシンセシスを組み合わせて
乳がんは10人に1人がかかるといわれているがんです。ただし、石灰化した細胞ががんに進行するまでには時間がかかるため、2年に一度の検査を受けることで早期発見、早期治療を開始することができます。
浸潤がんになる前にがんを取り除いてしまえば、100%の治癒を見込めるため、乳がん検診を受けることはとても大切です。とはいえ、40代以上の方に推奨されるマンモグラフィでの検査だけでは、石灰化した組織を見つけにくい場合があります。
そのような場合にはトモシンセシスを組み合わせた検査が有効です。より精密な検査を受けることを希望しているなら、トモシンセシスを検討してみるのはいかがでしょうか。
セントラルメディカルクラブに併設されているセントラルクリニック世田谷では、トモシンセシスを導入しており、女性特有の疾患をまとめて検査できるレディスドックをおこなっております。ご興味のある方、検査を検討されている方はお気軽にご相談ください。